楽しい酒 良い酒 おいしい酒

酒を飲むなら、いい酒を飲みたいものです。

おいしい酒を紹介できたら良いな!

お酒のお供Y・・・174

2015-06-20 14:59:37 | 日記


風呂敷



兄貴分として世話好きで通っている男のところへ、近所の女房が駆けこんできた。

「大変なことになってしまって」

 寄り合いで亭主が遅くなるというので、湯へいってのんびり茶を飲んでいると、

近くの新さんがやってきた。お茶でもと家へあげ、話をしていたら、遅くなるはずの

亭主が酔っ払って帰ってきてしまった。

「うちの亭主はものすごい焼き餅だから」

 とにかく新さんをあわてて押入れに隠したのだという。

 すぐに寝ると思ったが、今日にかぎって酔っているくせに、

亭主はなかなか寝ない。寝ないばかりか新さんを隠した押入れの前に、

どっかと座ってしまった。そこで、なんとかうまくごまかしてもらえないか

というのが女房の頼みだ。

「しょうがねえな」

 話を聞いた兄貴分は、ひとしきりその女房にちょっとピントのずれた

説教をしたあと、頼みを聞き入れ、女房を先に帰らせて自分は大きな

風呂敷を持って出かけた。

 家をのぞくと、亭主がプンプンしながらあぐらをかいている。

「どうしたい」

 亭主は、せっかく早く帰ってきたのに、女房のやつがうれしそうな顔もせず、

やたら寝かせようとばかりする。どういう了見だと文句たらたら。ひとくさり

不平を言ってから、ようやく兄貴分の用件を尋ねた。

「今時分、何か用かい」

 そこで兄貴分は、近所のごたごたを治めてきたついでにちょっと寄ったんだと

話しだした。女房が間男を引きいれているところへ、その家の亭主が帰ってきた、

それで俺が頼まれてさ。自分のことだとは知らず、亭主は思わず身を乗りだして

聞きいる。

「兄貴はどうやってかたをつけたんで」

 兄貴分は用意した風呂敷を取りだし、亭主の頭からかぶせた。

「この風呂敷を持ってよ。その野郎にこういうふうに」

 前が見えないように風呂敷を押さえ、

「見えねえだろう。で、押入れをあけたんだ」

 亭主は風呂敷の中でうんうんとうなずいている。女房がそっと押入れをあけ、

新さんを外へ出す。

「忘れもんすんなよ。ゲタも間違えちゃいけないよってね」

 新さんが表へ出たのを確かめてから、風呂敷をとり、

「で、パッと風呂敷をね」

 亭主はすっかり感心し、「そうかあ。そりゃうまいくふうだ」



                   立川志の輔   古典落語100席引用

昔の人でも浮気という風習はあったのか?なぁ。

おとめごころとなんとやら、女の心は猫の目、測り難きは人心、

分からぬは夏の日和と人心のごく、何時代からある語句なのやら。



飲めば無くなる焼酎、そら・あかね

お酒のお供Y・・・173

2015-06-17 14:23:53 | 日記

権助提灯



大店の旦那が別宅へ妾を囲った。普通なら本妻が嫌味の一つも

言いはじめ、夫婦仲が悪くなるものだが、焼き餅が大嫌いという

女房だから、いっこうに気にかけない。

 また妾のほうも話しのわかった女で、事あるごとに本妻を立て、

わがままを言わない。じつに円満に暮らしている。

 暮れもおしつまったある晩のこと。遅くまで帳簿をつけていた旦那が、

仕事を終えて寝ようとすると、女房が、今夜は風がとても強くて火事が

あるかもしれない。もし火事になっても、この家には若い者がたくさんいるから

心配ない。しかし、別宅は妾と女中の女二人きり、不安に思っているだろうから

今からいって泊まってやれと言う。さすがの旦那もこの女房の太っ腹にはすっかり感服し、

「わかった。お前がそれほど言うのなら」

と、出かけようとするが、夜更けなので誰かに提灯を持たせて供にしたい。

あいにく田舎者で気のきかない権助しか起きていなかったので、仕方なく供を命じた。

 提灯の用意をと言うと、権助は高張り提灯かなどと答える。妾の家へいくのに

フォーマルな高張り提灯を出す馬鹿はいない。

 家を出たら出たで、旦那に注意されるまで前を歩こうとしない。叱るとブツブツと

文句を言う。

 ほどなく妾の家に着いた。ところが妾はありがたいが泊まってもらえないと言う。

好意に甘えて旦那を泊めたら、ものを知らない女だと言われ、奥さんに合わせる顔が

ないというのが理由。

 仕方なく家に戻ろうと、また権助に提灯をつけさせる。権助が、女に嫌われただの、

