これは新国立劇場が誇る名プロダクションの一つだと思う。私の記録が正しければ、2004年のプリミエ以来今回で5回目の登場ということになろう。長寿の原因は故ジョナサン・ミラーのオランダ絵画風の美しい舞台だろう。更に遠近法の見事さや回舞台を用いた「見せる舞台転換」の楽しさなど、その他の見どころも多い。そして今回は主役に人を得た。ニコライ・アライモはまさに適役と言っていいのではないか。容貌はもちろん、セリフ回しも、動きもまさに我々イメージにあるフォルスタッフなのだ。そして歌唱も朗々と響く美声で実に見事に決まる。女声陣はアリーチェのロベルタ・マンテーニャ、クイックリー夫人のマリアンナ・ピッツオラート、ページ夫人メグの脇園彩、ナンネッタの三宅理恵とイタリア系を多く揃えたが、中では三宅の澄んだリリカルな歌唱が印象的だった。脇園の演技は本場感に満ちてはいたが、いかんせん歌唱的な出番が少なくて残念。男声陣はフォードのホルヘ・エスピーノ、フェントンの村上公太、カイウスの青地英幸、バルドルフォの糸賀修平、ピストーラという配役だった。ホルヘのスタイリッシュな歌唱も良かったが、むしろ傍を固めた日本勢の健闘を讃えたい。とりわけ久保田のベテランの味は光っていた。ピットのコッラード・ロヴァーリスは、東響を率いて職人的に過不足なく全体を纏め上げ舞台を成功に導いた。
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