「恵里香(えりか)にもやっと来たわけね」愛子(あいこ)は半(なか)ばからかうように言った。
「そんなんじゃないわ。ただ、あの人とちょっと手が触(ふ)れたとき…」
恵里香はその時のことを思っただけで、胸(むね)が高鳴(たかな)り頬(ほお)を赤らめた。
「ねえ、どんなシチュエーションで手を握(にぎ)ったのよ」
愛子は恵里香の手をとって言った。でも、恵里香はそんなことまったく耳に入らず、
「ねえ、どうしたらいいと思う? 私、これは運命(うんめい)だと思うの。だって、佐藤(さとう)君の手に触れただけなのに、ビビって、まるで電気(でんき)が走ったみたいに…。私、頭(あたま)の中がまっ白になっちゃった」
恵里香は一般常識(いっぱんじょうしき)がずれているというか、天然(てんねん)なところがあった。愛子は、そこのところは心得(こころえ)ていて、バカなことをしないようにいつも注意(ちゅうい)をはらっていた。今度も、愛子はさとすように言った。「あのさ、それって、きっと静電気(せいでんき)だと思うよ」
「そんなことないわ。だって、ビビって…。ビビってしたんだから、ほんとに」
「恵里香、運命なんてそうそうあるもんじゃないわ。それに、佐藤には好きな娘(こ)いるわよ」
「だって、これは運命よ。ビビってきたんだもん」恵里香は口をとがらせた。
「いい。よく考えなさい」愛子は恵里香の肩(かた)をつかんで言った。「恵里香は、男に免疫(めんえき)がないんだから。好きになる人は、もっと慎重(しんちょう)に選(えら)ばないとダメだよ」
<つぶやき>いつも思うんです。運命の人を見分(みわ)ける方法(ほうほう)があったらいいのになぁって。
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