街の中のあちこちに、こんなプレートがある。仙崎は金子みすず一色だった
小月駅(山陽線)から一ノ俣温泉の送迎バスに乗った時に、周囲の景色をつぶさに見ていたが
、特に目立っていたのは「ゲンジボタルの里」
という看板である。昔から、「豊田ホタル(豊田町)」として知られており、木屋川水域の河川は
6月になるとあちこちでゲンジボタルが乱舞するという。その季節になると、ホタル舟なる観光船
も出るというから、これは本物の産地である。これは知らなかった。機会があればぜひホタルの乱
舞を見てみたいものだ。
さて、一ノ俣温泉から無事ローカルバスに乗り(その時点で乗客は自分ひとり)、山陰線の「滝部駅」
に無事到着した。今や田舎では当たり前の無人駅である。ここで仙崎行きに乗り、しばらくローカル
線の海と里山の景色を楽しんだ。そして終点の仙崎(長門市)でおりる。ここは絶対行きたい場所だっ
た。仙崎と言えば昔はかまぼこに代表される海の幸が有名だったが、今では早世した詩人、「金子み
すず」である。金子みすずの詩は、テレビのコマーシャルなどで知ったが、なんて幼稚な、子供向け
の詩なんだろ
うと思っていた。
ところが、町中のあちこちにあるプレートの詩を読んだら、その良さ、奥深さがすごく伝わってきた。
仙崎の町はごく普通の漁師町だったが、その中をリュックを担いで歩いていると、妙にしんみりした心
境になった。そして、金子みすずの詩が心に食い込んできた。街中では、どの路地に入っても、どの
角を曲がっても金子みすずに会える。
これはいいところに来たなあと、一人旅の楽しさを改めて満喫した気分になった。街角の食堂で食べ
た、「泳ぎいか定食」が思いのほかうまかったせいもある( 笑)これで気分も乗ってきて、そこから
5~6キロの長門市駅まで歩くことにした。名勝として知られる青梅島を眺めながら、海風を大きく吸
い込んでひたすら歩いた。これも一人旅しかできない貴重な経験である。
長門市駅から向かったのは2日目の宿、長門湯本温泉。安倍総理大臣がロシアのプーチン大統領を招待
した温泉地である。さすがにその高級宿、「大谷山荘」に泊まる予算はなかったが、お金があったとし
ても一人旅で気を遣いたくない。「原田旅館」という宿に泊まり、気楽に温泉を満喫した。
この日のお客は他にカップルが一組だけで、ふろ場はいつも貸し切り状態。源泉かけ流しの名湯を心行
くまで楽しんだ。泉質はアルカリ性単純泉で、前日の一ノ俣温泉ほどではなかったが、ぬめりのある美人
の湯だった。体にやさしいまろやかなお湯で、なんと言っても源泉掛け流しが値打ちだった。
最終日は長門湯本駅から以前から乗りたかった「美祢線」で山陽側の「厚狭駅」まで行った。ここで少し
時間があったので昭和の雰囲気が残る駅前をぶらぶらし、酒屋で地酒を買った。そして新幹線こだまに乗
り、広島でのぞみに乗り換え、大阪まで帰った。
いや、一人旅は本当にいい。食事時間が味気ないという点はあるが、他は自由奔放、歩き、飲み、食べ、
真の旅を堪能できる。気持ちは早くも次の一人旅を計画していた。新潟の村上市から山形の酒田、鶴岡市
あたりを訪ねてみたい。これは長い間の念願である。
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