水木涼(みずきりょう)は微笑(ほほえ)むと、月島(つきしま)しずくを手招(てまね)きした。すると、しずくの足がゆっくりと動き出す。しずくは、言いようのない恐怖(きょうふ)を感じた。ひきつった顔のしずくを見て涼は言った。
「私、今のあなたの顔、好きだわ。もっと脅(おび)えなさい。私を楽(たの)しませてよ」
木の上から太(ふと)いロープが垂(た)れ下がって来た。ロープの先は丸(まる)く結(むす)んである。
しずくは声を震(ふる)わせて言った。「どうして、どうしてこんなこと…」
「決(き)まってるじゃない。あなたは必要(ひつよう)の無(な)い人間(にんげん)よ。何の役(やく)にも立たないし――」
しずくの足は大木(たいぼく)に下がったロープへ向かっていた。一歩一歩、まるで十三階段(かいだん)を上がって行くように。しずくは必死に抵抗(ていこう)してみるが、自分の足を止めることはできなかった。
「ねえ、いいこと教(おし)えてあげましょうか?」
涼は楽しげに言った。「私、あなたのことずっと見張(みは)ってたのよ。どんな能力者(のうりょくしゃ)か試(ため)してみたけど、あなたってまだちゃんと覚醒(かくせい)してないのね。それなのにトラックの前に飛び出したりして…。でも、子供(こども)を助(たす)けられて良かったわね」
「何で知ってるの? 私、誰(だれ)にも話してないのに…」
「だって、私が子供を歩かせてあげたのよ。退屈(たいくつ)そうにしてたから…。それに、暴漢(ぼうかん)をけしかけたときも…。もうちょっとであなたを消(け)すことができたのに、残念(ざんねん)だったわ。あそこで邪魔(じゃま)が入るとは思わなかった。でも、今度は逃(に)がさないわよ」
<つぶやき>今までの事件(じけん)の真相(しんそう)が明らかに…。でも、何でこんなことするんでしょう。
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