緑の鳥 ~《スウィーニー・トッド ~ フリート街の悪魔の理髪師》
スティーヴン・ソンドハイム(作曲)
ディアナ・ダムラウ(ソプラノ)
ジョン・ウィリアムズ:組曲《未知との遭遇》
指揮者:ズービン・メータ
楽団:ロサンゼルス・フィルハーモニック
ロビン・フッドの冒険~ファンファーレ、ラブ・シーン (コルンゴルト)
Korngold:The Adventures Of Robin Hood - Fanfare And Love Scene〔 7:13 〕
ジョン・マウチェリー(指揮)
ハリウッド・ボウル・オーケストラ
ガーシュウィン(改訂:フランク・キャンベル=ワトソン):パリのアメリカ人
録音年:1990年7月
録音場所:シカゴ、オーケストラ・ホール
指揮者:ジェイムズ・レヴァイン
楽団:シカゴ交響楽団
〘 …MGMにおける彼選抜の “フリード・ユニット” は、トップクラスの俳優、監督、振付師、作曲家、セット・デザイナーを擁するチームだった。彼らは40年代から50年代にかけて、『アニーよ銃をとれ』(1950)、『巴里のアメリカ人』(1951)、『ショウボート』(1951) 、『Gigi 』(1951)をはじめとする40作以上のミュージカル映画の傑作を手掛けた。…
…映画のサウンドトラック
もうひとつ、約1世紀にわたって連綿と受け継がれているのはこれはミュージカルのみならず、通常のドラマも同様だが、サウンドトラックの質の高さである。映画音楽は クラシック・ミュージックに端を発しており、この2つは家族のように強い結びつきを持っている。初期の映画音楽の世界で大きな影響力を誇っていたひとりが エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルド だった。
彼は1938年の映画『ロビンフッドの冒険』のスコアを手掛けた作曲家である。かのグスタフ・マーラーをして「音楽的天才」といわしめたエーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルドは、ヨーロッパの中でもウィーンのようなクラシックの偉大なる聖地で純粋培養された多くの音楽家のひとりであり、これらの作曲家たちが豊かなシンフォニーの遺産をハリウッドへと持ち込んだのである。
クラシックは『ジョーズ』『未知との遭遇』『スター・ウォーズ』のテーマ曲のような世界的に有名なナンバーから、『遥かなる大地へ』のように過小評価に終わったが気の利いた小品まで、数え切れないほどの映画音楽を手掛けた ジョン・ウィリアムス をはじめ、現代のシーンで活躍する多くの素晴らしい映画音楽作家たちの作品に影響を与えてきた。
ジョン・ウィリアムスは『プライベート・ライアン』でも音楽を担当しているが、スティーヴン・スピルバーグが彼に『シンドラーのリスト』の映像を見せた時、彼はこう言った。「この映画には私よりもっと腕のいい作曲家が必要だよ」。スティーヴン・スピルバーグは応えて言った、「分かってる。でもそういう人はもうみんな死んじゃってるからね」。…
…21世紀のミュージカル映画
では、21世紀のミュージカル映画の立ち位置はどこだろう? 実写版ミュージカルは一時期、西部劇並みに映画界の絶滅危惧種になりそうな情勢に見えたこともあったが、現在も優れた作品が作られ続けている。『ムーラン・ルージュ』(2001)と『シカゴ』(2002) はどちらも先頃、全米映画協会選定による“最も素晴らしいミュージカル映画”25選に入った。一方忘れるなかれ、リチャード・リンクレイターの2003年のコメディ『スクール・オブ・ロック』は、2015年に『ピッチ・パーフェクト2』に取って代わられるまで、コメディ・ミュージカル部門では映画史上最高の興行成績を収めていたのである。
この他にも『レント』(2005)、『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師 』(2007)そして 『レ・ミゼラブル』(2012)――主演のヒュー・ジャックマン含め、殆どの出演俳優たちがそのまま配役の歌を担当した―― にみられる通り、近年のミュージカル映画の成功は、デジタル世代のオーディエンスの間にも、魅力的なミュージカルに対する貪欲な需要がまだまだ存在することを示している。例えば『マンマ・ミーア!』は公開当時、レヴューでは賛否両論だったものの、2008年のボックス・オフィスでは6億ドルを超える興行収益を上げているのだ。… 〙
〘 …「スター・ウォーズ」にも影響を与えた革新性
さらに重要なポイントが「ライトモチーフ」の導入だ。ライトモチーフとは、登場人物や状況に付随したテーマ音楽のことで、クラシックの世界においてはリヒャルト・ワーグナー(1813~1883)が「ニーベルングの指環」の中で象徴的に使いこなしている。このライトモチーフをハリウッド映画の世界に持ち込んだコルンゴルトのスタイルによって映画音楽は大きな発展を遂げることとなる。
今を時めく映画音楽の巨匠ジョン・ウィリアムズによる『スター・ウォーズ』(1977年)の「ダース・ベイダーのテーマ」などはまさにその代表例だ。『海賊ブラッド』(1935年)や『女王エリザベス』(1939年)『シー・ホーク』(1940年)など、冒険談やロマンスが大好きだったコルンゴルトの作品に流れる勇壮なメインテーマとオーケストラを駆使した叙情的なメロディは、前述の『スター・ウォーズ』や『インディ・ジョーンズ』(1981年)『E.T.』(1982年)などの雰囲気そのものの親しみやすさ。コルンゴルトの持つ革新性と後に続く作曲家たちへの大きな影響を感じずにはいられない。
最終的にアメリカで21本の映画音楽を作曲し、『風雲児アドヴァース』(1936年)と『ロビンフッドの冒険』(1938年)でアカデミー作曲賞も受賞したコルンゴルトは、今もアメリカでは映画音楽作曲家と認識されているようだ。試しにアップルミュージックでコルンゴルトを検索してみると、そのほとんどが映画音楽作品であることからもその傾向がうかがえる。
第2次世界対戦の終焉を機に、再びクラシックの世界へ戻ることを夢見たコルンゴルトだったが、時代は変わり、ウィーンは尖った現代音楽が主流。ロマンティックなコルンゴルトのスタイルは“時代遅れ”とされ、失意のうちに人生を終えている。
「私は忘れられたのだ。今の人々は私のことなどまったく知らない」というコルンゴルトが遺した言葉が心に沁みる。
そのコルンゴルトに近年再び光が当たり始めている。代表作であるオペラ『死の都』は世界各地で上演され、映画音楽の美しいメロディを生かして作られた「ヴァイオリン協奏曲」(1945年)は、ヴァイオリニストにとって重要なレパートリーとなり、すでに20世紀を代表する名曲の1つに数えられる存在だ。
ウィーンではオペラ作曲家、ヨーロッパではクラシックの作曲家として認められ、アメリカでは映画音楽作曲家として尊敬されるコルンゴルト。クラシックと映画音楽の二刀流ならぬ二足のわらじを見事に履きこなした彼こそは、近代作曲家のあるべき姿を体現しているのかもしれない。興味を持たれた方はぜひコルンゴルトの音楽に触れてほしい。そして彼の名前を頭に刻んでほしい。いつかきっと彼の時代がやってくる。〙
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