映画「マリー・アントワネット」
実写で楽しむ「ベルばら」の世界…
良くも悪くも、それだけでした。
でも、退屈じゃなかったよ。
映画館に行くのは久しぶりでした。それも、初日の朝一。(「プロデューサーズ」以来だ…)昨年は、できるだけ多くの映画を見たいと思っていたのだけど、8月頃だったか…映画館の空気が悪くて、喘息の症状が出て(どんな映画館や…)映画館から足が遠のいてしまっていた。
ま、「マリー・アントワネット」モノはちょっと外せないかな?と元気を出して観てきたわけですよ。池田理代子氏の「ベルサイユのばら」の連載が始まったのは35年前になりますね。ま、我々の世代であれに影響を受けた人は多いと思う。
私も、ほぼリアルタイムで楽しみ、その後、ツワイクの「マリー・アントワネット」を読み、岩波文庫の「フランス革命史」を読み、ルソーの「ヌーベル・エロイーズ」を読み(退屈だった…)、宝塚も観て、実写映画(覚えてる~?)も観てetc…という一連の「儀式」を通過したのでした。「ベルばら」は田舎のミーハー少女に、ちょっとした知的好奇心をかきたててくれました。私の中では、35年間にわたって、マリー・アントワネットのイメージがあたためられているような感じ。
あっ、映画の話ね・・
この映画はあくまでも「映像」と「音」を駆使して、マリー・アントワネットという人の世界を現代感覚で表現したもの。これはこれで面白かった。マリー・アントワネットは褒められた王妃ではなかったけれども、独特の美的感覚を持っていて、それを巧みに具体化するセンスも持ち合わせていて(民衆の犠牲と隣りあわせだったわけですが)、現代に生きていれば…良くも悪くも、マーサ・スチュワートのような人になっていたのではないかと思わずにはいられませんでした。まさに、あの世界ですよ~。「マリー・アントワネット・リビング」なんてブランドを立ち上げていたかも…
プチ・トリアノン宮での「農村ごっこ」は楽しむけれど、実際の庶民の暮らしなどには興味もない。ジャン・ジャック・ルソーの著作も「セビリアの理髪師」も、自らの立場を否定する思想が背景にあることまでには考えが及ばないで、ただ、自分の感覚に合うエッセンスだけを取り入れて楽しむライフ・スタイル。あまりに危うい…。
でも、それがアントワネット的なのであり、どことなく「今日的」でもあり。
あとは、人物の相関関係などは、これはマジな話、過去にマリー・アントワネットを題材にしたものを観たり読んだりしたことがない人には分かりにくいんじゃないかな。いくら「ドラマ」に重点を置いてないとは言え、ちょっと不親切な感じがしました。私もそうなんですが、西洋人が、特に時代モノの服装をしていたら、見分けがつかない!!登場人物の見分けはつかないわ、関係は分かりにくいわ…その辺りで「迷子」になってしまうと、長く退屈な映画になるかもしれません。(実際、後ろに座っていたご夫婦がそんな感じだった)
キルスティン・ダンスト(アントワネット)は、時として「あまり美しくない」と形容される女優ですが、アントワネット自身も「典型的な美女」ではない(と思う)ですし、イメージに合っていたと思いますよ。表情の演技が希薄な気がしたけれど、でも、こういうスタイルの映画にはちょうど良かったんじゃないかな?
あと、フェルゼンはもっと北欧っぽい美男子希望!ポリニャック伯爵夫人は、これは意図的なのかもしれないけれど、話し方がホントに今風のアメリカ映画に出てくる遊び人のオネエちゃんみたいで、緻密な策略家にしてはオツムが軽い感じ。ランバール公爵夫人は、ベルサイユ宮殿を離れる時も国王一家と共にいるんですが、最初から何となく影が薄く描かれていた…この方は、後に、恐怖政治下で蜂起した民衆に虐殺されるんですよね。王妃の「恋人」だったと言われていた女友達だっただけに、彼女に対する民衆の憎悪は凄まじく、残酷極まりない殺され方をするんです。(フランス人は、この9月虐殺については、あまり語りたがらないらしい。)
マダム・デュ・バリーは喜多嶋マイさんに似ていません~?(あの方も最近、ソープ・オペラに出ていらっしゃいましたが…)オーストリアから随行してきていたメルシー伯爵はなぜかとても若い。そう言えば、殆どの役柄を演じる俳優は実年齢よりも若くて、あんまりリアリティーがないんですよね。ま、とにかく「ドラマ」は期待しないほうがいいってことです。
…などなど、キャスティングについて思い巡らしていると、エンドクレジットを見てビックリ!!えっ、アントワネットの母で、偉大な女帝だったマリア・テレジアを演じていたのがマリアンヌ・フェイスフルだったんですかぁ~っ!?あの、素肌にレザーのジャンプスーツを着てハーレーにまたがっていたオネエちゃんがマリア・テレジアですかー。
《追記》マリアンヌ・フェイスフルのお母さんはハプスブルグ家の末裔だったんですね(こちら)失礼しました!
最後のベルサイユ行進のシーンは、唯一、フランス革命の史実が映像化されていた部分ですが、歴史スペクタクルでもなく、ポップにアレンジした映像にするでもなく…ちょっと中途半端だったのが(低予算のTVドラマみたいで)残念でした。ベルサイユを去るというエンディングに繋げるシーンとして重要だったんでしょうが。
終映後、女子高校生のグループが、ケーキに囲まれたダンストのディスプレイを見て「かわいい~っ!」と声を上げていました。たしかに、そんな感じで「目」と「耳」を楽しませてくれる映画ではあります。
マリー・アントワネットはベルサイユ宮殿のDomestic Divaだったのです。
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