みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0951「色彩世界」

2020-09-09 17:54:03 | ブログ短編

 学校(がっこう)からの帰り道。僕(ぼく)はいつも土手(どて)の道(みち)を歩くことにしている。通学路(つうがくろ)じゃないけど、こっちの方が近道(ちかみち)なのだ。普段(ふだん)はほとんど人と出会(であ)うことはないのに、今日は僕の前を同じ学校(がっこう)の女の子が歩いている。近づいてみると、それは同じクラスの――。
 その女の子はちょっと変わっていた。教室(きょうしつ)ではいつも静(しず)かに座(すわ)っていて、おしゃべりもあまりしない。誰(だれ)かと親(した)しくするわけでもなく、過(す)ごしているようだ。僕は声をかけた。
「お前(まえ)ん家(ち)って、こっちの方なのか?」
 その子はちょっとびっくりしたようだが、うなずいて言った。「今日の風(かぜ)は青(あお)いね」
 僕は思わず訊(き)き返した。「お前…、風が見えるのか?」
「何となくよ。何となく、感(かん)じちゃうんだ。今日のよしこ先生(せんせい)はピンクっぽかったわ」
「何でだよ。先生の服(ふく)はピンクじゃなかったぞ。じゃあ、ケンタは? 何色(なにいろ)だった?」
「分からないわよ。いつも見てるわけじゃないから…」
「じゃあ、僕は? 僕は何色に見える?」
「えっ、それは…」彼女はちょっと間(ま)をおいて、「ないしょ…よ」
「何でだよ。じゃあ、明日(あした)。ここで待(ま)ってるから。色の話、聞かせろよ」
 僕は駆(か)けだした。――次の日から、その子は学校を休(やす)んだ。数日後、先生から彼女が転校(てんこう)したことを聞かされた。僕は、もっと早く声をかければよかったと後悔(こうかい)した。
<つぶやき>彼女には、この世界(せかい)は色彩(しきさい)にあふれていたのかも…。何でないしょにしたの?
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0950「しずく105~陵辱」

2020-09-07 18:06:56 | ブログ連載~しずく

 看守(かんしゅ)は笑(え)みを浮(う)かべて川相初音(かわいはつね)に近づいて行く。初音はその場から動くことができなかった。看守は彼女のそばで膝(ひざ)をつく。初音の顔を見つめ、頬(ほお)に手をやった。
「ちょっと見ない間(あいだ)に奇麗(きれい)になったな。少しは大人(おとな)になったってことか」
 初音は声をあげることもできなかった。されるがままになっている。
「なんだ、震(ふる)えてるじゃないか? 俺(おれ)が、温(あたた)めてやろう…」
 看守は初音を抱(だ)きよせると、彼女の身体(からだ)をまさぐり始めた。初音は身体をこわばらせて、何とか抵抗(ていこう)しようとした。だが、看守には何の効力(こうりょく)もなかった。
「そんなに緊張(きんちょう)するなよ。初めてじゃないんだから…。ほぅ、柔(やわ)らかい身体だ。胸(むね)も少しはふくらんだようだな。これは、楽しめそうだ。あそこはどうかな…」
 看守の手が彼女の足に伸(の)び、内股(うちもも)をなで始めた。そして、スカートの中へ手が入って行く。初音は目を固(かた)く閉じ、唇(くちびる)を噛(か)みしめた。その時だ。どこからか声がした。
「何してるの? そんなことしたら、逮捕(たいほ)されちゃうよ」
 看守はビクッとして後ろを振(ふ)り返った。鉄格子(てつごうし)の外(そと)に人影(ひとかげ)が見えた。
「誰(だれ)だ! そこにいるのは…」看守はライトを人影に向けた。そしてホッとしたように、
「何だ、ガキじゃねぇか…。どうやって入って来た? ここはガキの来るところ……」
 突然(とつぜん)、看守が苦(くる)しみ出した。ライトを落とし自分(じぶん)の首(くび)へ手をやった。まるで、首を何かに締(し)めつけられているようだ。初音は目を開けると人影を見て呟(つぶや)いた。「どうして…」
<つぶやき>誰が助(たす)けに来たのでしょうか? もう、あの娘(こ)しかいないじゃないですか。
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0949「見つめる」

