みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1397「妻の日記」

2023-06-30 17:31:31 | ブログ短編

 僕(ぼく)の目の前に妻(つま)の日記(にっき)がある。一周忌(いっしゅうき)も終わり、妻の遺品整理(いひんせいり)を始めたとき見つけてしまったのだ。何で死(し)ぬ前に処分(しょぶん)しといてくれなかったのか…。まぁ、そんなことを言われても、妻だってまだ死ぬつもりなんかなかっただろう。――事故(じこ)だったのだ。
 僕は困(こま)った。この日記、どうすればいいんだよ。この中には、僕の知らない妻がいるのかもしれない。そう考えると、僕は開(ひら)く気になれなかった。そもそも、僕は妻のことをどれだけ知っていたんだろう? 僕と知り合う前のことはまったく話してくれなかったし、付き合っていたときもときどき行方不明(ゆくえふめい)になっていた。まったく連絡(れんらく)がとれないのだ。
 どうしてたのって後で訊(き)くと、スマホの電源(でんげん)が切れたとか、ちょっと散歩(さんぽ)してたとか、いろいろ理由(りゆう)をつけてはぐらかす。結婚(けっこん)してからも…そんなことが続(つづ)いていた。僕の知らないところで何をしてたんだろう? そんなことを考えてると、だんだん腹(はら)が立ってきた。
 僕は妻の日記を開くことにした。この中には、きっと妻の秘密(ひみつ)が詰(つ)まっているはずだ。僕にはそれを知る権利(けんり)がある。僕は日記の表紙(ひょうし)に指(ゆび)を当(あ)てる。そして――。
 ダメだ! やっぱり僕にはできない。もし、僕に知られたくないことが書かれていたら…。僕の他(ほか)に好(す)きな男がいたのかもしれない。そもそも、何で僕なんかと結婚したんだ!
 僕は妻の笑(わら)っている写真(しゃしん)を見た。ほんとに楽(たの)しそうな顔をしている。僕がこんなに苦(くる)しんでいるのに…。僕は…もうしばらく、妻の日記はこのままにしておくことにした。
<つぶやき>それは考えすぎかもしれませんよ。落ち着いたら、読んであげていいんじゃ。
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コメント
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