東京(とうきょう)の大学(だいがく)に入学(にゅうがく)した青年(せいねん)が二年振(ぶ)りに帰省(きせい)した。実家(じっか)の前まで来たとき、隣(となり)の家から出て来た若(わか)い娘(むすめ)とぶつかった。その娘は青年の顔を睨(にら)みつけたが、急に顔をそむけた。
青年は娘の顔を覗(のぞ)き込み、「あれ、みっちゃん? みっちゃんじゃないか」
娘は背(せ)を向けた。青年は娘の変わりように驚(おどろ)いて、
「どうしたんだ? 髪(かみ)、染(そ)めちゃって…。まだ高校生だろ。何でそんな――」
娘はキッと青年を見て呟(つぶや)いた。「お前のせいだ。お前なんか…」
「なあ、何があった? ちゃんと学校行ってるのか。悪(わる)い仲間(なかま)と――」
「うるせえな。お前には関係(かんけい)ねえだろ。親(おや)でもないのに…」
「幼(おさな)なじみだろ。心配(しんぱい)するさ。小さいころからずっと見てきたんだ」
「もう、ほっといてよ。あたしは…、もう昔(むかし)のあたしじゃないの」
「なに言ってんだ。みっちゃんは、みっちゃんだろ。あの無邪気(むじゃき)で可愛(かわい)い――」
「じゃあ、何で答(こた)えてくれなかったの? あたし、告白(こくはく)したんだよ。それなのに…」
「えっ、告白? 誰(だれ)に?――俺(おれ)? ちょっと待ってくれ。えっ…、それっていつ?」
「大学に合格(ごうかく)したときだよ。あたし告白したよね。ちゃんと、勇気(ゆうき)だして、したんだから」
青年はしばらく考えてみたが、「いやいやいや…。ごめん、告白されたなんて…」
「何で! あたし、ちゃんと言ったじゃない。あたしも行きたいって!」
<つぶやき>この後、もう一度告白したようです。さて、乙女(おとめ)の恋(こい)は実(みの)ったのでしょうか?
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