2020-09-05 17:58:56 | ブログ短編

 ずっと見られている男がいた。彼はどうにもその視線(しせん)が気になって、
「あの…、さっきからずっと僕(ぼく)のこと見てますよね。何か……?」
 話しかけられた彼女はそわそわしながら、「えっ、あたし? いえ、見てませんけど」
「いやいや、さっきからずっと見てましたよね。間違(まちが)いないと思うんだけど…」
「何を言ってるんですか? あたし、そんなことしてません。なぜ、あたしがそんなことしなきゃいけないんですか? まったく意味(いみ)が分かりません。ちゃんと説明(せつめい)して下さい」
「説明って…」彼はため息(いき)をついて、「分かりました。もう、いいです」
 彼は行こうとする。それを、彼女は呼(よ)び止めて言った。
「あの…、あなた、あたしのこと気になってるんでしょ? いいですよ。ここにいても…。あたしも…、あなたのこと…」
「じゃあ、やっぱり見てたんですね。もうやめてもらえませんか」
「なぜです。あなた、気になってるんでしょ? いいですわよ。何でも訊(き)いて下さい」
「だから…、僕は別に…。あなたには何の関心(かんしん)もありません。もう見ないで下さい」
「分かりました。じゃ、こうしましょう。明日も、今日と同じ時間にここでお話しましょ」
「えっ? なに言ってるんですか? 何でそんなことを…」
「だって、時間とか決(き)めた方がいいと思うんです。ねぇ、いいでしょ?」
<つぶやき>ものすごく強引(ごういん)で、めんどくさい女の子です。彼は付き合うことになるのか?
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0948「戻る?」

2020-09-03 18:05:05 | ブログ短編

 彼女は突然(とつぜん)、見知(みし)らぬ男から声をかけられた。男は戸惑(とまど)いながら、
「あの…、僕(ぼく)のこと覚(おぼ)えてるかなぁ? ほら、この間(あいだ)、ホテルのパーティーで…」
 彼女は思い出したようで、小さく声をあげた。男はホッとして、
「ほんと、あの時はごめんなさい。ちゃんと謝(あやま)りたかったんだけど…」
 パーティーで、彼は彼女にぶつかって、手にしたビールをドレスにかけてしまったのだ。
「あのことは、もう気にしないで下さい」彼女はその場を離(はな)れて行く。
「ちょっと待って下さい」男は彼女を追(お)いかけて、「あの、お話しがあるんですが…」
「あなた、どうしてあたしのことを…。ストーカーですか?」
「いいえ、違(ちが)いますよ。たまたま僕の知り合いに、君(きみ)のことを知ってる人がいて」
「それで、あたしのことを待ち伏(ぶ)せしてたんですか?」
「そ、それは…。実(じつ)は…、君と会ったとき、君のことが見えたって言うか…。初めて会ったのに、懐(なつ)かしい感じがして…。これは運命(うんめい)じゃないかって――」
 運命…、この言葉(ことば)で彼女は辛(つら)い出来事(できごと)を思い出してしまった。半年前に彼女は恋人(こいびと)を亡(な)くしているのだ。彼女は唇(くちびる)を噛(か)みしめて、あふれてくる悲(かな)しみを抑(おさ)えようとした。
 それを見て男が言った。「大丈夫(だいじょうぶ)、僕はいつでも君のそばにいるよ。これは運命だから」
 彼女はハッとして言った。「どうして知ってるんですか? あの人の最後(さいご)の言葉を――」
<つぶやき>これは生まれ変わり? いや、幽霊(ゆうれい)が憑依(ひょうい)したってことなんでしょうかね?
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0947「おせっかい」

2020-09-01 17:57:12 | ブログ短編

 あるカップル。お互(たが)い黙(だま)り込んでいて、彼女の方は怒(おこ)っている感じだ。それを離(はな)れたところから見つめている友人(ゆうじん)たち。ひそひそと話をしていた。
「なぁ、あの二人、喧嘩(けんか)でもしてるのかな? あいつ、なにやらかしたんだ?」
「さあなぁ…。でも、あいつらが喧嘩なんて、俺(おれ)、初めて見たよ」
 女友達がニヤリとして呟(つぶや)いた。「やった。これであたし、あの人と付き合えるかも…。あんな素敵(すてき)な人いないでしょ。あたし、ずっと前から狙(ねら)ってたんだ」
「なに言ってんだよ。まさか、お前…。あいつに手を出したのか?」
「おいおいおいおい、やめてやれよ。そんなことしたら…」
「まぁ、失礼(しつれい)ね。そんなことするわけないでしょ。彼女は、あたしの親友(しんゆう)よ」
「お前が言うと、冗談(じょうだん)に聞こえないんだよ。今まで、何人の男を――」
「あなたたち、あたしをそんな目で見てたの? もう信(しん)じられない」
 そうこうしていると、カップルの二人は立ち上がり、どこかへ行くようだ。
「おい、どうする? やぱっりここは…」
「行くしかないだろ。何とかしてやらないと。俺たちで仲直(なかなお)りさせようぜ」
「えっ、そんなぁ。じゃあ、あたしはどうなるのよ。せっかくのチャンスなのに…」
 そうは言うものの、彼女も心配(しんぱい)なようで、二人の後を追(お)いかけて行った。
<つぶやき>どうにもおせっかいをやきたくなる人っていますよね。どうしてなんでしょ。
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