みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1378「帰省」

2023-04-15 17:37:00 | ブログ短編

 初老(しょろう)の男性が二人、ベンチに座(すわ)っておしゃべりをしていた。
「なぁ、もうすぐお盆(ぼん)だけど、今年は帰(かえ)るのかい?」
「どうかなぁ。まぁ、俺(おれ)がいなくても家族(かぞく)は何とも思わないだろうし…」
「そんなことないだろ。今年は帰ってやれよ。顔(かお)を見るだけでも…」
「今さら、そんなこと…。俺さぁ、家のことは妻(つま)に任(まか)せっきりで、仕事(しごと)ばかりしてきたから…。娘(むすめ)たちも、俺のことなんか父親(ちちおや)だと思ってなかったかもなぁ」
「なに言ってんだよ。そんなことないって…。もう、結婚(けっこん)されてるのか?」
「ああ、そうだなぁ。もう、孫(まご)がいてもおかしくないか…。どうしてるかなぁ?」
「帰ってやれよ。お前も、孫の顔を見たら、こっちへ帰りたくなくなるぞ」
「そんなこと…。まぁ、そうだな。今年は、帰ってみるか…。君(きみ)は、どうするんだい?」
「僕(ぼく)は、帰らないかもなぁ。今年は、かみさんもこっちに来たし…。こっちで、二人だけでのんびりしようと思って。僕がこっちに来るの早(はや)かったから、もう長いことおしゃべりもできなかったんだ。もう、話したいことがいっぱいあってねぇ。今も、顔を合わせるたびに止(と)まらなくなってる。かみさんは、そのたんびにボヤいてるよ。あなたしゃべり過(す)ぎよ。昔(むかし)は物静(ものしず)かな人だったのに、ってね」
「いい奥(おく)さんじゃないか。羨(うらや)ましいねぇ。ウチのヤツは…、まだ当分(とうぶん)はこっちには来ないだろ。あっちで楽(たの)しくやってるんじゃないのかなぁ」
<つぶやき>これはあの世(よ)の人たちなのでしょうか。もしかして、こんな会話(かいわ)してるかも。
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コメント
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