ことば咀嚼日記

日々読んだ活字を自分の頭でムシャクシャ、時にはゴックン、時には、サクサク咀嚼する日記

働くのは寝たり食べたりするのとどう違うのか分からない私

2010-05-14 | 日記
松本哉という人が「世の中、働かないに越したことはない!」というエッセイをある広報誌に書いていた。あたふたとお昼ご飯を食べながら、行儀が悪いが、片手でその紙をもって読む。これから仕事に行くので、お昼ご飯は8分で食べなければならない。ご飯とお肉と野菜と味噌汁を食べるので、大忙しだ。たとえ制限時間8分でも全部食べたい。

そんなに働いているわけではないが、いつも時間がない。何でいつも時間がないかというと、人より睡眠時間が多いので、活動時間が少なくなるのだ。こればっかりは体質だから仕方がない。活動時間が少ないのに、やりたいことは人並みにあるので、いつもあたふたしているのだ。寝たい、活動したい、ご飯も食べたい、本も読みたい。大変な欲張りである。

松本という人によると、「巷では、働いていることが美しいかのように考えられがちだ。ま、確かに悪いことじゃないかもしれないけど、なんでもかんでも働きゃいいってもんじゃない。たとえば、ヤミ金で働いている人がやたらと仕事熱心になって、貧乏人を追いかけまくったりしても困る。ヤミ金業界で「あいつはいい仕事するんだよ~」なんていわれてしまう人は相当悪い人だろうし」
ギャハハハ・・・読みながら味噌汁を吹きそうになった。

松本は続けて「自動車工場あたりで汗水働いている青年なんかはどうか?それはそれで「いやあ、立派だなあ!」って感じもする。でも、その仕事に対する意気込みや、その人の人格は立派かもしれないけど、これだけ環境問題とかエコとか言ってる時代に、会社の儲けのためにむやみに車ばっかり作っているその産業自体は、立派じゃないどころか世にとって迷惑なぐらいだ」と言い切る。
また、「宇宙開発なんか開発してるやつ」にも松本は厳しい。「やめろ、やめろ。おい、NASA!勝手に月とか行くなオマエ!」

松本が言うには、仕事というのは本来、自分たちが生きている世の中を何とかまわしていく業務なのだからシンプルなのがいい。世の中はあまりにも暑いから扇風機作ったり、エアコン作ったりして、技術も経済も進歩してきた。なのに、かえって要らん仕事が増えた、いや増やしているヤツがいる。仕事をつくるための仕事のような謎のIT企業が増殖しまくっているのが腹立たしいそうだ。

そういう松本はいったい何をしているかと、経歴を読むと、高円寺でリサイクルショップをやっている人らしい。本も書いたり、杉並区から議員に立候補して落選したり、映画にも出ている人らしい。1974年生まれ。

けっこう働いているではないか、松本という人も。けっこうどころか、深夜1時まで店を経営しながら、本人によると、映画上映会やライブのイベントもしたり、べろんべろんに酔っ払ったお客さんと朝まで飲んで語り合ったりして、その合間にこんな文章まで書いたりして何!この人、ものすごく働いている人じゃないか。

松本の結論はこうである。
「結局のところ、いまの世の中、金持ち連中が貧乏人を集めて働かせて金儲けをしているような仕事が多すぎる。こういう連中が仕事増やしているんだよな。う~ん、そんなことが「働く」ことだったら、真っ平御免だね・・・。ってことで、いまの若い連中なんかは「働かねーぞ!」っていうフレーズに、「そうそう、やってらんねーよ!」って反応して、ワラワラと集まってくるに違いない。よし、やめたやめた!こうなったら働くのをやめよう!」

私?私はいったいなぜ働いているのだろうね。あんまりそういうことを考えずにきたが、この前ある人が職場で、「私はいつも社会貢献ということを考えて生きている」とまじめに言ったので、とても驚いた。
わたしは、仕事の準備が上手くできた日は、出かけるのが嬉しくて、さあ、これをどうやって披露しようかと、浮き浮きして仕事に行くし、疲れていてあんまりうまく準備ができなかった日は、暗い気分で行くだけで、「働く」ということをそんなにまじめに考えたことがなかった。田舎に住んでいると、大体職場は街だから、街に出るのが楽しいというのもあるし・・・ランチに美味しいものも食べられるし、学生さんに会うのも楽しいし。

この松本という人は若いのにエライなあ。そこまで突き詰めて、高円寺でリサイクルショップを夜中の1時までやっているとは。店の名は「素人の乱」というらしいから、そのうち、何か乱を起こすのだろう。「働く」ことをここまで真剣に考えて、虚業を廃する姿勢は立派だ。金持ちが私腹を肥やそうとわざわざ作る仕事や、自治体が雇用促進のために増やす仕事も、嫌いみたいだ。
エコ青年だな。
私の仕事も松本に鑑定してもらうと、やはり「虚業」になるんだろうか・・・心配だ。
かの有名な筆談ホステスはどうだろうか。猫の病院で、延命治療する医者はどうか。