みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1392「花の意味」

2023-06-10 17:35:48 | ブログ短編

 僕(ぼく)は都会(とかい)の喧噪(けんそう)を離(はな)れ、異国(いこく)で休暇(きゅうか)を楽(たの)しんでいた。とある小さな村(むら)に来て、僕はその景色(けしき)の素晴(すば)らしさに圧倒(あっとう)された。そして、ここで暮(く)らしてみたいと思った。仕事(しごと)はリモートで何とかなるはずだ。
 ――僕は我(われ)に返(かえ)る。実際(じっさい)にそんな決断(けつだん)は僕には…。
 僕が村外(はず)れの草原(そうげん)を散策(さんさく)しているとき、鮮(あざ)やかな赤い花(はな)を見つけた。今まで見たこともない可憐(かれん)な花で、僕は目を奪(うば)われてしまった。僕は思わず、一輪摘(いちりんつ)みとった。でも、村に戻(もど)るまでに、僕は摘みとったことを後悔(こうかい)した。そこで、ちょうど道端(みちばた)に立っていた可愛(かわい)い村の女の子にその花をあげることにした。その女の子は受(う)け取ると、驚(おどろ)きとともに悲(かな)しそうな顔をした。周(まわ)りにいた子供(こども)たちが駆(か)け出して行く。
 しばらくすると、村人(むらびと)たちが集(あつ)まってきた。そして、僕に向かって早口(はやくち)に何かを喚(わめ)き立てている。僕は言葉(ことば)が分からないので、どう対処(たいしょ)したらいいのかお手上(てあ)げだった。そこへ、一緒(いっしょ)に来ていたガイドの人が戻ってきて、間(あいだ)に入ってくれた。ガイドは僕に言った。
「すいません。私、注意(ちゅうい)すればよかった。でも、まさかここに生(は)えているとは思わなかった。あなたの渡(わた)した花。あれは、ちぎりの花。あれを男性が女性に渡したら、それは結婚(けっこん)したいということ。あなたはあの娘(こ)と結(むす)ばれなければいけない」
「ちょっと待(ま)ってよ。そんなこと言われても…。僕は、国(くに)に帰らないと――」
「これは神様(かみさま)が決(き)めたこと。守(まも)らなければ、この村に災(わざわ)いが起(お)きると、みんな信(しん)じてる」
<つぶやき>まさかこんなことになるなんて…。でも、これは神様がくれたチャンスかも?
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