朝、キッチンで柴崎が朝食の支度をしている。
手塚はまだ起きてこない。
柴崎は出勤のための身支度をあらかた調えていた。
働く主婦の朝は忙しない。
手は料理を作りつつ、頭の中は出かけるまでと職場に行ってからの段取りを計算するのにフル回転していた。
しばらくして、リビングの入り口に人の気配がした。
「おはよう」
手塚が起きてきたのだ。パジャマのままだ。
手塚はまっすぐに柴崎のほうへ歩いてきた。
「麻子」
と言いながら、柴崎を後ろから抱きしめる。
柴崎の耳元に手塚の頭が降りてくる。
柴崎の身体をこちらに向けて、キスをしようとした手塚は唇に妻の細い指が当たるのを感じた。口に何かが放り込まれたのだ。
驚いた手塚が大きく目を見開いて、柴崎を見つめた。
「おはよう。おめざのお味はいかが?」
してやったりとばかりに、チュシャ猫を彷彿とさせる柴崎の笑顔が手塚に向けられた。
「あまい」
もぐもぐと口を動かしながら、手塚は答えた。
「チョコ?」
手塚は口の中のものを飲み下したあと、訊ねた。
「そう。我が家の定番、チロルチョコです」
奥方さまは威張って答える。
「朝の支度で忙しいときに欲情してる糖分不足の亭主には甘いものを補給してあげなくっちゃね。邪魔されたら敵わないもの」
柴崎はいたずらが大成功した子供のように嬉しそうに笑った。
「邪魔する。まだ全然足りないよ」
手塚は柴崎を抱き締めなおし、深く深くキスを落とした。
まったくもう!!ウチの「構ってちゃん」てば幼稚園児並みなんだから。
図体がでかいだけに、幼稚園児よりもタチが悪いわ!!!
柴崎も手塚も家を出た時刻はいつもよりも15分も遅かった。
通勤時間3分という職住隣接の環境のおかげでなんとか遅刻こそ免れたものの、朝の15分の貴重さを考えると、夫の所業は万死に値する。
もう、ぜーったい週末のランチはフレンチ奢らせてやる。
もちろん光のお小遣いで。
固く固く胸に誓う柴崎であった。
<2009/01/26>
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手塚はまだ起きてこない。
柴崎は出勤のための身支度をあらかた調えていた。
働く主婦の朝は忙しない。
手は料理を作りつつ、頭の中は出かけるまでと職場に行ってからの段取りを計算するのにフル回転していた。
しばらくして、リビングの入り口に人の気配がした。
「おはよう」
手塚が起きてきたのだ。パジャマのままだ。
手塚はまっすぐに柴崎のほうへ歩いてきた。
「麻子」
と言いながら、柴崎を後ろから抱きしめる。
柴崎の耳元に手塚の頭が降りてくる。
柴崎の身体をこちらに向けて、キスをしようとした手塚は唇に妻の細い指が当たるのを感じた。口に何かが放り込まれたのだ。
驚いた手塚が大きく目を見開いて、柴崎を見つめた。
「おはよう。おめざのお味はいかが?」
してやったりとばかりに、チュシャ猫を彷彿とさせる柴崎の笑顔が手塚に向けられた。
「あまい」
もぐもぐと口を動かしながら、手塚は答えた。
「チョコ?」
手塚は口の中のものを飲み下したあと、訊ねた。
「そう。我が家の定番、チロルチョコです」
奥方さまは威張って答える。
「朝の支度で忙しいときに欲情してる糖分不足の亭主には甘いものを補給してあげなくっちゃね。邪魔されたら敵わないもの」
柴崎はいたずらが大成功した子供のように嬉しそうに笑った。
「邪魔する。まだ全然足りないよ」
手塚は柴崎を抱き締めなおし、深く深くキスを落とした。
まったくもう!!ウチの「構ってちゃん」てば幼稚園児並みなんだから。
図体がでかいだけに、幼稚園児よりもタチが悪いわ!!!
柴崎も手塚も家を出た時刻はいつもよりも15分も遅かった。
通勤時間3分という職住隣接の環境のおかげでなんとか遅刻こそ免れたものの、朝の15分の貴重さを考えると、夫の所業は万死に値する。
もう、ぜーったい週末のランチはフレンチ奢らせてやる。
もちろん光のお小遣いで。
固く固く胸に誓う柴崎であった。
<2009/01/26>
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早く塩バニラでないかな~~~。
柴崎、もっと早く起きないとだね(^o^)
たくねこさま、コメントをありがとうございました。
拙文をお読み下さったすべての皆さまへ
作者せらです。改めてお礼を申し上げます。
お読みいただき、有難うございました。