山奥の鍛治工房

趣味でやっている鍛冶作業の記録

燃料

2006-05-31 23:57:27 | Weblog
 燃料について
 鍛冶するにあたって、素材を加熱するには当然熱源がいる。
 木炭、コークス、ガス、重油etc…。
 趣味鍛冶、本職を問わず、今のところ主流の燃料が木炭とコークス
であろう。
 それぞれの特徴と種類を述べることにする。
 木炭。
 鍛冶に使う木炭は、松炭とクリ炭が主。
【松炭】
 特徴;軽くて火付きが抜群。火力も一時にどわーっと上がるけど、
寿命は短い。また、コスト面で1キロあたりの単価がコークスに比べると
高い。さらに、使うにあたり、ナタ等で手頃な大きさに切らねばならない。

【クリ炭】
 特徴:数ある木炭の中で、もっとも火付きの悪い木炭。火力は抜群だが、
送風を止めるとすぐに立ち消えする。市場にも出ていない木炭であるが、
クリの木の枯れたのを燃やしてその熾き火を消した消し炭として作る事ができる。
消し炭なので、松炭のように切る作業はいらない。すべて手頃な大きさになっている。

コークス
産業はもとより40年前までは暖房用として使われていた。
コークスにも石炭と石油ピッチの2種類がある。
【石炭コークス】
 特徴:石炭から作られたコークス。硫黄分が残っているので、不完全燃焼すると
硫黄酸化物である亜硫酸ガスが発生し、非常に呼吸系統を刺激する。完全燃焼しても
亜硫酸ガスの発生はある。火力面では、木炭よりも強い。クリ炭と同じく送風を止めると
消えてしまう。比較的安価な燃料である。

 【石油コークス、またはピッチコークス】
 特徴;石油を精製した残骸であるピッチから作られる。石炭コークスに比べれば火付きは
悪いが、火力はとても高く耐火温度の低い耐火煉瓦で炉を作ると修理ばかりすることとなる。
 石炭に比べて硫黄分は少ないので、不完全燃焼を起こしても刺激は少ない。
 コスト面からすれば、石炭コークスより値が張る。送風を止めると、石炭コークスに同じく
火が消える。
 どっちかと言うと、火力が桁外れに高いので鋳物を作るキュポラ、ルツボ炉向きである。
 鍛冶に使えん事もないけど、気を抜くと素材が炉の中で成仏するのでその辺はご注意。 

エッチング

2006-05-28 17:14:47 | Weblog
古鉄を叩き合わせた、第3号(特鍛3号積層材)の片割れで
ペーパーナイフを製作。
 なんだか、医療用のメスみたいになってしまったが、ヤスリで
形を整えた時、現われた積層紋様の美しさに驚くと同時に、エッチング
しなくても出るんじゃなぁ、とつくづく思ってしまった。
 でも、ディスクサンダーで滑らかに仕上げると美しい紋様は消え去り、
何事もなかったような肌に…。
 画像は小さくて解りづらいかもしれないが、エッチングの光景。
一人用の小さな土鍋に水を張り、ミョウバンを入れ、そのまんま火床に
かけて沸かし、作品を煮込んでみた。
 たちまちは、1分もせんうちにまたヤスリがけした時と同様に美しい
紋様が現われ、鍋から取り出しうっとり眺めてると、ミョウバンの結晶で
覆われてしまい見えなくなった。
 しかたなしにもう一度、鍋のミョウバン水に浸し、紋様が出た瞬間、
手桶の水で洗うと鮮明。
 時間的には1分~2分30秒程度であろうか。
 反応は速やかなので、余りにも長いと真っ黒けになってなにがなんだか
不明になる可能性が高い。
 エッチング後のコントラストも重要であろうと思われます。
 
 

