Drマサ非公認ブログ

バカな医者の話

 もう20年ほど前になるだろうか。

 当時僕は大学病院の当直事務をしていた。ある日の17時過ぎ、有名な女性歌手が救急受診した事があった。

 病院もビックネームの受け入れで、まだ時間も早く、一般の方に気づかれないように、通常の救急診療室ではなく他の場所で診察を行なった。

 ここの病院では頻繁に芸能人が救急診療に来てもいたのではあるが、配慮したわけだ。受付業務は僕が行なった。

 その際、その女性歌手の受付に必要な情報を確認するために、その部屋に行きながら、マネージャーと確認を行った。そうすると、その部屋にぞろぞろ多くの医者が入って行く。

 僕は「なんでこんなに医者がいるのだろう」と不思議に思っていたのだが、その後担当の救急看護師がその事情を教えてくれた。なんと、医者の多くは診療とは無関係で、ただ単に女性歌手を見にいっただけだというのだ。

 正直あきれた。看護師もあきれていた。医者ともあろう者が、病気の有名人をただ見たいといって、医者であることをいいことに、関係ないのに見にいったということだ。見世物でもあるまい、ましてや診察なのである。愚行である。

 この女性歌手は結局入院した。それほどの病気というわけではなく、大事をとっていうものであったと思う。なんと1日30万円の特別室に入院した。この部屋は秘書室もあり、一般が使用しないエレベーター直通であったと記憶している。マネージャーが入院手続きを行ったが、その対応は僕が行った。

 今でも覚えているのだが、22時過ぎにスポーツ新聞から電話が入った。なぜ電話交換が当直事務に回したのかというと、管理当直という病院の人間が事情がよくわからないといって、僕たちの方に回して来たのだ。スポーツ新聞が聞いて来たことは「XXXXが入院していると聞いたのですが、本当ですか?」という質問であった。

 そこで、「病院は時間外なので、入院患者の情報を全て把握しているわけではありませんが、私ども当直事務が知る限りでは、聞いていません」程度の受け答えを行った。

 この電話はすぐ終わったのだが、「もう漏れているよ」と一緒に働くスタッフと驚いていたら、今度は女性歌手のチーフマネージャーから電話が入った。

 以下のような話であった。

 「すでにマスコミが入院について知っている。当然漏らしたのは病院の方になるはずだ。30万円の部屋にしたのも、情報が漏れないようにという事で決めたし、入院した際にその旨伝えているが、どうなっているのか」

 先方は冷静に話して来た。こちらとしては病院の当直事務である。派遣である。深夜でもあるので、ここで明確にお答えする事ができない旨を伝え、早朝病院の担当にこの問題を必ず話すると伝えた。先方は理解したとして、また確認するとのことで電話は終わった。結構長電話になったと記憶している。

 翌朝、病院の担当部署にこの話をしたが、「そんなことあったの・・」程度の反応で、なんか拍子抜けであった。正直に言って、病院というのはこの程度だと僕は思っている。

 結局、情報を漏らしたのは関係ないのに診察の部屋に入って行った医者であった。まだ研修医であったと記憶している。彼が友人のスポーツ新聞関係者に自ら電話して、「XXXXがうちの病院に入院した」と伝えたということであった。仲のいい看護師が教えてくれた。ちなみに病院の方からは僕たちになんの説明もなかった。現場で苦労したのはこっちなんだけどね。

 今でも、情報漏洩をした医者はどこかで診察しているのだろう。オペでもしているのかなあ。ふとそんなことを思ったりした。

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