みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0819「理解力」

2020-02-28 18:16:27 | ブログ短編

 それは突然(とつぜん)のことだった。何の前触(まえぶ)れもなく、たわいのない話しの中に、それは差(さ)し込まれてきた。彼女も、あやうく聞き逃(のが)しそうになって、彼の顔を思わず見つめてしまった。
 それは、確(たし)かに、付き合おう的(てき)なことだったと思ったのだか…。彼女の気のせい? いや、そんなはずはない。でも彼の話は、まるで違(ちが)う方向(ほうこう)へ行ってしまっているようだ。
 これはどういうことなのか? 彼女が付き合いたいって思っているから、そういう風(ふう)に聞こえてしまったのか…。たぶん、そうなんだろう。きっとそうだ。
 今日の彼は、何時(いつ)もよりおしゃべりだ。彼女に、こんなに話しかけたことは始めてかもしれない。それに早口(はやくち)なので、何を話しているのか彼女には分からなくなっている。もうすでに、彼女の思考(しこう)は停止状態(ていしじょうたい)になっているようだ。無理(むり)もない、彼の言った一言(ひとこと)が彼女の頭の中を駆(か)け回っているのだ。
 それに気づいたのか、彼は話をやめてひと呼吸(こきゅう)おくと、ゆっくりと話し出した。
「つまりね、僕が言いたいのは、距離(きょり)を縮(ちぢ)めたいと思ってしまうのは、僕の中に得体(えたい)のしれない感情(かんじょう)というか、まるで違(ちが)う自分(じぶん)が存在(そんざい)しているようなんだ。これを理解(りかい)するためには、君(きみ)と、付き合うしかないという結論(けつろん)にたどり着くわけで――」
 彼女は突然(とつぜん)、彼の唇(くちびる)を奪(うば)うと、彼の耳元(みみもと)にささやいた。「こういうことでしょ?」
<つぶやき>両思(りょうおも)いってことですよね。でも、彼はとっても面倒(めんど)くさいかもしれません。
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