みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1327「恩返し」

2022-11-13 17:28:11 | ブログ短編

 彼女の前に、見知(みし)らぬ男が現れた。その男は彼女に言った。「何か困(こま)ってないか?」
 彼女は気味(きみ)が悪(わる)くなって、その男の前から逃(に)げ出した。
 数日後。彼女が財布(さいふ)を落(お)として困っていると、この間(あいだ)の男がまた現れた。男は、彼女が落とした財布を差(さ)し出して、ぶっきらぼうに言った。「落ちてたから、拾(ひろ)っておいた」
 彼女が財布を受け取ると、男はそのまま行ってしまった。
 またまた数日後。突然(とつぜん)の雨で彼女が困っていると…。またあの男が、ずぶ濡(ぬ)れになって現れた。今度は手にしたビニール傘(がさ)を差し出して、「これ、使ってくれ」
 彼女は、行こうとする男を呼(よ)び止めて、「どうして、あたしのこと助(たす)けてくれるの?」
 男はうつむき加減(かげん)で答(こた)えた。「それは、恩返(おんがえ)しだよ。昔(むかし)、あんたに助けてもらった」
「えっ? ちょっと待ってよ。あたし、あなたのこと知らないわ。助けてなんか…」
「気にしないでくれ。俺(おれ)が勝手(かって)にやってることだ」
「でも…。ほんとにあなたのこと覚(おぼ)えてないのよ。人違(ひとちが)いじゃないの?」
 男は寂(さび)しげな顔で、「いや、間違(まちが)いないよ。いいんだ、覚えてなくても」
 彼女は、どこで会ったのか教えて欲(ほ)しいと頼(たの)んだ。
 だが、男は首(くび)を横に振(ふ)って、「気にしないでくれ。俺は、たいしたことはしてないよ」
  男は大きなくしゃみをして身体(からだ)をぶるっと震(ふる)わせると、駆(か)けて行ってしまった。
<つぶやき>いったいこの男は何者(なにもの)なのか? 人なのか、それとも何かの化身(けしん)なのかも?
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