小学校の土手の桜が満開。
うちの玄関を出て、
桜の坂道を駆け上がれば小学校。
1週間前に見たときには
まだつぼみは堅かったのに、
3日前から一気に開きました。
2階のベランダからお花見ができるし、
風の日には 花びらが我が家にまで飛んできます。
1階のリビングからもチラッと眺められるので
毎年小学校の桜の開花を確認しては
あちこち 夫と花見ドライブに出かけました。
夫は色覚異常がありました。
私達が子供の頃は学校の健康診断で色覚検査があり、
学年で色覚異常のある子は 数人はいたと思います。
(今は、色覚検査は学校の健康診断の必須項目ではないそうですが。)
夫に色覚異常があることは 結婚前から知っていました。
でも、実際 『どういう風に見えているのか』、と
考えることは全くありませんでした。
夫は 絵を描くのが とても上手だったし、
夫と話していて違和感を感じることはなかったのです。
それが、
私が夫に対してなんと思いやりのない人間だったか、
いい歳をして これまでの
人に対する関心のなさに、
自分ながら呆然とするほどショックを受けたのは、
50歳を過ぎた頃
あるTV放送を見たときのことでした。
偶然映ったチャンネルで、流れていたのは
「色覚異常のある人が見ている世界」。
その番組では、強度の色覚異常がある人の見え方だったのか、
私の記憶が不確かなのか、
まるで白黒の写真のように見えました。
夫はずっと こんな
白と黒とグレーの世界で生きてきたの・・・?
その番組を見てから 夫に聞いた。
『どんな風に見えてるの?』
『今まで 困ったことはなかったの?』
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「白黒ではないよ。カラフルやで。
黄色とか青色は たぶんみんなと同じに見えてると思うよ。」
「ただ、緑と赤が似たように見えてるんだと思う。」
「ピンクとか薄緑とか、中間色の区別がし辛い。」
「幼稚園の時、絵を習いに行っていて、
山の絵を描いて、真っ赤に塗っていたらしい。
先生はとても褒めてくれたけど、僕はなんか嫌だった。」
「高校受験の時に、工業の専門高校を希望したんだけど、
電気科では、電線の色を見分けなくてはいけないし、
化学科では、化学反応を色で識別する必要があるから、
色覚異常を有する人は受験できなかった。」
「仕事で外回りをしていて、初めてのお宅を訪問する際に
道順を聞いて目印を教えてもらうんだけど、
『黄土色の屋根』とか『薄緑の壁』『ピンクの塀』などと、
みんなにはとても見つけやすい特徴なんだろうけど、
それが見分けられないからとても困った。」
「今は 信号機の緑が青色になったので、とても見やすくなった。」
「電化製品のONは緑の光で、OFFは赤、とか、区別がつきにくいこともある。」
などなど・・。
それまで、私が知らなかった(知ろうともしなかった)夫の世界を
ポツリポツリと話してくれた。
自治体から配られてきたハザードマップの
危険度の高い地域の色は『赤色の濃淡』で表されていた。
「全く色の違いがわからない、どこが危険なのか見られない」という夫。
私は、即、知り合いの市会議員さんに
色覚異常の人には
危険な地域の識別が出来ないことを申し入れた。
いま
学校での検査がないというので、
自分に色覚異常があることを気付かずに
生活している子供がいるんですよね。
見えているから気づかないけれど、
さあ進学 さあ就職 となった時に
夫のように 希望の道へ進めないとか
制限がかかってくることがあるでしょう。
突然のショックを避けるためにも
子供のころの色覚検査は必要かなと思いますが。
それに、識別しにくい色があることによる危険もあるから。
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夫は 色がわからないわけではないが
赤は 私が見ている「赤色」ではなかった。
赤も緑もどちらかと言えば茶色に近い色に見えているようだった。
それからは
私達の『紅葉狩り』は
『銀杏狩り』になった。
銀杏の黄色は夫にとっても
綺麗にくっきりと見えるものだったから。
夫は桜のお花見が好きでした。
私:「ピンクって、あまり綺麗に見えないんじゃないの?」
夫:「ソメイヨシノはピンクよりも白に近いから、いいわ」
「晴れた日は 桜は 特別にいいなあ」
中でも 夜桜のライトアップが好きで、よく行きました。
昨年の 4月5日
夜桜花見へ行って、
2人で自撮り写真
まるで『ゾンビやな』・・・

今年は ひとりのお花見だよ