先日、某S新聞のワシントン支局の人とお酒を飲む機会があった。
ワシントンに住む日本人の職業のうち多いのは僕のような研究者か、そうでなければ大使館関係者や報道関係者だという。
確かにワシントンがアメリカの政治的中心地であることを鑑みれば、研究者はともかくとして、後二者の職業の人間が多いのは当然といえるかもしれない。
ということで、ワシントンに住む者の運命であったのかどうかは良くわからないが、僕はひょんなことからS新聞の記者と一緒に酒を飲むことになったのである。
以前からジャーナリズムに興味のあった僕は、メディアの中で実際に働く人から直接ナマの話が聞けるとあってその日が来るのを心待ちにしていた。
飲み会の場所はD.C.にあるすし屋だった。
記者さんは30歳そこそこのまだ若い人だった。
始めの自己紹介等の他愛のない話のあと、少し酒が入って気分が乗ってきた頃を見計らって僕は口火を切った。
「それにしても、今度の大統領選どうなるんでしょうねー、もし次もブッシュが勝つようなことになれば僕はアメリカ国民を軽蔑しちゃいますよ」
ちなみに僕はこの飲み会の以前には、ジャーナリストってのは程度の差こそあれ基本的にはみんな反体制的精神を持ち合わせているものと勝手に思い込んでいたのであるが、実はそうではなかったらしい。
僕の発言を聞いた記者さんはぷりぷりと怒り出してしまったのだ。
「あーあ、どうしてリベラルぶった人たちっていつもそういう偽善的なことばっかり言うんでしょうかねー。日本がアメリカに歯向かって生きていけると思ってるんですか?二言目にはいつもブッシュが悪いだの、戦争に大義がないだのと言ってますけど、、、実際政局を任されたら小泉さんと同じことやるしかないでしょ?アメリカを支持しないでどうやってこの先生きてくっていうんですか?」
この発言を聞いたとき僕は正直妙に納得してしまった。
さすが天下のS新聞の記者である。
彼の主張はちゃんと自社の社説の内容に沿っているのである。
彼の言い方を観察する限りどうやら彼は本気のようだった。
つまりS新聞の人間としてあるべきスタンスを模索してそう言ったというよりも、彼自身が社説そのままの人間だったのである。
よりによって僕も対米追従大賛成を謳っているS新聞の記者さんに対しいきなりブッシュ批判はマズかったようだ。
しょうがないので話題を変えた。
「ところで記者クラブ制度についてどうお考えになりますか?」
現在の日本の報道を語るとき、欧米メディアとの決定的違いの一つがこの記者クラブの存在であろう。この記者クラブがあるために日本の報道はレベルが低いとしばしば他国の記者から揶揄されてしまう。
僕の理解する所の記者クラブとは、早い話が官僚や政治家などと仲良くしておいて情報のおこぼれにあずかろうとする制度である。記者達はそうやって分け与えられた情報をもとに記事を書く訳であるが、記者クラブに所属しない大手以外のメディアは一切会見場には入れない。情報は記者クラブ所属のメディアだけに横並びでもたらされ、抜け駆けは許されない。もし、一社が情報を独占しスクープでもしようものならあっという間に村八分にされクラブ出入り禁止になってしまう。従って抜け駆けのないように、かつ官僚や政治家に嫌われないように記事を書かざるを得ない。新規参入を否定しているから競争原理も全く働かず、主要大手メディアのみが情報を完全に独占する格好になる。
僕は、このような制度を支持する若い記者がいるはずないだろうなどとこれも勝手に期待を持っていたのだが、今回もその期待は見事に打ち砕かれてしまった。
「なんでそういうこと聞くんですか?」記者さんはむっとしながら言った。
「記者クラブをダメだとかいう人がいますけどね、僕には全く理解できないんですよ。情報はもらうけどちゃんと独自取材してますしね、政治家とか官僚ともたれ合ってる訳でもないですから、、、大きなお世話ですよ」
うーむ、そう頭ごなしに言われてしまうと全く議論にならん、、、
彼は僕なんかよりもずーっと若いのにどうしちゃったのだろう、、、と僕は少し悲しくなった。
メディアは第4の権力であるといわれる。メディアは国家権力に対しての強力なチェック機関としての役割を担っているべきである。そのためには取材対象となり得るあらゆる人物からの一切の利益供与を拒絶しなければならない。
そうでなければ公正な報道は出来ないはずだ。
そういう意味では、官僚や政治家から情報を分けて貰うという現行の記者クラブ制度には大いに問題があるといわざるを得ないと僕は思う。
しかも、新規参入が全くない業界をして“健全です”などと誰が言えるというのだろうか?
