みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0948「戻る?」

2020-09-03 18:05:05 | ブログ短編

 彼女は突然(とつぜん)、見知(みし)らぬ男から声をかけられた。男は戸惑(とまど)いながら、
「あの…、僕(ぼく)のこと覚(おぼ)えてるかなぁ? ほら、この間(あいだ)、ホテルのパーティーで…」
 彼女は思い出したようで、小さく声をあげた。男はホッとして、
「ほんと、あの時はごめんなさい。ちゃんと謝(あやま)りたかったんだけど…」
 パーティーで、彼は彼女にぶつかって、手にしたビールをドレスにかけてしまったのだ。
「あのことは、もう気にしないで下さい」彼女はその場を離(はな)れて行く。
「ちょっと待って下さい」男は彼女を追(お)いかけて、「あの、お話しがあるんですが…」
「あなた、どうしてあたしのことを…。ストーカーですか?」
「いいえ、違(ちが)いますよ。たまたま僕の知り合いに、君(きみ)のことを知ってる人がいて」
「それで、あたしのことを待ち伏(ぶ)せしてたんですか?」
「そ、それは…。実(じつ)は…、君と会ったとき、君のことが見えたって言うか…。初めて会ったのに、懐(なつ)かしい感じがして…。これは運命(うんめい)じゃないかって――」
 運命…、この言葉(ことば)で彼女は辛(つら)い出来事(できごと)を思い出してしまった。半年前に彼女は恋人(こいびと)を亡(な)くしているのだ。彼女は唇(くちびる)を噛(か)みしめて、あふれてくる悲(かな)しみを抑(おさ)えようとした。
 それを見て男が言った。「大丈夫(だいじょうぶ)、僕はいつでも君のそばにいるよ。これは運命だから」
 彼女はハッとして言った。「どうして知ってるんですか? あの人の最後(さいご)の言葉を――」
<つぶやき>これは生まれ変わり? いや、幽霊(ゆうれい)が憑依(ひょうい)したってことなんでしょうかね?
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