宿なしになりそうだの言うから、旦那はすっかりくさってしまった。

 家に戻ると、女房が困った顔をした。妾の心配りはとても立派、でもこのままでは

しめしがつかない。

「どうぞ今夜は別宅へ」

げんなりした旦那は権助に、

「提灯だ」

「あはは、まだ消していません」

もう一度妾の家。歩き疲れてクタクタ。でも、妾は申し訳なさそうに、

「そうおっしゃられると、かえってお泊めしにくくなりました」

旦那は半ベソをかいて、

「権助、提灯を」

「いや、もういらねえ」

「どうしてだ」

「夜が明けました」


                      立川志の輔   古典落語100席引用


旦那はその後どうなったのでしょうかな。

俺物語!!おもしろいっすねー。やまとーぉ、たけおくーん。

じゃいあんきょうだいのあいじょうみたいだなっとかんがえるとちこっとうけっちゃい

ますた。

たけおとりんこ、たいかくさありすぎちゃうかぁ。ふらんすぱんとばたーろーるくらい。。



                  そら召し上がれ

お酒のお供Y・・・172

2015-06-16 14:21:07 | 日記


松山鏡



村中捜しても鏡というものがないひなびた松山村に、

正直正助という男が住んでいた。とても親孝行な男で、両親が

亡くなってから十八年もの間、墓参りをかかしたことがない。

その評判が領主に届き、ごほうびがもらえることになった。

「何か望みはないか」

と領主が尋ねると、正助は十八年前に死んだ父の顔を、

一目でいいからもう一度見たいという。

思案した領主は名主に、

「正助は父親に似ておるか」と尋ねた。

「瓜二つでございます」

そこで領主が取りだしたのが、国の宝にしてある鏡を入れた箱。

箱のふたをあけ、正助に中を見るようにと言った。中の鏡には、

当然、正助の顔が映る。鏡というものを知らない正助はびっくり仰天。

自分の顔を死んだ父親だと信じこみ、「会いたかった」と泣きくずれてしまった。

 領主は満足げにうなずき、他人には決して見せないようにと申しつけて、

鏡の入った箱をほうびとして与えた。

 鏡をもらった正助は言いつけどおり他人に見られぬよう、納屋の古いつづらに

鏡の箱を隠し、毎朝、毎晩、「とっつぁま、いってめえります」「ただいま

帰りました」。

 不思議に思った女房のお光が、正助の留守に納屋へいき、古いつづらの

ふたをとって鏡に映った自分の顔を見た。

 もちろんお光も鏡なんか見たことがない。てっきり正助が箱の中に女を

かこっていたと思い、鏡に向かってののしりはじめた。

「他人の亭主をとる悪い女め、タヌキみたいな顔して」

 などとわめくがいっこうに反応がない。馬鹿にされたと泣くと、相手も泣く。

それを見てまた腹が立つ。

そのうち正助が帰ってきて、夫婦ゲンカが始まった。

「つづらの女はなんだーっ」

 くんずほぐれつの大ゲンカ。ちょうど家の前を通りかかった尼さんが、

これを聞きつけて仲裁に入った。

「黙ってちゃわからねえ。話をしなせえ。うん、うん、女をつづらの中へ、うん、うん」

 父親だという正助をわけ知り顔でなだめ、

「よし、おらがその女に会う。このつづらか」

 尼さんもやっぱり鏡を見るのは初めて。

「お光よ、正さんよ、ケンカせんがええよ。中の女はきまりが悪いって坊主になった」



                        立川志の輔  古典落語100席引用

おとんでもおかんがします。さっぶぅ。くるりん



冷えたおでんにもそら・あかね

お酒のお供Y・・・171

2015-06-13 14:03:20 | 日記


紙入れ




新吉が、世話になっている旦那の女房といい仲になってしまった。

その晩も旦那の留守をいいことに家にあがりこんでいる。

小心者でビクビクしている新吉とは反対に、女房は大胆。

旦那は碁を打ちにいっているから今夜は帰ってこない、

泊まっていってもいいとしきりに粉をかける。

だんだんと新吉もその気になってきたところで、表の戸がドンドン。

意外にも早く旦那が帰ってきた。

「こっち。裏から出て」

かろうじて裏口から見つからずに逃げた新吉だったが、歩いているうちに

紙入れを忘れたことに気がついた。上等な紙入れで、買ったときに

旦那にも見てもらったから、一目で新吉の物だとわかってしまう。

おまけに中にはおかみさんからもらった恋文まで挟んである。

