みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1376「ぼろ儲け」

2023-04-09 17:34:43 | ブログ短編

 彼はご利益(りやく)のあるという有名(ゆうめい)な神社(じんじゃ)でお祓(はら)いを受けることにした。
 どうしてこんなことになったのか…。それは、最近(さいきん)の彼はまったくツキに見放(みはな)されていたからだ。信(しん)じていた手下(てした)に裏切(うらぎ)られ、金を持ち逃(に)げされたのが事(こと)の始まりだった。この間も、せっかくの大口(おおぐち)の取引(とりひき)が警察(けいさつ)にばれて…。彼は危(あや)うく捕(つか)まるところだった。
 これは何かの祟(たた)りなのか? 彼はそんなことを思うようになった。今まで彼はいろんな悪事(あくじ)に手を染(そ)めていた。人から恨(うら)まれることも一つや二つ……。いや、限(かぎ)りなくいっぱいあった。命(いのち)を狙(ねら)われてもおかしくないくらいだ。とうとう彼の悪運(あくうん)もこれまでなのか…。
 神主(かんぬし)を待つあいだ、彼は今までの行(おこな)いを思い起(お)こしていた。彼は後悔(こうかい)しているわけではない。彼はそんな男ではなかった。悪運がつきても諦(あきら)めの悪(わる)いヤツなのだ。
 彼はお祓いを受けている間も、次の悪事のことを考えていた。どうやって金を手に入れるか…。バクチか…女か…、それとも強盗(ごうとう)でもしてやろうか…。いや、それはダメだ。強盗は俺(おれ)の流儀(りゅうぎ)に反(はん)する。彼は変なこだわりを持っているようだ。
 彼はふと、神社には御札(おふだ)がつきものだということに気がついた。あんな紙切(かみき)れがお金になるなんて、こんなぼろ儲(もう)けはないかもしれない。彼はとんでもないことを思いついてしまったようだ。
 お祓いが終わると、彼は神主に弟子入(でしい)りを頼(たの)み込んだ。どうしても、どこかの神社を手に入れなくてはならない。そして、がっぽり儲けてやるのだ。
<つぶやき>そんな簡単(かんたん)なことじゃないから。地道(じみち)に働(はたら)いた方が近道(ちかみち)かもしれませんよ。
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