先日、CS系で放送されていました。10年ぶりぐらいに観た…と思う。18年前の映画になるんですね。懐かしかった。
この映画が話題を呼んでいた頃は、
私自身も、今後の人生、「教育・心理・福祉」関係をライフ・ワークとするか、それとも「語学・文学」を選ぶか、いろいろ迷っていた頃で、まぁ、どちらかと言えば前者の方が強かったのです。
ダスティン・ホフマンが嫌味なほど上手く(←褒めてます。)自閉症者を演じています。しかし、この映画の凄いところは役者の演技だけではなくて、カメラ・ワークや演出が全て「自閉症者の世界観」を表現しているところ。
平原を貫く道路の真っ白なセンターライン、青い空にペンで線を引いたような電線、ガードレール、色鮮やかなネオンサイン、信号や踏み切り遮断機の点滅、規則的に並ぶ電柱・風力発電の風車。視覚刺激に過敏であるといわれる自閉症の人には「世界はこのように見えるのだ」と徹底的に示してくる。最初に見たときは本当に感動したものです。
柵のように縦の線が並んでいるガードレールの側を車で通るとき、レイモンド(D.ホフマン)は目の前に指を立て、指を小刻みに動かす。こうすれば、まるでパラパラ・マンガを見るような面白い視覚刺激が得られるのだ。「やられた!」と思いましたね…。
この頃、日本でも、専門家の間では科学のメスが入った研究がされていたけれど、一般レベルでは「失恋したら、ショックで自閉症になっちゃった。」なんて皆フツーに言っていた。(今は、少しはマシになっていると信じたいけど)そんな中で、「映画」がこれだけやってくれるんだから。
トム・クルーズ演じるレイモンドの弟のチャーリーは道中、レイモンドを精神科医に連れて行く。どんなアメリカのド田舎の病院でも、医師が「自閉症の症例は診たことがない。」と言ったり、ナースがautistic(自閉症の)とartistic(芸術的)を間違えたりなんて事が実際あるんだろうか、と不思議だった。でも、日本のように「自閉症」という言葉だけが独り歩きしているよりはいいのかも…と思っていたものだった。
現在ではレイモンドのように知的な問題の少ない場合は「高機能自閉症」と呼ばれるようです。また、アスペルがー症候群という、以前なら自閉症の範疇の中で考えられていたケースも、今では分けて考えられているようです。私はこの辺りのことは10年ぐらいタッチしていないので、知識が不十分で…これ以上のことは書けませんが。ちょっと言いっぱなしになっていますね、すいません。
久しぶりに見ると新しい発見もありました。
例の一瞬で計算をやってのけるシーン。脚本家は「実際のケースに基づいている」と話していましたが、「映画向けに膨らませたエピソードかな」という感じは否めなかった。でも、よく見ると掛け算の片方の数字が「123」「1234」という規則的に並んでいる数字なのですよ。(これは偶然だったのでしょうが)これならば、筆算が頭の中に浮かびやすいのではないかと思いましたね。
また、平方根を答えさせるときは「2130」という数字で問うています。これは電卓では下の列の数字です。普段から電卓をいじくりながら、「押しやすい数字である2130」の平方根を比較的頻繁に表示させていて、それが映像記憶として脳内に残っていたことは十分にあり得るのではないでしょうか。
レイモンドは父のことを「D-A-D」、チャーリーのことは「C-H-A-R-L-I-E」とスペリングで呼ぶことがあります。これは、意識している相手には敢えて距離を置いた方法でアプローチしようとする彼の心理の表れ。自閉症者にしばしば見られる特徴でもあります。「英語圏の自閉症者はこう言うのか!」と感心しましたね。日本では、自分の姉を「ママとパパの長女」なんて言ったり、担任教師を「○○組担任」と呼びかけたりすることがあります。これも「スペリングで呼びかける」のと同様の心理だと考えられます。この辺りは日本語台本に工夫が欲しいんですが、DVDではどうなっているのでしょうか?数年前にTVで放映された時の吹き替えは「最悪」でした。
こんなふうに「独特の距離感」を見せるので、「彼らは人を意識していない」なんて誤解されたりするんですが、彼らは人を意識していない訳ではないんです。むしろ、非常に敏感に人を意識している。その表現方法が独特なのだけなのです。
チャーリーも亡くなった父親も「コミュニケーションが下手な」人間でした。自動車好きのチャーリーは車種の製造年や性能など「機械的に暗唱」することができます。これらは明らかにレイモンドのミラー・イメージとして描かれているのでしょう。
チャーリーに兄がいることが判明するシーン、心が通い合った兄と別れるシーン、どちらもトム・クルーズはサングラスをかけていて表情が分かりません。ここも意図的なのでしょう。
人が感情を表出する…目に見える部分は、実は一部でしかない。人を理解するには、結局は想像力を働かせるしかない。
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