1974年のメノッティ本人の演出による藤原歌劇団公演で副指揮者を務めた出星豊を指導・指揮に招いて中劇場で公演された「領事」である。演出にあたったのは研修所公演ではおなじみの久恒秀典だ。23期〜25期の研修生達は皆精一杯の力を発揮して良く歌い演じ、総じて良い仕上がりだったと思う。数少ないアリアの中でとりわけ良い歌を聴かせたのは母親役の杉山沙織だった。主役マグダ役の内山歌寿美は艶やかな美声だが、歌唱が力に頼り過ぎでやや一面的、そして定型的な振りがいささか不自然に感じられた。久常の舞台作りに関しては、もう少し凝縮した空間構成だったらストーリーの緊張感がより伝わったような気がした。音楽については、やはりピアノ2台はつらいところがあった。とりわけこのような作品は、経費の問題はあるかもしれないが、オーケストラが使えたら効果の上では格段に聴き映えがして歌唱を引き立てただろうと思った。
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