ひかりは、今どきの子には珍(めずら)しく本好きときている。家の近くに図書館(としょかん)があるので、毎日のように通(かよ)っていた。彼女は、そこの蔵書(ぞうしょ)をすべて読破(どくは)するのを目標(もくひょう)にしていた。
ある日のこと、家で借(か)りてきた本を読んでいると、一枚のカードが挟(はさ)まれているのを発見(はっけん)した。そのカードには本のタイトルとページ数が書かれ、最後(さいご)に〈あなたは幸せを手にできる〉と書き添(そ)えられていた。
最初(さいしょ)、誰(だれ)かのイタズラだと彼女は思った。でも何となく気になって、次の日に図書館でその本を捜(さが)してみた。彼女にとって本を捜すのは容易(たやす)かった。目当(めあ)ての本を見つけると、指定(してい)されたページを開(ひら)いてみる。そこには、またカードが挟まれていて、本の名前とページ数が記(しる)されていた。そして最後に、〈あなたは幸せに一歩近づいた〉とあった。
「もう、何なのよ」ひかりはじれったそうにつぶやいた。
ここまできたら途中(とちゅう)で止められない。彼女は次の本へと向かった。だが、その本はなかなか見つからなかった。彼女は図書館の人に訊(き)いてみた。すると、
「ああ、その本なら貸(か)し出し中ですね。たぶん、来週には返却(へんきゃく)されると思いますが」
「そんな…。あたし、どうしてもその本が必要(ひつよう)なんです」
「でもこの本、人気(にんき)があるみたいで、戻(もど)って来てもすぐ次の人が借りていきますからね」
彼女は愕然(がくぜん)とした。そんな人気のある本なのに、あたし、まだ読んでないなんて…。
<つぶやき>その本にはどんな幸せが記されているのか。読んでみたいと思いませんか?
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