みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0959「焦がれる4」

2020-09-25 17:55:30 | ブログ短編

 翌日(よくじつ)、吉乃(よしの)は小木(おぎ)君に忠告(ちゅうこく)した。死(し)んだ人とそんなこと――。でも、小木君は素(そ)っ気ない態度(たいど)で、話を聞こうともしなかった。吉乃には、それ以上(いじょう)何も言えなかった。
 次(つぎ)の日。小木君は学校(がっこう)を休んだ。放課後(ほうかご)になると、吉乃は誰(だれ)もいない美術室(びじゅつしつ)にいた。
「ねぇ、いるんでしょ」吉乃は教室(きょうしつ)を見回(みまわ)して言った。「結衣(ゆい)、出てきてよ。話があるの!」
 静(しず)まり返った教室(きょうしつ)。遠くで、生徒(せいと)の騒(さわ)ぎ声がかすかに聞こえた。いつの間にか辺(あた)りは薄暗(うすぐら)くなっている。吉乃があきらめて教室を出ようとしたとき、背後(はいご)に気配(けはい)を感じた。ゆっくり振(ふ)り返ると、そこに結衣の姿(すがた)があった。結衣は無表情(むひょうじょう)な顔でささやいた。
「小木くんは…、どこ? どうして来てくれないの? あたし、ずっと待ってるのに…。あなたね。あなたが――」結衣はどんどん吉乃に迫(せま)ってきて、「あたしからとらないで!」
 結衣の手が、吉乃の首(くび)に取りついた。吉乃は机(つくえ)の上に倒(たお)れ込んだ。結衣の冷(つめ)たい手が、吉乃の首をしめ上げていく。突然(とつぜん)、教室の扉(とびら)が開いて小木君が飛(と)び込んで来た。
「やめるんだ! やめてくれっ。結衣、彼女はダメだ。僕(ぼく)を…、僕を連(つ)れて行け」
 結衣は、にっこり微笑(ほほえ)むと、手を放(はな)して小木君の方へ向かって行った。結衣の手が、小木君に触(ふれ)れる瞬間(しゅんかん)――。吉乃が二人の間(あいだ)に割(わ)って入った。
「だめ! 小木君は渡(わた)さないわ。私、小木君のこと…、ずっと好きだったの。だから、だから…。結衣には、渡せない。ごめん、結衣。許(ゆる)して……」
<つぶやき>この後、結衣の姿(すがた)はゆっくり消(き)えていったそうです。二度と二人の前には…。
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