さて、glam rockの「真打」のようなアルバムの登場です。David Bowieはglam rockという括りだけにはおさまり切らないアーティストですが、ここでは、彼の多様な作品群の中で、この時代を代表するZiggy Stardust、Aladdin Saneを取り上げます。実際、私はこの頃のものを一番よく聴いている。
David Bowieが日本に紹介されたのはT.Rexの後でした。「Marc Bolanにライバル登場!」なんてね。72年の夏ごろに、日本での1st single Starmanがリリースされたように記憶しています。その後(または同時期?)、このアルバムがリリースされました。
このアルバム、今こそ「ジギー・スターダスト」と呼ばれていますが、昔は「屈折する星くずの上昇と下降、そして火星から来た蜘蛛の群」なんて、やけに長いタイトルでした。いつから「短く」なったの?これも「T.Rexの再評価」と同様、私にとっては「謎」ですわ。このアルバムは、イギリスでは4枚目に当たるもので、それ以前の3枚も相次いでリリースされました。72年の暮れにシングルJean Genieがリリースされ、年明けにはアルバム、Aladdin Saneがリリースされます。73年3-4月ごろに初来日を果たしていると思います。
さて、David Bowieはglam rockを代表するアーティストではありましたが、その後も時代を超えて活躍し続け、今ではイギリスの生んだ偉大なミュージシャンの一人に数えられています。日本で知られ始めた頃から既に「ただ者ではない」と言われていましたし。とは言っても、当時はその派手なメイクや両性具有的な雰囲気のほうに注目されがちでもありましたが…。
David Bowieの印象というと…とにかく歌詞が難解。(ロックンロールがスコラ哲学してるみたいな)
初期の名曲にSpace Oddityというのがあります。「2001年宇宙の旅」を素材にしたような叙事詩で、当時のシングルとしては長めの、淡々とした曲でした。ところが、当時から「活字(言語)に対する感受性がイマイチ」だった私が、なぜか大好きだった曲でもあります。
近年リリースされたThe Best of Bowieの一曲目です。興味がおありの方はどうぞ。ベスト・アルバムとしても優れたものになっています。
さて、前置きがやたらと長くなりましたが…Ziggy Stardustはトータル・コンセプト・アルバムで、火星からやってきたZiggyが地上の人々をロックンロールで覚醒させようとする、というテーマに基づいています。
一曲目のFive Yearsは前述のSpace Oddityを思わせるストリングスを使った壮大な曲。どことなく「天上界」を想起させる。「我々には5年間しかない」と歌う。シングルヒット曲のStarmanでは「かれは僕たちに会いたがっているのだけれど、僕たちの心を吹き飛ばしはしないか心配しているんだ」と。It Ain’t Easyは唯一自作ではなく、Three Dog Nightも取り上げている、アメリカのライターによる曲。どことなくウェスト・コーストなサウンド。Lady Stardust、Ziggy Stardustと代表曲が続きます。「レディ・スターダストは自らの暗闇と恥辱の歌を歌った。…僕は従うことのできない愛に悲しく微笑んだ」「ジギーはギターを弾き…特別な存在になってしまった。…彼はエゴを愛し、自分の心に引き込まれていってしまった」そして、最後のRock ’n’ Roll Suicide(ロックンロールの自殺者)では「君は一人じゃない。僕の方を向くんだ。君は素晴らしい。手を差し伸べてくれ」と歌います。
結局、BowieはZiggyを「5年間」経たないうちに葬ってしまいます。この頃のライブ映像は、視覚効果もふんだんに取り入れたステージで、Bowie自身も派手なメイクとコスチューム(歌舞伎のような衣装の早変わりも見せる)で、Ziggyを演じきっています。
昔、(純情娘だった頃…笑)これを聴いたとき、孤高のアーティストの内にある孤独を感じて切なかったものでした。今は…ま~ぁ、こんなナルシスティックな世界をよくもヌケヌケと…と(笑)。20代の畏れを知らない頃の、全ての勢いを自分に引き寄せたアーティストであればこそ可能だった「金字塔」をDavid Bowieは打ち立てたのです。これ以降も、彼は自らが作り出した偶像を自ら演じていきます。
初来日の時、坂東玉三郎氏がDavid Bowieと会ったときの印象を後日ラジオで語っていました。(Bowieが玉三郎氏に会いたがっていた)氏が「僕は演技が終わったあとはすぐにメイクを洗い流し、元の「自分」の自分に早く戻らないと不安になる。Bowieはオフでも役柄を演じ続けていて驚いた。自分には理解の及ばない世界だった。」と驚嘆していたのを覚えています。
Ziggy Stardustの、「音」の部分については、私は十分な言及ができないのですが、そのあたりを語れる人がこのアルバムを語れば、また尽きないものがあるでしょう。「名盤」です。
次のAladdin Sane、日本でリリースされた時は「五つ星」をつけて大絶賛した批評家も少なくありませんでした。
この頃は、既に無限の可能性を秘めたアーティストとして認知されていました。このAladdin Saneは前作とはうって変わって、地上世界の退廃と堕落を当時の最先端の音作りのテクニックも駆使して創りあげた世界です。
私は、どちらかというとこちらの方が好きで、CDとして先に入手したのはこちらのほうでした。(USA盤でしたが)
一曲目のWatch That Manは「ん、Rolling Stones?」と思ってしまうようなサウンド。…と思ったら、本当にStonesのLet’s Spend the Night Togetherのカバーが飛び出してきたり…。この曲については、後年、Mick Jaggerとのステージ・パフォーマンスが話題を呼びました。Panic in Detroit – Cracked Actor – Timeあたりの、音作りに拘りのある、カラフルな曲の連続が圧巻。
先行シングルだったJean Genieは独特のギター・リフがいつまでも耳に残るような、当時としてはかなり斬新な(でもポップで親しみやすい)カッコいい曲でした。ある評論家は「これはジャン・ジュネへのラブ・ソングだ!」と言っていたのを今でも覚えているんですが…真偽の程はいまだ不明…。
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