みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0956「焦がれる1」

2020-09-19 17:55:10 | ブログ短編

「ねぇ、見ててよ。あたし、今日こそ、ちゃんと告白(こくはく)するから…」
 結衣(ゆい)は親友(しんゆう)の吉乃(よしの)に言うと、廊下(ろうか)に一人でいる小木(おぎ)君のところへ向かった。吉乃は結衣に向かって小さな声で、「がんばれっ」と声をかけた。
 ――結衣が小木君と出会ったのは入学式(にゅうがくしき)のときだった。それは、まさに雷(かみなり)に打たれたような衝撃(しょうげき)だった。結衣にとっては初恋(はつこい)…、いや、そんな言葉(ことば)で片(かた)づけることなんかできない。生涯(しょうがい)をかけても添(そ)いとげたいと思えるようなものだった。
 小木君とは同じクラスになれなかったので、結衣は一年の間は遠(とお)くから見つめることしかできなかった。彼に話しかけるなんて、とても彼女にはできるはずもなかった。ただ、吉乃には彼への思いを打ち明けて、彼と付き合ったらどうするか夢(ゆめ)を膨(ふく)らませていた。
 二年になったとき、進展(しんてん)がみえた。小木君と同じクラスになったのだ。結衣は嬉(うれ)しくて、吉乃と一緒(いっしょ)になって涙(なみだ)を流(なが)した。そして、彼女の席(せき)は小木君の隣(となり)…。結衣は心臓(しんぞう)が止まるかと思うほど、震(ふる)えてしまった。彼女は必然的(ひつぜんてき)に彼とおしゃべりをすることに…。
 結衣が告白を決意(けつい)したのは初夏(しょか)のころだった。何度も告白をしようとして途中(とちゅう)で挫折(ざせつ)し、そのたびに吉乃が励(はげ)まし続けて今日という日になったのだ。
 ――吉乃が二人の様子(ようす)を見つめていると。結衣がうつむき加減(かげん)にしゃべり出し…。そして、小木君はそれを聞いて微笑(ほほえ)んだ。結衣も、嬉しそうに笑顔(えがお)になっていた。吉乃はホッとしたような安堵(あんど)の表情(ひょうじょう)を浮(う)かべたが、急に悲(かな)しそうな顔つきになりその場を離(はな)れた。
<つぶやき>思いが通じたのですね。でも、恋には障害(しょうがい)がつきもの。思いが強いほど…。
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0955「しずく106~解放」

2020-09-17 17:57:03 | ブログ連載~しずく

 看守(かんしゅ)はぐったりと倒(たお)れ込んだ。川相初音(かわいはつね)は看守から離(はな)れて立ち上がると、
「しずく…、どうしてここに? どうやって入って来たのよ!」
 月島(つきしま)しずくは檻(おり)の中へ入ると、看守の顔を覗(のぞ)き込み呟(つぶや)いた。
「ちょっとやり過(す)ぎちゃったかなぁ」
「殺(ころ)したの? あなたが、そこまでするなんて…」
「大丈夫(だいじょうぶ)よ。気絶(きぜつ)してるだけだから」しずくは初音に近寄(ちかよ)って、「さぁ、初音――」
「あたしに、復讐(ふくしゅう)するつもりなんでしょ。あなたなんかに負(ま)けないから…」
「復讐なんかするつもりないわ。初音、ここにはいたくないんでしょ」
「そんなこと、信じないわよ。どうして能力(ちから)が使えるの? ここでは使えないはずなのに」
「あら、そうなの? それは知らなかったわ。ねぇ、どうする? 私と行くでしょ」
 初音はしばらく考えていたが、ゆっくりとうなずいた。そして、しずくに手を伸(の)ばした。しずくは微笑(ほほえ)むと、その手をとって檻の外へ引っぱり出た。
 二人のやりとりを聞いていた他の人たちが、檻から手を伸ばして口々に助(たす)けを懇願(こんがん)した。それを耳(みみ)にした初音は、足を止めてしずくに頼(たの)み込んだ。
「ねぇ、この人たちも助けてあげて。この人たち、何も悪(わる)いことはしてないの」
 しずくは嬉(うれ)しそうに、「もちろんよ。最初(さいしょ)からそのつもりでいたわ」
<つぶやき>まさか、初音を助けに来るなんて…。さぁ、これからどうなっていくのか?
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0954「とりあえず」

