最近よく俺を面白がってくれるのは宏さんだ。年齢は10歳程下と聞くが、火曜会ではもちろん先輩でサッカー歴も長く、俺は敬語で話す。宏さんはヘディングが上手い。よくアドバイスもしてくれる。俺にとっては親しみやすい人だった。
「もう動けなくなった」
と言っては息を切らしているが、ここぞという時はしつこく相手に食らいつく。思うに、俺はこの人の本気も垣間見た程度かと。実力者と見ている。主にボランチやオフェンシブMFを担っているセンタープレイヤーだ。
練習のアップ時に浮き球のパス交換をする。宏さんと組んでやるとそれになる。俺のトラップの訓練というわけだ。
「ムフフフフ、はっはっはっはっ」とか、
また宏さんがニヤニヤしている。俺はマジにやっているのに楽しそうだ。察するに、俺の動きが無様なんだと思う。時々ピッタリくると、
「そんな感じで」
と言って、胸か膝か迷う微妙なところに上げてくれる。これが難しい。膝でいいところを胸でトラップしたりして。
「いいパス出せばそんなにシュートは下手じゃないですよ」
ある時、宏さんが吉原先輩にそう言ってくれた。俺は照れくさくて、
「今のはたまたまですよ~」
とか誤魔化してしまった。嬉しかったのにな。
交流試合で宏さんからラストパスをもらったのに、外してしまったこともある。その少し前の時間に宏さんが1点決めた時、
「今のはパスだす余裕がなかった、ごめんね」
俺が結構距離を走って来てゴール前でフリーだったからだ。なんていい人なんだと思ってしまった。もらって決め切る自信はなかったけど、また出して下さい。
練習でもそんな宏さんと同じチームになるととても楽しい。
だから、もっと本気で面白がらせてみたいと俺は思っている。
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