それから何度(なんど)か二人は会っていた。でも、すべて優美(ゆみ)から誘(さそ)ったもので、上村(かみむら)くんからのアクションはなかった。果(は)たしてこれがデートと言えるのかどうか――。
いつもの喫茶店(きっさてん)では、香里(かおり)が店長(てんちょう)に噛(か)みついていた。そこへ優美がやって来て、
「ねぇ、どうしたのよ。何があったの?」
香里は優美に駆(か)け寄ると、「ねぇ、聞いた? 上村くん、バイト辞(や)めたんだって」
優美も初めて聞いたようで、「えっ…、聞いてないわ。そんな話し…」
香里はまた店長に詰(つ)め寄って、「ねぇ、どうしてよ。何で止(と)めてくれなかったの」
店長は困(こま)り果てて、「仕方(しかた)ないじゃないか。就職(しゅうしょく)が決(き)まったって言うから…。彼も、いつまでもバイトってわけにはいかんだろう」
優美は上村くんに電話(でんわ)をしてみた。でも、上村くんは電話に出なかった。香里は店長に、
「じゃあ、上村くんの住所(じゅうしょ)、教(おし)えてよ。今から行ってくるから」
「それなんだけど、住所は分からないんだ。知り合いの紹介(しょうかい)だったから…」
「何それ。信(しん)じられない。普通(ふつう)、履歴書(りれきしょ)とかもらうでしょ? もう、しっかりしてよ」
優美は気落(きお)ちした声で、「もう、いいよ。やっぱり、私じゃダメだったのよ」
その時、優美のスマホが鳴(な)った。上村くんからメッセージが届(とど)いていた。
<つぶやき>優美の恋は成就(じょうじゅ)するのでしょうか? 上村くんは何を伝(つた)えてきたんでしょ。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます