Drマサ非公認ブログ

ALS患者の嘱託殺人について

@ALS患者の嘱託殺人について

 

 まずYahooニュースから。

“嘱託殺人”父「くそたれと娘の納得」

https://news.yahoo.co.jp/articles/5e74b34f41d596df24504bc511f50ceac648bcde

 

 ニュースで知られる通り、ALSの患者から依頼を受け、医師2人が薬物投与して殺害し逮捕された。患者は安楽死を望んでいた。

 手短に。医師2人はSNSでやりとりしている。であるから、当の患者の生活に寄り添って医療していたわけではない。SNSというシステムで繋がっただけである。

 これらの医師は安楽死に賛成なのではないかと想像する。しかし、医師は患者本人とはそれほどのやりとりもしていないので、つまりSNS程度のコミュニケーションしかしていないので、安楽死に賛成するという理念を適応して実施したことになる。つまり観念論とさえいえる。

 安楽死の法的規定はよく知らないが、医師に欠けている事がある。具体的な人間の生活、実践である。ALSの女性患者がどんな人なのか、その人の家族、あるいは親しくしている人びと。彼らとどれほどのコミュニケーションをしていたといえるのだろうか。ゆえに観念論ではないかと疑うのだ。

 以前にも大西つねきさんの件で、似たようなことを書いた事があるのだが、人間は時間的存在であるから、今SNSで思いを述べているにしても、変化する事がある。また人間は共同的存在であるので、共同性の中でコミュニケーションを重ねると、意見が変わる可能性がある。

 とすると、SNSで安楽死だとして手を加えるというのは安易である。葛藤や苦しみを共有していない。観念として共有しているのは真に共有しているとは言えない。そこで逡巡し決断するには他人過ぎる。

 最初にあげたYahooニュースで、亡くなった女性の娘さんが「くそったれと納得」という相矛盾する気持ちを吐露するのは、まさに逡巡していた証である。そこに人間の時間性と共同性が垣間見える。

 それにしても、ALSの患者さんを支える社会システムがあるかといえば、当然そうではない。やはり僕たちの問題である。

 亡くなった方、そして娘さんに苦悩を与えた背景に「人に冷たい社会」という事実が突きつけられている。2人の医者もまた、このような背景の中で行動を起こしたとすれば、この事件は「人に冷たい社会」の1現象ということになる。

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