鋼材あれこれ

2006-05-27 07:14:44 | Weblog
 さぁ、鉄材なり鋼材鍛えて作品作ろうかい。
 ナイフ屋から鋼材買って来た。
 炉に突っ込んで加熱、いざ打とうか、と取り出すとボロリと崩壊。(滝涙)
 こんな経験をしたことがあります。
 七輪鍛冶時代の出来事だったのですが、当時買ったのがナイフの鋼材として
ありふれたATS134鋼。
 この鋼はステンレス鋼ですが、耐蝕鋼としても有名。硬いうえ、加熱温度は
800度前後で温度の許容範囲はものすごく狭い。(最近になって特性が解った)
 失敗した理由は、温度の上げ過ぎでオーバーヒートしたこと。そのまま炉の中で
スクラップにしてしまったのでありました。
 銀紙3号。これも硬い。あまりにも硬すぎて形にできず放棄しました。
 O1鋼 これは粉末冶金鋼? 未だに謎ですが硬いし、独特な筋目から折れるし
えらく難儀して、残ってはいるけど使用中断した経緯あり。
 ステンレス鋼は苦手であります。何よりも特性が多種多様なので苦しめられる。
 ジャンク鉄材でするにも、ステンレスかどうかを見極める必要があります。
 磁石にくっ付かない。キンキンキラキラしてる。
 こうなれば間違いないですが、たまに普通の炭素鋼のふりをしてることもあるので
その辺りの選別は難しい。

焼き鈍しの方法について

2006-05-22 22:31:32 | Weblog
 鍛冶作業をして、作品に焼き入れする前には必ず、焼き鈍しという工程があるのだが、それについての方法。
 焼き鈍しとは、800度くらいに作品を熱してゆっくりと冷ますこと。
 よく似た焼きならしがあるが、これはある温度に上げてゆっくりと空気中で冷ます。
 別段どっちでもええじゃないか、と言われるけど、根本的に違う。
 焼き鈍しは金属組織がゆっくり冷えるため大きくなるが、焼きならしした金属組織は均一。バラバラにならず一定の大きさなので、硬さを比べても断然焼き鈍しをした方が軟らかい。
 さて、いかにせん。
 焼き鈍すに、温度の急激な下降は焼き入れをしたのに近い状態になるため、温度を徐々に下げてやらねばならない。
 大半は、藁灰、あるいはバーミキュライト(園芸でおなじみ。ヒル石という鉱物を焼いたもの)に埋めて、放置する。
 または、火を止めた炉の中にそのまままだ熱いコークスをかけておくという手もある。
 ぼくは、こんな手を使っている。それは、使わなくなった中華鍋、あるいは大きくて底の深い鉄製のフライパンに灰を入れて鍛冶作業をする間、炉にかけて熱しておくという方法。鍛冶作業の間に灰は熱く熱せられるので、作った作品を埋めておくにはぴったりな条件となる。ただ、問題としてあるのは作品の大きさである。中華鍋、あるいはフライパンの大きさ以上のものになると、この方法は使えないという事。大きい作品は火を止めたコークスに埋めておく方法をとっているが、変形は免れない。
 フライパンの材質も、温度がすぐに上がらないからといってアルミ製にするとコークスでも木炭でも火力が相当なので底にすぐ穴が開くため、それは避けた方がよろしい。できれば、土製のホウロク(昔の煎り鍋)であればなおさらいいのだが。
 


小鍛冶で大鍛冶じゃぁぁ

2006-05-21 16:58:19 | Weblog
 土曜日曜とそれぞれ数時間ずつ、鍛冶仲間よりいただいた卸鉄を鍛えてみた。
 しかし一発で玉砕。木っ端みじんこに散りました。さしあたって、微惑星の衝突粉砕みたいな状態であろうか?
ともかくとして、崩壊しないように注意深く叩いたつもりではあるが、叩く端からひび割れ、そして崩壊(涙)
がんばって、とにかくまとめても小さい鉄片にしかならず、これらをいかにまとめるか。それが来週の課題であります。
 画像にある何やら白っぽいのは、これ加熱したての卸鉄。金床に乗っとるのはコークスではありません。粉砕した
卸鉄の欠片達です。(滝涙)
 卸鉄、というのは古鉄をリサイクルして作った鉄材。まるでジャガイモ、あるいは軽石のような状態が多い。