十数年前のある日
義父:「K子さん、ちょっと」(手招きしながら、小さな声で)
「お隣のTさんが、
うちのブロック(塀)を壊して、花壇にしてるんや。
うちのブロックが盗まれてる・・・」
驚いて お隣を見に出てみると、
Tさんがブロックを台にして プランターに可愛い花を植えて並べています。
もちろん我が家のブロック塀は健在です。
・・・始まったな 、と思いました。
それまでも ちょっと「??」と思うときはあったものの、
まあまあ (もう85歳)歳は歳だし、
認知症の症状がでても不思議じゃない。
ここは、否定せず
女優になったつもりで
私:(ささやくように)
「おじいちゃん、ここは事を荒立てずにおきましょう。
お隣と もう長いお付き合いやし、
まだこれからもお付き合いをせんといかんから、
ブロックの一つや二つ、安い物やし、
私 ホームセンターで買って修理しておきますね。
これは、私たちだけの胸に納めておきましょう。
・・ね。内緒ですよ。」
義父:「そうやな 頼むで」
とりあえず 一件落着!
その後も、ガレージの作業用のジャンパーが盗まれたり、
うちの墓が盗まれたり。
ちょっと笑うような事件はありましたが、
徘徊をするわけではなく、
おとなしい
私たちにとっては認知症といっても
穏やかで 有難かった。
亡くなる前2ヶ月間は市内の病院で入院。
食事の介助に毎日通いましたが、
長男の嫁が来ているとは思っていなくて、
家政婦さんかヘルパーさんだと思っているようでした。
「いつも ありがとうございます。ご迷惑をおかけします。」
と、丁寧に挨拶をしてくれます。
病院の献立によく出ていた佃煮。
私は、義父の好物だと思っていたので、せっせと義父の口に運んでいました。
「もう充分に頂きました。満腹です。ありがとうございます。」
義父の死後、
夫からその佃煮は義父は嫌いだった、と聞いて。
えっ 何だって!!!
「きらい」とは言えず、気を遣ってくれたんやなあ。
几帳面で、真面目で、人に迷惑を掛けたくない、
という気性は認知症でも変わりませんでした。
義父と、
良い思い出ばかりではないけど
認知症の症状が出てきてからの方が 好きだったな。
もうすぐお盆
お墓、盗まれてないかしら~??