疝気の虫
医者が夢を見た。出てきたのは一匹の虫。
夢なので人間の言葉でしゃべり、疝気の虫だと名乗る。
かねてから疝気の患者の治療に苦心していた医者が、
どうしてお前たちは人間をそんなに苦しめるのだと尋ねると、
虫は自分たちは人間を苦しめようとは思っていない。
ただ、そばが大の好物なので体の中にそばが入ってきたらそれを食べ、
やたら元気いっぱいになって腹の中で飛んだりはねたり筋を引っ張ったりする。
それで、家主の人間が苦しむのだと答えた。
逆に疝気の虫の苦手は唐辛子で、これが体の中に入ってきたときは大急ぎで別荘へ逃げる。
虫の言う別荘とは男の大事な袋の部分のことだった。
これで医者は合点がいく。
「ははあ、それで疝気にかかったら、あそこがあんなにふくらむわけか」
そこで目が覚めた。
ほどなく往診の依頼。出かけてみるとこれが疝気の患者。
医者は早速、夢の話を試そうと思いついた。
患者の妻に盛りそばの注文を頼み、唐辛子のたっぷり入った水をドンブリに一杯作らせる。
そばがとどいたら、患者の口に箸を近づけながら妻が食べ、
そばの匂いにつられて別荘からはい出してきた疝気の虫を、口までおびき出して外へつまみだし、
唐辛子水の中へ放りこんでしまおうという計画だ。
注文のそばがとどき、患者の妻は医者に言われたとおり主人の口の脇でそばを食べはじめた。
主人のほうは必死になってそばの匂いを吸い込む。
やがて、計画どおり別荘にいる疝気の虫たちが匂いにつられてはいだしてきた。
しかし、胃まであがっても、匂いばかりでかんじんのそばがこない。
不思議に思った虫たちが喉から口へあがってくると、
そばは目の前の妻の口へどんどんと入っていくのが見える。
「あっちだ、みんな向こうへいくぞ」
医者がつまみ出す間もなく、虫たちは主人の口から妻の口へ飛び移って腹の中へ。
妻の腹の中でそばを食って元気いっぱい暴れだした。
こうなると主人は虫がいなくなって楽になったが、今度は妻が腹をおさえて苦しみだした。
びっくりした医者が、あわててドンブリの唐辛子水を飲むよう妻にすすめた。
上機嫌になっていた疝気の虫たちの上へ唐辛子水がどっとなだれ落ちる。
驚いた虫がいつものように別荘へいこうと大あわて。
「うわわ、大変だ。唐辛子が入ってきた。別荘だ、別荘へ逃げろ。
別荘だ、別荘、別荘。あら、別荘がない」
立川志の輔 古典落語100席引用
落語は一人芝居でしか語れないのか?(; ・`д・´)
どうなのか?のかっ?アタヽ(д`ヽ彡ノ´д)ノフタ
どうなのか?のかっ?と思ったら焼酎そら・あかね。