鉄(てつ)の扉(とびら)の中は広い空間(くうかん)になっていた。削(けず)られた岩盤(がんばん)がむき出しになっていて、何台もトラックが停(と)まっている。いろんな物資(ぶっし)を運(はこ)び込んでいるようだ。
川相姉妹(かわいしまい)より先(さき)に入った月島(つきしま)しずくは、ここを通り抜(ぬ)けると別の扉の中へ消(き)えて行った。扉の先は長い通路(つうろ)になっていて、両脇(りょうわき)にはずらりと扉が並(なら)んでいる。しずくは迷(まよ)うことなく真っ直(す)ぐに進(すす)んだ。途中(とちゅう)で何人かの兵士(へいし)や白衣(はくい)を着た研究員(けんきゅういん)とすれ違(ちが)ったが、誰(だれ)もしずくには気づかない。しばらく行くと、下へ降(お)りて行く長い螺旋階段(らせんかいだん)があった。下の方から機械(きかい)の唸(うな)るような音が微(かす)かに聞こえてくる。しずくはその階段を降りて行った。
――あの場所(ばしょ)に戻(もど)ると、千鶴(ちづる)が迎(むか)えた。柊(ひいらぎ)あずみは初音(はつね)たちが戻っていないのを知ると、「まったく…。どうしてあの娘(こ)たちは勝手(かって)なことするのよ」
千鶴がなだめるように、「私の気持(きも)ち、分かったでしょ。あなたと同じことしてるだけよ」
「わ、私はそんなこと……。もう、いいわよ。きっと烏山(からすやま)に向(む)かったんだわ」
神崎(かんざき)つくねが言った。「じゃあ、あたし、テレパシーで――」
あずみはそれを止(と)めて、「そんなことをすると、敵(てき)に気づかれるかも知れないわ。私たちも装備(そうび)を調(ととの)えて烏山に行くわよ」
貴志(たかし)が言った。「じゃあ、僕(ぼく)も手伝(てつだ)わせてよ。そのために来たんだから…」
千鶴が口を挟(はさ)んだ。「用意(ようい)はできてるわよ。でも、その前に腹(はら)ごしらえをしないとね」
<つぶやき>いよいよ戦(たたか)いが始まるのか。いったいどんな敵が待っているんでしょうか?
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