MMT批判ももちろんあります。僕なりにいくつか読んだ中で、批判に相当するものもありました。それはインフレのコントロールを政府ができない可能性に言及するものでした。確かに政府を信用していいのかは難しい問題があります。
そこをどう考えるのかは、そもそも市場に政府が介入しすぎになった場合、政府がどのような性格なのかによって変動します。さしずめ、今の状況なら、弱者いじめ(ハラスメント)に向かうのではないかと危惧します。こうなると人々が求める国家像と権力の問題に入って行くことになります。難しいので、真の経済学者にまず考えてもらいたいと思います。ケインズのような天才が出てくれって言っているようなものですが。
ここは経済学だけではない問題さえ孕むと思います。
次にプライマリーバランスの問題をあげる議論があります。これはまさに現在の財政学の主流で、日銀が国債を買い続けると赤字になるという議論です。これは彼らからすれば、非常識ということになります。ただ平時には問題も生じないでしょうが、当然現在のような“戦時”では国民が大きな被害を受けると思います。特に共同性が脆弱な日本社会では、金が回らず、人が死ぬのではないでしょうか。
ちなみに道徳的にいけないという意見は論外でしょう。借金は返さなければならないという個人に当てはまる通俗道徳を、国家や社会全体にあてはめるのは社会科学のセンス自体が欠けています。
MMT批判ではお金を刷ってばら撒けばいいのなら無税国家にすればいいという議論も見ました。これは国家や国債が税に依拠しているというMMTの根本を理解していないようです。
さて先進国で丸々20年以上、経済成長していない国は日本だけです。デフレを続けているのも日本だけです。
それについては今の僕の手には余るので、ここまでにしようかと思います。ただ少し感じていることは、お金で何かを買うことよりも、蓄えておきたいという方向に欲望づけられているのではないかと思います。
また大企業についてはよく指摘されるように、利益を上げているのに、莫大な内部留保があると指摘されます。よくある批判は、その内部留保を個人に回せというものです。言い換えると、賃金をあげるべきという考えです。僕もそうなんだろうなとは思いますが、大企業は内部留保しておきたいという事情があるのではないでしょうか。そのような行動に結びつく背景こそ明らかにすべきだと思います。
これについてはまたまた面倒になりますが、日本文化の問題やドラッガー的なマネジメント、イノベーションを創造する教育の問題などに起因するのではないかと疑っています。
ちなみにMMT反対論者も、自国通貨建て国債を発行している限り、自国の現金を渡せば国債償還が可能であるので、債務不履行(デフォルト)は起きないという点を批判するものいません。問題はインフレですが、日本の金利は0.05%と低く、10年の日本国債がデフォルトになることはないと。これもMMT反対論者も認めるますが、そこで物価上昇しインフレ率2%越えとなった場合、デフォルトは生じる可能性は高いわけです。
ということは、今現在は問題ないが、将来インフレ率が上がり、将来世代に負担がかかるという財務省がよく指摘する話も事実になりますが、インフレ率のコントロールの失敗が前提となるので、現在はやはり問題はないことになります。これ以外にもインフレを危惧する考えもありますが、ここではご容赦いただきます。
ただ少し気持ち悪いのですが、MMT批判は「主流派経済学からすると」という立場からの議論が多いような気がします。主流だと正しいわけでもないでしょう。その主流が人を苦しめていたとしたら・・・、そういう主流派経済学が中心の経済世界がどのような世界になっているのかと、素人ながら「大丈夫なのかなあ」と斜めに見てしまうのは私だけではないとも思います。
もう1回続きます。