2020-09-15 17:59:21 | ブログ短編

「えっ、告白(こくはく)された? 誰(だれ)よ、誰がそんなこと…。どこの物好(ものず)きよ!」
 貴子(たかこ)は好美(よしみ)の肩(かた)をつかんで迫(せま)った。好美はたしなめるように、
「ちょっと、そんな言い方しないでよ。あたしだって乙女(おとめ)なんだから」
「私たち約束(やくそく)したよね。お互(たが)い助(たす)け合おうって。で、誰なの? 教えてよ」
「隣(となり)のクラスの金森(かなもり)くんよ。昨日の帰りに待(ま)ち伏(ぶ)せされてね。突然(とつぜん)だったから――」
「ちょっと待って。金森って、金森大樹(だいき)? あいつが告白してきたの?」
「そ、そうよ。あたし、よく知らない子だから、返事(へんじ)はしてないんだけど…」
 貴子はため息(いき)をついて、「ダメよ、あいつは…。だって、他の女子(じょし)にも告白してるのよ」
「なにそれ? えっ、どういうこと?」
「あいつと同じクラスのあゆみって知ってるよね。先週、告白されたって言ってたわ。あゆみは速攻(そっこう)で断(ことわ)ったって言ってたけど…」
「そんな…。あゆみって全然(ぜんぜん)、あたしとタイプが違(ちが)うじゃない。これ、どういうこと?」
「誰でもいいってことじゃない。とりあえず、恋人(こいびと)が欲(ほ)しいってことよ」
「そんなぁ。あたしって、その程度(ていど)の女子(おんな)ってこと? とりあえずなんて…、ひどい!」
「好美に告白したってことは、他にもいるかもね。とりあえず告白した相手(あいて)が…。その子、探しましょ。あいつを問い詰(つ)めるのは、それからよ。いいわね」
<つぶやき>誰ですか? むやみに告白をしてる人は…。あとでひどい目にあうかもね。
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0953「割り込む」

2020-09-13 17:57:55 | ブログ短編

 彼と待(ま)ち合わせをしている彼女。その彼女に話しかけてくる男がいた。彼女にとっては初めて会う人。だが、男は彼女のことをよく知っているようだ。男は言った。
「いま付き合ってる人と別(わか)れて下さい。そうじゃないと、良くないことがおきるんです」
 急にそんなことを言われても、とうてい彼女には受け入れられなかった。男は続けた。
「実(じつ)は、僕(ぼく)は未来(みらい)から来たんです。これを見て下さい」
 男はポケットからペンダントを出して彼女に見せた。彼女はハッとして、
「それは、私が持ってるのとよく似(に)てるわ。これが…、何か…」
「これは、僕の母親の形見(かたみ)なんです。母は幼(おさな)い頃(ころ)、実の父親に虐待(ぎゃくたい)されて――。母は…、あなたが産(う)んだ娘(むすめ)です。父親というのは、いま、あなたが付き合ってる男なんです」
「そ、そんな…。信(しん)じられないわ。彼がそんなことするなんて…」
「これは、事実(じじつ)なんです。僕は母から何度も聞かされました。母は、父親から逃(に)げ出すとき、あなたからこれを受け取ったと言ってました」
 彼女は、急に不安(ふあん)な気持ちになってしまった。彼女は、彼を待つことをやめて帰って行った。男は彼女を黙(だま)って見送(みおく)った。そこへ、別の女が近寄(ちかよ)って来た。女は男に言った。
「あんな話、信用(しんよう)するなんて…。ほんとバカよね。これで、あの人はあたしのものよ」
「まったく、強引(ごういん)だね。でも、あんただったら、どんな男もいちころかもなぁ」
<つぶやき>これは、用意周到(よういしゅうとう)な計画(けいかく)のようです。そうまでして手に入れたい男って…。
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0952「出生の秘密」

2020-09-11 18:02:16 | ブログ短編

 一人暮(ぐ)らしの母から急(きゅう)に呼(よ)び出された。久(ひさ)しぶりに実家(じっか)へ行ってみると、母は病気(びょうき)だったみたいで寝込(ねこ)んでいた。母は布団(ふとん)から起き上がると、
「心配(しんぱい)ないよ。ただの風邪(かぜ)みたいだ。二、三日寝(ね)てれば大丈夫(だいじょうぶ)さ」
「病院(びょういん)には行ったのかよ? 何なら、これから連(つ)れてってやるから」
「行ったさ。あそこのヤブ医者(いしゃ)にね。それよりも、お前に話しときたいことがあってね」
「何だよ。――飯(めし)とか、どうしてるんだ? 何か作ってやるよ」
「まったくせわしないねぇ。今はね、あっためるだけで食べられるのがあるんだよ。いいから、ここに座(すわ)りなよ。大事(だいじ)な話があるんだから」
 母は神妙(しんみょう)な顔をして、「あたしも、もう歳(とし)だから…。いつお迎(むか)えが来てもおかしくない」
「なに言ってんだよ。まだ、六十代だろ。母さんなら八十まで元気(げんき)でいられるさ」
「父(とお)さんが亡(な)くなって三年。もう許(ゆる)してくれるだろ。ねぇ、父さん」
 母は小さな親父(おやじ)の写真(しゃしん)を見つめて言った。そして、僕(ぼく)の方へ向き直(なお)ると、
「これから話すことは、棺桶(かんおけ)まで持っていくつもりだったんだけど…。やっぱり話しといた方がいいと思ってね。――お前の、出生(しゅっしょう)に関(かか)わることなんだ。父さんとは見合(みあ)い結婚(けっこん)でね。ちょうどその頃(ころ)、母さんは付き合ってた人がいたんだよ。その人と結婚するつもりだった。でもね、両親(りょうしん)に反対(はんたい)されて…。その人は、空(そら)へ帰っちまったんだ。実(じつ)はね…。父さんと結婚してから、あんたがお腹(なか)にいることが分かって…。つまり、あんたは――」
<つぶやき>何でしょう、このカミングアウトは…。空ってどこよ。まさか、宇宙人(うちゅうじん)なの?
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