 このまま遠くへ逃げてしまおうかと考えた新吉、ひょっとしたらおかみさんが

先に気づいて隠してくれたかもしれないと思い直し、翌朝、確かめにいくことにした。

 夜が明けるのを待ちかねて旦那の家へ。

「おお、新吉か早いな。まああがれ」

 おかしい、旦那は機嫌がよさそうだ。しかし、そのふりをしているのかも。

 心の中であれこれ思い悩んでいるのが新吉の顔に出た。

「どうした、顔色が悪いぞ」

 新吉は女のことでまずくなったので、しばらく旅に出ようと思っていると

打ち明けた。旦那は、無理もないことだと新吉をはげまし、ただし他人の

女房だけには手を出しちゃいけないと釘をさした。

「じつは、その、それなんで」

 腹を決めた新吉は、自分とおかみさんのことを話すが、

旦那はよその家のことだと思って聞いている。

「向こうに知れたのか」

 知れたかどうかまだわからない。しかし、家に紙入れを忘れてきたので心配している。

と、ここまで聞いた旦那、あの紙入れを忘れてきたのかと納得し、奥から出てきた女房に、

「おい、おかみさんからの手紙を入れた紙入れを忘れてきたんだとさ」

 女房は平気な顔で、

「いやだよ新さん。どうせ旦那の留守に男を引きいれようというくらいの女だもの、

紙入れなんかちゃんと隠してあるさ」

 旦那もまったくそのとおりという口調で、「それに主人が紙入れを見たって、

自分の女房をとられるようなやつだ。気がつくまい」


                      立川志の輔   古典落語100席引用



この囃しは男の立場の弱さを表しているそうで、女房のほうが偉いわけで

旦那は女房のことなんかどうでもいいような感じに読んでしまったわたしって、

冷めてますか?



冷めてても旨い焼酎そら・あかね

お酒のお供Y・・・170

2015-06-10 13:25:48 | 日記


樟脳玉




昔、火をつけて燃やしても熱くない樟脳玉が「長太郎」という名で

縁日などで売られていたころの話。

 とても女房思いの男・捻兵衛がたいせつな女房に死なれ、ふぬけのように

なって毎日、仏壇の前で念仏ばかり唱えている。

 この様子を見た八五郎が女房の幽霊になって出て、着物と金を

まきあげようという悪だくみを思いついた。

 兄貴分に相談すると、「女房恋しさのあまり捻兵衛が幽霊にかじりついて

きたらまずい。それよりも、夜中に樟脳玉に火をつけて人魂が出たと

思わせたほうがいい」というアドバイス。翌日、悔みにいけば、

捻兵衛はきっと人魂の話をする。そしたら、それは女房の気がこの世に

まだ残っているから、供養のために金と着物を寺へ納めてきてやると

もちかければ、必ず出すからそいつを山分けしようと話がまとまった。

 夜中、捻兵衛の家の屋根にこっそりあがった二人、樟脳玉に火をつけて

振り回した。これを見た捻兵衛は、もくろみどおり女房の人魂だと思いこみ、

仏壇の前に座って必死になって念仏を唱えはじめた。

 さて翌日、悔やみにかこつけて八五郎が家を訪ねると、目を真っ赤にした

捻兵衛が早速、人魂の話。内心ほくそえんだ八五郎が供養のことをもちだすと

一も二もない。

 箪笥の中にだいじにしまっておいた着物を出してきた捻兵衛、「夫婦に

なったばかりのころによく着ていたのがこれ。色白にこの柄がよく似合って」

などと、一枚一枚、思い出話をしながら涙を流す。八五郎もついつい聞きいって

しまい、うっかり金を出させるのを忘れてしまった。

 着物を手に八五郎が帰ると、兄貴分が怒るのなんの。しょうがないので

もう一度、樟脳玉でおどすことにした。

 そのまた翌日、捻兵衛の家へいき、着物だけではだめらしいので金を寺へ

納めたほうがいい、とすすめた。

 ところが、捻兵衛はじつは金はないが、かわりに女房が大切にしていた

雛人形ではどうだろうかと言いだした。かなりの名作だとのこと。とにかく

一度見てみようということになり、雛人形の入った箱を取りだしふたをあけた

とたん、捻兵衛の顔がパッと明るくなった。

「わかりました。家内が気にしているのはこの雛人形に違いありません」

びっくりした八五郎が、「どうしてそんなことが」と尋ねると、

「ええ、ふたをあけたら魂の匂いがしました」



                   立川志の輔   古典落語100席引用


ミレンとは未練と書くのか美恋と描くのかわからなくなっちゃいますな。

恋をしたなら、焼酎そら・あかねで乾杯。