みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1324「駆け引き」

2022-11-04 17:35:02 | ブログ短編

 彼は校門(こうもん)から出たところで、同じ学校(がっこう)の女の子から声をかけられた。どうやら、彼のことを待ち伏(ぶ)せしていたようだ。女の子は恥(は)ずかしそうに言った。
「あの…。スキです。あたしと…付き合ってください」
 彼は突然(とつぜん)の告白(こくはく)に驚(おどろ)いた。好きですと言われても…。まったく知らない娘(こ)に、何て答(こた)えればいいのか…。彼は思わず言った。「君(きみ)…、だれ?」
 女の子は、そこで初めて、自分(じぶん)が彼から認知(にんち)されていないことを知った。女の子は、「ちょっと、待ってて…」と彼に言うと、後(うしろ)を向いてぶつぶつと何かを呟(つぶや)いていた。待たされることになった彼は、どうにも手持(ても)ちぶさたになっていた。女の子は向き直(なお)ると、
「あたしのこと、覚(おぼ)えてませんか? 一年前、あたしが悪(わる)ガキたちにいじめられそうになってたとき…、あたしのこと助(たす)けてくれたじゃないですか」
 彼は首(くび)を傾(かし)げて、「ごめん。覚えてない。人違(ひとちが)いじゃないのか?」
「そ、そんなことない。あなたよ。あたし、ちゃんと覚えてるもん。あの時からあたし…、あなたのことが頭から離(はな)れなくて…。まさか、同じ学校だなんて。これは、運命(うんめい)かも…」
 彼はまったく興味(きょうみ)がないのか、「ごめん。俺(おれ)、もう行かないと…」
 女の子は彼を引き止めて、「あの、ダメなんですか? 返事(へんじ)は、いまじゃなくてもいいんです。友だちから初めても…。あたしに、チャンスをください。お願いします」
<つぶやき>女の子は必死(ひっし)なんです。彼にたいする思いが強すぎて…。もう止(と)まらない。
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