映画「マリー・アントワネット」の続き。
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他の人たちの感想を読んでみると、かなりの賛否両論があるみたいですね。私はある程度の前知識を持っていて、「こういう作品なんだ」と思いながら観ていたので、それなりに楽しめましたが。
ただ、観終わってから、あらためて「ベルサイユのばら」のことを思ってしまいました…。だから、今回は、池田理代子氏を讃えてみようかと。
この映画は、あのフランシス・F・コッポラ氏の娘であるソフィア・コッポラ氏の手によるもの。つまり、映画を撮る環境に恵まれていると思われる人の手によるものです。それはそれで素晴らしいことだと思います。一方、「ベルばら」の方は、70年代、現在よりもはるかに情報に乏しい時代に、それも「少女漫画」という枠の中で創り出したものであり、それでも、「ドラマ性」という点では今回の映画よりも面白いという意見さえ出るものであること。
「少女漫画」という枠の中で…と書きましたが、今でこそ少女漫画(女性向けのコミック)が世の中の人から注目を集め、漫画家も「(劇画)作家」として、それなりの評価を与えられるようになってきていますが、あの時代は違っていました。ただ、少年漫画では、あの偉大な手塚治虫氏の作品世界には大人も共感していましたし、「あしたのジョー」「巨人の星」なども大人の鑑賞にも堪える漫画として認知されていました。
一方、少女漫画というと、目の中に星が入った登場人物が、薄っぺらい話を繰り広げるだけのものに過ぎないと(実際、そういうものばかりだった)かなり低く見られていた。つまり、少女漫画を書く人も読む人も、はっきり言って「知的ではない」のだと思われていたんですよね。
今、「女性の漫画家にも、優れたセンスを持った人が少なくないじゃないの?」と普通に思われる人が多いんだとしたら、その池田理代子氏がつけた道なのだと言いたい…もっとも、「24年組」と言われるあの世代には優れた漫画家が少なくありませんでしたが…しかし、少女向けの漫画として書かれたものが広く注目を集めて、社会現象にまでなったというのは、やはり「ベルサイユのばら」が初めてじゃなかったかと思います。受け手として楽しんでいた私たちも、何よりもまず、「勉強に役立つ少女漫画」というのが新しくてワクワクしたんですよ。今は想像できないかもしれませんが。
さて、「ベルサイユのばら」は72年4月から73年8月まで連載されました。連載の最後に、池田理代子氏の手記が載り、多数の参考文献が挙げられていました。ただ、これも今からはちょっと想像がつかないかもしれませんが…池田氏はパリ、ベルサイユなどへの現地取材を一度もしないで書き上げているんですよね。(たしか、そうだと思う)だいたい、今と違って簡単に海外へ行ける時代じゃなかったし、池田氏はそれまで、まぁいくつかの「意欲作」は発表していたものの、そんなに成功した漫画家ではなかったし…だいたい「漫画を描くために現地取材ぃ~!?はぁ~??」みたいな時代でしたからね。
で、私は何が言いたいかというと(笑)
この映画、「ベルばら」を髣髴とさせるシーンがいくつもあったのですよ。
一瞬、単純に「ソフィーさん、ベルばら読みましたかぁ~!?」なんて思ってしまった訳ですが、でも考えてみれば、お互い数々の資料を参考にして、アントワネットの世界を描いたんだとすれば、やはり共通したイメージが出来上がるんでしょう。そう考えると、そんなものかな?とも思うんですが、それにしても、「資料収集」という点では、ソフィー氏よりもはるかに不利だった池田理代子氏が(資料収集の面だけじゃなく、あくまでも当時の少女漫画読者、つまり小・中学生対象という前提の下で創作しなければならなかった困難さもあったと思う)それなりに忠実に描いていたとすれば、やはり凄いな…とあらためて感心したのです。
映画「マリー・アントワネット」のどのシーンが「ベルサイユのばら」と被ったかと言うと…細かいところはDVDで確認しなければいけないのですが、覚えているままに…記憶違いがあったらゴメンなさい。
まず、アントワネット興し入れのシーン。国境でフランス側に引き渡されるシーンで、ノアイユ伯爵夫人の服装が同じような感じだった。また、新たにフランスのドレスを着たアントワネットの姿も似ていた。とにかく、私は映画のノアイユ伯夫人を見て「おおっ!」と声を上げそうになってしまいましたよ…
あとは、マダム・デュ・バリーがベルサイユを去るシーン、ビジェ・ルブランのドレス(?…映画の中でもハイ・ウエストのマタニティー・デザインっぽくありませんでした?)…
また、浪費の限りを尽くすアントワネットのところに、新しい品を持った業者が入ってくるところ。(箱の形やラッピングなども同じだったような…)映画では、ちょっとオネエ系のヘアメイクさんの男性が登場しましたが…当時のフランスにもいらっしゃったんでしょうかね?ま、面白かったですけどね。
また、女友達と賭け事に興じるシーンやプチトリアノンで戯れるシーンも。オペラ座の舞踏会でアントワネットを見つけるフェルゼンの姿とその表情も、しっかり「ベルばら」してた(笑)。あと、(アメリカ独立戦争の)軍服に身を包んだフェルゼンに「萌える」アントワネットというのも。これってツワイクなどの伝記小説にも描かれていることなんでしょうか?(かなり前に読んだので忘れました。)映画では最後のシーンとなった、当時のテュイルリー宮殿の荒れた感じも、殆ど同じような見せ方をしていました。(ここでも「あっ?」と声を出しそうになった)
最後に、ベルサイユに押し寄せてきた群集を前に、アントワネットがバルコニーでお辞儀をするところ。映画の感想として「このシーンは感動した」と書かれているものもありましたが、ここを「感動シーン」として考えるならば、私は「ベルばら」の方に軍配を上げたいですね。多くのエキストラとお金を注ぎ込んだ映画のシーンよりも、少女漫画の、周囲に☆も見えるけれど、「ベルばら」のこのシーンの方がはるかに感動的ですよ。
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