四年ぶりに川瀬賢太郎が登場して「怒りの日」で繋ぐプログラム。ソリストにN響のゲスト・コンマスも務める郷古廉を迎えた若き才能の眩しいコンサートだ。一曲目はイギリスの現代作曲家ジェームス・マクミランのバイオリン協奏曲だ。2009年に作られた所謂現代音楽にしては、自己満足的でなく聴衆を普通に楽しませてくれる音楽だ。ラベルのピアノ・コンチェルトを思わせる鞭の音ではじまったのにはいささか驚いたが、全体は決して聴きやすい音楽の垂れ流しではなく、「怒りの日」の引用があったり人の声が使われたりで創意に満ち、聞くものの感性を次から次へと刺激してくれる。華麗なテクニックとストラディバリの滑らかな音色に支えられたしなやかな郷古のソロはこの名曲を引き立てた。アンコールはイザイのバイオリン・ソナタ2番の2楽章。最後にしめやかに「怒りの日」が登場する。メインはベルリオーズの幻想交響曲だ。獅子奮迅の川瀬による爆炎系の演奏になるのではと予想していたのだが、この日の川瀬は実に細やかにオケをコントロールして予想を見事に「裏切」ってくれた。一楽章は少し停滞気味で流れや歌を欠いた所があったものの、2台のハープを舞台前面両側に配置した二楽章あたりから調子が出始めた。イングリッシュホルンやフルートやバスーンのソロも鮮やかだった。ダイナミックの変化や弦のアーティキュレーションへの十分な気遣いが音楽に立体感を与え、時として現れる爆発も決して汚くならずにシャープに決まる。シティ・フィルも絶好調で熱く内部で燃えながらも均整のとれたスタイリッシュな「幻想」だった。
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