近所(きんじょ)の神社(じんじゃ)でお祭(まつ)りがあった。私はここに越して来て日も浅(あさ)いので、ふらりと立ち寄ってみた。小さなお祭りで、露店(ろてん)も4、5軒(けん)しかなかった。それほど面白(おもしろ)いこともなく、私は一回りして帰ることにした。鳥居(とりい)を出てしばらく行くと、小さな露店の老婆(ろうば)に呼(よ)び止められた。老婆は小さな植木鉢(うえきばち)を私に差し出して、
「あんたに、これをあげよう。これは幸運(こううん)の木で、幸せの実(み)がなるんだ」
戸惑(とまど)っている私に、老婆は植木鉢を押(お)しつけた。私は、言われるままに受け取ってしまった。どうも、私はこういうのは断れないというか…、損(そん)な性格(せいかく)なのだ。
もともとずぼらなところがあって、ウチへ持って帰っても、水をやることもなく玄関(げんかん)に放(ほう)ったままにしていた。何日かたった頃(ころ)、その鉢に芽(め)が出ているのを発見(はっけん)した。こうなってくると、いくらずぼらな私でも、水をやらなきゃと思ってしまう。
それから一週間。その芽は順調(じゅんちょう)に、と言うか、驚異的(きょういてき)なスピードで伸(の)びていった。半月たった頃には、30センチほどに成長(せいちょう)した。そして、枝(えだ)の先には小さなつぼみまでふくらみ始めた。私はどんな花が咲(さ)くのか、楽しみになってきた。
毎朝早起(はやお)きして世話(せわ)をして、仕事(しごと)が終わったら真っ直ぐにウチに帰る。今までの不規則(ふきそく)な生活(せいかつ)が嘘(うそ)のようだ。身体(からだ)もすこぶる快調(かいちょう)で、仕事も楽しくなってきた。それに、最近(さいきん)、彼女というか、好きな人が現れた。これって、幸運の木のおかげなのかな?
<つぶやき>ささいなことから幸せが生まれます。それを育てられるかは、あなた次第(しだい)。
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