ことば咀嚼日記

日々読んだ活字を自分の頭でムシャクシャ、時にはゴックン、時には、サクサク咀嚼する日記

主のよき力に守られて

2009-12-16 | 日記
主のよき力に守られて         
                              D.ボンヘファー
主のよき力に、確かに、静かに、取り囲まれ、
不思議にも守られ、慰められて、
私はここでの日々を君たちと共に生き、
君たちと共に新年を迎えようとしています。

過ぎ去ろうとしている時は、私たちの心をなおも悩まし、
悪夢のような日々の重荷は、私たちをなおも圧し続けています。
ああ、主よ、どうかこのおびえおののく魂に、
あなたが備えている救いを与えてください。

あなたが、もし私たちに、苦い杯を、苦渋にあふれる杯を、
なみなみとついで、差し出すなら、
私たちはそれを恐れず、感謝して、
いつくしみと愛に満ちたあなたの手から受け取りましょう。

しかし、もし、あなたが、私たちにもう一度喜びを、
この世と、まぶしいばかりに輝く太陽に対する喜びを与えてくださるなら、
私たちは過ぎ去った日々のことをすべて思い起こしましょう。
私たちのこの世のすべては、あなたのものです。

あなたがこの闇の中にもたらしたろうそくを、
どうか今こそ、暖かく、明るく燃やしてください。
そしてできるなら、引き裂かれた私たちをもう一度、結び合わせてください。
あなたの光が夜の闇の中でこそ輝くことを、私たちは知っています。

深い静けさが私たちを包んでいる今、この時に、
私たちに、聞かせてください。
私たちのまわりに広がる目に見えない世界のあふれるばかりの音の響きを、
あなたのすべての子供たちが高らかにうたう讃美の歌声を。

主のよき力に、不思議にも守られて、
私たちは、来るべきものを安らかに待ち受けます。
神は、朝に、夕に、私たちのそばにいるでしょう。
そして、私たちが迎える新しい日々にも、神は必ず、私たちと共にいるでしょう。


ナチス・ドイツに反対して捕らえられたボンヘファーの獄中書簡の中の詩。
クリスマスには「ボンヘファー家のクリスマス」という本を読むことが多い。クリスマスの季節になると、この人のことを考える。
結局獄中から出ることなく、天の御国へと旅立った人だが、処刑の前に、「このことを決して悲しまないように、むしろ神の国の前進を喜んでください」と家族に書き送ったとされる。

この詩がものすごく苦しく、詩人を取り囲む闇の力の大きさに圧倒される時と、計り知れない慰めに満ちたものに思われる時がある。
今は後者。
作者も「主のよき力に、守られて」と書いているではないか。
しかし、あまりの闇に圧倒される時、よき力を信じられなくなるこの弱さ。
「あなたが弱い時に強いのです」の言葉を思い出しつつ、
ボンヘファーのような人でも、暗闇におそれおののく瞬間があったのだと
この詩から読み取れる。
信仰とは、いつも信じることのできない思いとの戦い。
しかし、自分で戦わなくてもよいのだと気づいたとき、一番神を身近に感じるのも事実である。


「あなたがこの闇の中にもたらしたろうそくを、
どうか今こそ、暖かく、明るく燃やしてください。
そしてできるなら、引き裂かれた私たちをもう一度、結び合わせてください。
あなたの光が夜の闇の中でこそ輝くことを、私たちは知っています」

この部分を繰り返し読んでいる。