みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1380「しずく191~約束」

2023-04-23 17:29:56 | ブログ連載~しずく

 月島(つきしま)しずくが螺旋階段(らせんかいだん)を降(お)りきると、そこには大きな鉄(てつ)の扉(とびら)があった。しずくがその扉に手を触(ふ)れると、しずくの身体(からだ)は扉の中へ吸(す)い込まれていった。
 扉の中は大きな研究室(けんきゅうしつ)だった。巨大(きょだい)な装置(そうち)が並(なら)んでいて、まるで化学工場(かがくこうじょう)のようだ。何人もの研究員(けんきゅういん)が忙(いそが)しく働(はたら)いていて、その中をしずくは歩いて行く。装置の中央(ちゅうおう)あたりに、しずくは日野(ひの)あまりの姿(すがた)を見つけた。しずくは思わず息(いき)を呑(の)んだ。
 あまりは装置の中に組(く)み込まれていた。身体は装置とチューブでつながれ、頭には何本も電極(でんきょく)の針(はり)が突(つ)き刺(さ)さっている。あまりは生(い)きているのか? しずくは、彼女の頬(ほお)に手を当(あ)てた。しずくはホッとした。温(ぬく)もりがあった。まだ、生きている。でも、どうやって助(たす)けるのか? ムリに装置から引き離(はな)すと、あまりの命(いのち)もどうなるか分からない。
 そこへ、研究員たちがやって来た。計器(けいき)のチェックをしているようだ。一人が言った。
「まだ子供(こども)なのに…。この娘(こ)、どうなるんですかねぇ? かわいそうに…」
 もう一人が小声で咎(とが)めるように、「おい、誰(だれ)かに聞かれたら大変(たいへん)なことになるぞ。同情(どうじょう)なんかするな。どうせもう助からないよ。こいつはもう、この装置の部品(ぶひん)なんだから」
 研究員たちが立ち去(さ)ると、しずくはまた、あまりの頬にふれた。能力(ちから)を使いあまりの心の中へ入り込む。しずくの目から涙(なみだ)があふれてきた。あまりはあきらめてはいなかった。生きようと必死(ひっし)でもがいていた。しずくは必(かなら)ず助けると、あまりと約束(やくそく)をした。
<つぶやき>まさかこんなことになってるなんて…。彼女を助けることはできるのか…。
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