なんやかんやで飲み会はその後もつづき、
僕は“訊いた相手がまずかったのかなー”などと思いながら
暗澹たる気持ちでちびちびと日本酒を啜り続けるしかなかったのである。
ワシントンに住む日本人の職業のうち多いのは僕のような研究者か、そうでなければ大使館関係者や報道関係者だという。
確かにワシントンがアメリカの政治的中心地であることを鑑みれば、研究者はともかくとして、後二者の職業の人間が多いのは当然といえるかもしれない。
ということで、ワシントンに住む者の運命であったのかどうかは良くわからないが、僕はひょんなことからS新聞の記者と一緒に酒を飲むことになったのである。
以前からジャーナリズムに興味のあった僕は、メディアの中で実際に働く人から直接ナマの話が聞けるとあってその日が来るのを心待ちにしていた。
飲み会の場所はD.C.にあるすし屋だった。
記者さんは30歳そこそこのまだ若い人だった。
始めの自己紹介等の他愛のない話のあと、少し酒が入って気分が乗ってきた頃を見計らって僕は口火を切った。
「それにしても、今度の大統領選どうなるんでしょうねー、もし次もブッシュが勝つようなことになれば僕はアメリカ国民を軽蔑しちゃいますよ」
ちなみに僕はこの飲み会の以前には、ジャーナリストってのは程度の差こそあれ基本的にはみんな反体制的精神を持ち合わせているものと勝手に思い込んでいたのであるが、実はそうではなかったらしい。
僕の発言を聞いた記者さんはぷりぷりと怒り出してしまったのだ。
「あーあ、どうしてリベラルぶった人たちっていつもそういう偽善的なことばっかり言うんでしょうかねー。日本がアメリカに歯向かって生きていけると思ってるんですか?二言目にはいつもブッシュが悪いだの、戦争に大義がないだのと言ってますけど、、、実際政局を任されたら小泉さんと同じことやるしかないでしょ?アメリカを支持しないでどうやってこの先生きてくっていうんですか?」
この発言を聞いたとき僕は正直妙に納得してしまった。
さすが天下のS新聞の記者である。
彼の主張はちゃんと自社の社説の内容に沿っているのである。
彼の言い方を観察する限りどうやら彼は本気のようだった。
つまりS新聞の人間としてあるべきスタンスを模索してそう言ったというよりも、彼自身が社説そのままの人間だったのである。
よりによって僕も対米追従大賛成を謳っているS新聞の記者さんに対しいきなりブッシュ批判はマズかったようだ。
しょうがないので話題を変えた。
「ところで記者クラブ制度についてどうお考えになりますか?」
現在の日本の報道を語るとき、欧米メディアとの決定的違いの一つがこの記者クラブの存在であろう。この記者クラブがあるために日本の報道はレベルが低いとしばしば他国の記者から揶揄されてしまう。
僕の理解する所の記者クラブとは、早い話が官僚や政治家などと仲良くしておいて情報のおこぼれにあずかろうとする制度である。記者達はそうやって分け与えられた情報をもとに記事を書く訳であるが、記者クラブに所属しない大手以外のメディアは一切会見場には入れない。情報は記者クラブ所属のメディアだけに横並びでもたらされ、抜け駆けは許されない。もし、一社が情報を独占しスクープでもしようものならあっという間に村八分にされクラブ出入り禁止になってしまう。従って抜け駆けのないように、かつ官僚や政治家に嫌われないように記事を書かざるを得ない。新規参入を否定しているから競争原理も全く働かず、主要大手メディアのみが情報を完全に独占する格好になる。
僕は、このような制度を支持する若い記者がいるはずないだろうなどとこれも勝手に期待を持っていたのだが、今回もその期待は見事に打ち砕かれてしまった。
「なんでそういうこと聞くんですか?」記者さんはむっとしながら言った。
「記者クラブをダメだとかいう人がいますけどね、僕には全く理解できないんですよ。情報はもらうけどちゃんと独自取材してますしね、政治家とか官僚ともたれ合ってる訳でもないですから、、、大きなお世話ですよ」
うーむ、そう頭ごなしに言われてしまうと全く議論にならん、、、
彼は僕なんかよりもずーっと若いのにどうしちゃったのだろう、、、と僕は少し悲しくなった。
メディアは第4の権力であるといわれる。メディアは国家権力に対しての強力なチェック機関としての役割を担っているべきである。そのためには取材対象となり得るあらゆる人物からの一切の利益供与を拒絶しなければならない。
そうでなければ公正な報道は出来ないはずだ。
そういう意味では、官僚や政治家から情報を分けて貰うという現行の記者クラブ制度には大いに問題があるといわざるを得ないと僕は思う。
しかも、新規参入が全くない業界をして“健全です”などと誰が言えるというのだろうか?
なんやかんやで飲み会はその後もつづき、
僕は“訊いた相手がまずかったのかなー”などと思いながら
暗澹たる気持ちでちびちびと日本酒を啜り続けるしかなかったのである。
もしかしたら、仕事じゃないたわいもない話を
すっごくしたい気持ちだったのかもしれませんよね・・。
でも、ちょっぴり残念ですよね。
確かに管理人氏が予想していたような答えを
自分も予想してしまう質問内容ですが・・・
組織の中に入ってしまうと、組織の考え方に
染まってしまうのか?
あるいは、自分の考え方に近い新聞社に入ったのか?
なんなんでしょうね。
もっとアホな話で盛り上がりたかったのでしょうね。
ということで、また一つ勉強になりました。
新聞記者さんとか出版社などのマスコミの方と
会って話す機会がいろいろとありました。
すごくその会社のカラーというのはあるようですね。
で、そのなかでもプロ意識があるというより、
サラリーマン的な人も多いという感じがしました。
マスコミだけでなく、クリエーティブと言われる職業の人でも、そういう人いますしね。
kazu-nさんがふった話題だとフリーな人で
ないと盛り上がるのは難しそう・・・。
結局記者クラブから疎外されて一番不利益を被っているのはこうしたフリーの記者たちな訳ですからね、、
そういえば、あるジャーナリストが
“真っ向勝負の記事を書こうとする記者はデスクとよくぶつかる。そしてそういう記者は決して出世できない”みたいなことを言っていたのを聞いたことがあります。
まあ、どこの国でもあることなのかもしれませんが、全くしょーもない話ですよね。