山の中にある別荘(べっそう)。ここで事件(じけん)があったのか警官(けいかん)が入口(いりぐち)に立っていた。そこへ女がやって来た。髪(かみ)をポニーテールにして黒い大きな鞄(かばん)を肩(かた)から下げている。彼女は警官に一礼(いちれい)すると、張(は)られている黄色いテープをくぐって別荘に入って行った。
別荘の中には厳(いか)めしい顔つきの鬼瓦刑事(おにがわらけいじ)が待(ま)っていた。刑事は彼女と目が合うと言った。
「よお、樋口(ひぐち)…。今日は、目黒(めぐろ)と一緒(いっしょ)じゃないのか?」
女はそれに答(こた)えて、「所長(しょちょう)は別件(べっけん)の調査(ちょうさ)に――」
「ああ。また、迷(まよ)い猫(ねこ)でも探(さが)してるのか?」
「いえ、何とかヤモリを探してます。あたしは…爬虫類(はちゅうるい)はちょっと…」
「まあいい。一昨日(おととい)、ここで男が死(し)んでいた。どうやら、毒(どく)キノコを食べちまったようだ」
「なら、事件じゃないですよね。……何か気になることでも?」
「大ありだよ。キッチンは綺麗(きれい)なもんだ。生(なま)ゴミひとつなかった。それに、死んだのはベンチャー企業(きぎょう)の社長(しゃちょう)ってことになってるが、どうもペーパー会社(がいしゃ)なんだよ。この別荘も借(か)り物のだった。家主(やぬし)の話では、一週間の約束(やくそく)で貸(か)したそうだ」
女は刑事の話を聞きながら別荘の中を歩き回っていた。そして壁(かべ)の仕掛(しかけ)けを見つけると、壁の奥(おく)から隠(かく)し部屋(べや)が出てきた。そこからパソコンと札束(さつたば)の山が…。女は言った。
「その家主、怪(あや)しいです。話しを聞いた方がいいと思います」
「だろ。俺(おれ)もそうだと思ってたんだ」鬼瓦は満面(まんめん)の笑(え)みを浮(う)かべて飛(と)び出して行った。
<つぶやき>新シリーズになるのか? 続(つづ)きはいつになるのか、ちょっと分かんないなぁ。
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