みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1376「ぼろ儲け」

2023-04-09 17:34:43 | ブログ短編

 彼はご利益(りやく)のあるという有名(ゆうめい)な神社(じんじゃ)でお祓(はら)いを受けることにした。
 どうしてこんなことになったのか…。それは、最近(さいきん)の彼はまったくツキに見放(みはな)されていたからだ。信(しん)じていた手下(てした)に裏切(うらぎ)られ、金を持ち逃(に)げされたのが事(こと)の始まりだった。この間も、せっかくの大口(おおぐち)の取引(とりひき)が警察(けいさつ)にばれて…。彼は危(あや)うく捕(つか)まるところだった。
 これは何かの祟(たた)りなのか? 彼はそんなことを思うようになった。今まで彼はいろんな悪事(あくじ)に手を染(そ)めていた。人から恨(うら)まれることも一つや二つ……。いや、限(かぎ)りなくいっぱいあった。命(いのち)を狙(ねら)われてもおかしくないくらいだ。とうとう彼の悪運(あくうん)もこれまでなのか…。
 神主(かんぬし)を待つあいだ、彼は今までの行(おこな)いを思い起(お)こしていた。彼は後悔(こうかい)しているわけではない。彼はそんな男ではなかった。悪運がつきても諦(あきら)めの悪(わる)いヤツなのだ。
 彼はお祓いを受けている間も、次の悪事のことを考えていた。どうやって金を手に入れるか…。バクチか…女か…、それとも強盗(ごうとう)でもしてやろうか…。いや、それはダメだ。強盗は俺(おれ)の流儀(りゅうぎ)に反(はん)する。彼は変なこだわりを持っているようだ。
 彼はふと、神社には御札(おふだ)がつきものだということに気がついた。あんな紙切(かみき)れがお金になるなんて、こんなぼろ儲(もう)けはないかもしれない。彼はとんでもないことを思いついてしまったようだ。
 お祓いが終わると、彼は神主に弟子入(でしい)りを頼(たの)み込んだ。どうしても、どこかの神社を手に入れなくてはならない。そして、がっぽり儲けてやるのだ。
<つぶやき>そんな簡単(かんたん)なことじゃないから。地道(じみち)に働(はたら)いた方が近道(ちかみち)かもしれませんよ。
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1375「しずく190~チーム」

2023-04-06 17:36:52 | ブログ連載~しずく

 鉄(てつ)の扉(とびら)の中は広い空間(くうかん)になっていた。削(けず)られた岩盤(がんばん)がむき出しになっていて、何台もトラックが停(と)まっている。いろんな物資(ぶっし)を運(はこ)び込んでいるようだ。
 川相姉妹(かわいしまい)より先(さき)に入った月島(つきしま)しずくは、ここを通り抜(ぬ)けると別の扉の中へ消(き)えて行った。扉の先は長い通路(つうろ)になっていて、両脇(りょうわき)にはずらりと扉が並(なら)んでいる。しずくは迷(まよ)うことなく真っ直(す)ぐに進(すす)んだ。途中(とちゅう)で何人かの兵士(へいし)や白衣(はくい)を着た研究員(けんきゅういん)とすれ違(ちが)ったが、誰(だれ)もしずくには気づかない。しばらく行くと、下へ降(お)りて行く長い螺旋階段(らせんかいだん)があった。下の方から機械(きかい)の唸(うな)るような音が微(かす)かに聞こえてくる。しずくはその階段を降りて行った。
 ――あの場所(ばしょ)に戻(もど)ると、千鶴(ちづる)が迎(むか)えた。柊(ひいらぎ)あずみは初音(はつね)たちが戻っていないのを知ると、「まったく…。どうしてあの娘(こ)たちは勝手(かって)なことするのよ」
 千鶴がなだめるように、「私の気持(きも)ち、分かったでしょ。あなたと同じことしてるだけよ」
「わ、私はそんなこと……。もう、いいわよ。きっと烏山(からすやま)に向(む)かったんだわ」
 神崎(かんざき)つくねが言った。「じゃあ、あたし、テレパシーで――」
 あずみはそれを止(と)めて、「そんなことをすると、敵(てき)に気づかれるかも知れないわ。私たちも装備(そうび)を調(ととの)えて烏山に行くわよ」
 貴志(たかし)が言った。「じゃあ、僕(ぼく)も手伝(てつだ)わせてよ。そのために来たんだから…」
 千鶴が口を挟(はさ)んだ。「用意(ようい)はできてるわよ。でも、その前に腹(はら)ごしらえをしないとね」
<つぶやき>いよいよ戦(たたか)いが始まるのか。いったいどんな敵が待っているんでしょうか?
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1374「みおの事件簿/きのこ鍋」

2023-04-03 17:32:24 | ブログ短編

 山の中にある別荘(べっそう)。ここで事件(じけん)があったのか警官(けいかん)が入口(いりぐち)に立っていた。そこへ女がやって来た。髪(かみ)をポニーテールにして黒い大きな鞄(かばん)を肩(かた)から下げている。彼女は警官に一礼(いちれい)すると、張(は)られている黄色いテープをくぐって別荘に入って行った。
 別荘の中には厳(いか)めしい顔つきの鬼瓦刑事(おにがわらけいじ)が待(ま)っていた。刑事は彼女と目が合うと言った。
「よお、樋口(ひぐち)…。今日は、目黒(めぐろ)と一緒(いっしょ)じゃないのか?」
 女はそれに答(こた)えて、「所長(しょちょう)は別件(べっけん)の調査(ちょうさ)に――」
「ああ。また、迷(まよ)い猫(ねこ)でも探(さが)してるのか?」
「いえ、何とかヤモリを探してます。あたしは…爬虫類(はちゅうるい)はちょっと…」
「まあいい。一昨日(おととい)、ここで男が死(し)んでいた。どうやら、毒(どく)キノコを食べちまったようだ」
「なら、事件じゃないですよね。……何か気になることでも?」
「大ありだよ。キッチンは綺麗(きれい)なもんだ。生(なま)ゴミひとつなかった。それに、死んだのはベンチャー企業(きぎょう)の社長(しゃちょう)ってことになってるが、どうもペーパー会社(がいしゃ)なんだよ。この別荘も借(か)り物のだった。家主(やぬし)の話では、一週間の約束(やくそく)で貸(か)したそうだ」
 女は刑事の話を聞きながら別荘の中を歩き回っていた。そして壁(かべ)の仕掛(しかけ)けを見つけると、壁の奥(おく)から隠(かく)し部屋(べや)が出てきた。そこからパソコンと札束(さつたば)の山が…。女は言った。
「その家主、怪(あや)しいです。話しを聞いた方がいいと思います」
「だろ。俺(おれ)もそうだと思ってたんだ」鬼瓦は満面(まんめん)の笑(え)みを浮(う)かべて飛(と)び出して行った。
<つぶやき>新シリーズになるのか? 続(つづ)きはいつになるのか、ちょっと分かんないなぁ。
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