その日の夜。みんなはあの場所(ばしょ)に集まっていた。水木涼(みずきりょう)の治療(ちりょう)をしている間(あいだ)に、千鶴(ちづる)の号令(ごうれい)で食卓(しょくたく)の用意(ようい)を完了(かんりょう)させた。お皿(さら)を並(なら)べ終えた頃(ころ)、アキが涼を連れて戻(もど)って来た。柊(ひいらぎ)あずみは涼を抱(だ)きしめて言った。
「良(よ)かったわ、無事(ぶじ)で…」
涼はちょっと恥(は)ずかしげに、「心配(しんぱい)しすぎだよ。これくらい…何ともないから…」
千鶴はみんなを座(すわ)らせると、「さぁ、お腹(なか)すいたでしょ。食事(しょくじ)にしましょ」
つくねが見回(みまわ)して言った。「しずくは? まだ、戻ってないの?」
千鶴がそれに答(こた)えて、「ええ。みんなと一緒(いっしょ)だとばかり思ってたわ。捜(さが)してみましょうか」
千鶴は能力(ちから)を使ってみた。だが、どこにもしずくの姿(すがた)は見つからない。
あずみが呟(つぶや)いた。「おかしいわね。どこへ行ったのかしら?」
つくねは今朝(けさ)のことを思い出して、「朝、変なこと言ってたわ。今日のことを言い当ててたの。真面目(まじめ)な顔(かお)をして、みんなを守(まも)ってねって…。まるで、どこかへ行って…」
つくねは、部屋(へや)を飛(と)び出そうとした。それを、あずみが引(ひ)き止めて、
「どこへ行くの。心配ないわ。しずくを信(しん)じましょ。きっと戻って来るから」
川相初音(かわいはつね)が口を出した。「そうよ。しずくは、そう簡単(かんたん)にはやられないわ」
だが、つくねは何だが胸騒(むなさわ)ぎがしていた。何か、悪(わる)いことが起きそうな…。みんなの顔にも、不安(ふあん)の色が浮(う)かんでいるようだった。
<つぶやき>しずくはどこへ消(き)えたのか? たぶん、あまりを助(たす)けに向かったのかも…。
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