2014年春の9番から始まった音楽監督ジョナサン・ノットとのマーラーシリーズ第9弾である。まずはラヴェルのピアノ曲集「鏡」より「海原の小舟」(管弦楽版)。ドビュッシーの「海」が冬の海ならば、さしずめ太陽に光り輝やく色彩感豊かな夏の海を描いたようなキラキラと眩い佳作だ。繊細でしなやかなノットの表現が効果的かつ印象的だった。続いてソプラノのユリア・クライターが登場して、ベルクの「7つの初期の歌」。修行時代の歌曲から7つを選んで自ら1928年に伴奏部をオーケストレーションした曲集。どれも「愛」がテーマになっていて、その意味で最後のマーラーと共通した題材というわけだ。クライターは清澄な美声で癖のない秀でた歌唱だったようだが、いかんせん私の席(2階正面中程)では声がオケに埋もれて聞き取りにくく十分に味わうことができなかったのがとても残念だった。そして注目のマーラーの5番だが、冒頭のトランペット・ソロが鮮やかに決まらず、それが最後まで尾を引いてトランペットは絶不調。それを挽回しようとしてか、他のパートは力一杯の力演をするのだが、それがまた空回りして、アゴーギクを多用した獅子奮迅のノットの采配にも関わらず焦点の定まらない演奏となってしまった。個々のパートの頑張りは相当で、とりわけホルン群の雄叫びは凄まじいものだったが、それもかえってバランスを崩した印象で、私がこれまで経験したノット+東響の実演のなかでは一番共感できない演奏だった。しかし、いささかフライングぎみで始まった盛大な拍手はいつまでも鳴り止まず、ノットはソロアンコールに応えていた。
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