ワーグナー:歌劇《タンホイザー》序曲
録音年:1984年2月
録音場所:ベルリン、フィルハーモニー
録音方式:デジタル録音 [OIBP]
指揮者:ヘルベルト・フォン・カラヤン
楽団:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
歌劇《タンホイザー》~バッカナール(ヴェヌスベルクの音楽)
【 第1幕 】
第1場
〖 ヴェーヌスベルクの洞窟 〗
滝壺や小川のある広い洞窟。山や森の神、海や川の妖精などがくつろいだり、踊っている空間。
Naht euch dem Strande「岸辺においで」
〔海の精セイレンの歌声〕
「岸辺においで。こちらにおいで。熱烈な愛の腕に抱かれ祝福されなさい。」
「愛しい人、あなたの心はどこ?」Geliebter, sag, wo weilt dein Sinn?
突然、タンホイザーが夢から目覚めたように身震いする。官能の女神ヴェーヌスは彼を愛欲の世界へ引き戻そうとする。
「ヴェーヌス讃歌」Dir töne Lob!
「愛しい人、洞窟をご覧なさい」Geliebter, komm! Sieh dort die Grotte
(ヴェーヌスは)タンホイザーに魅惑的に微笑みかける。ヴェーヌスは、新しく魔法の洞窟を出現させる。
「愛しい人よ、洞窟をご覧なさい。バラの香りがまろやかに漂っている。神も魅了され、甘美な喜びがある。…」
「二重唱・行くがいい」Zieh hin, Wahnsinniger, zieh hin!
ヴェーヌスは、激しい怒りを見せる。
〖 ヴェーヌス 〗
「行けばいい。あなたは自由だ。止めることはしない。どうせすぐに戻ってくるもの。冷たい人間に傷つき、私をまた求めるわ。」
タンホイザー、永遠の快楽の世界を出て行く
桃源郷を捨て現実へ
第2場
ヴァルトブルク城近くの谷間
突然美しい世界が消えて、タンホイザーは、山や丘、羊の群れに羊飼い、自然豊かな谷間にいる。丘の上には聖母マリア像。
Frau Holda kam aus dem Berg hervor「春の女神が山から降りて」
〔羊飼い〕
「ホルダの女神(ヴェーヌス)が山から降りて、野原を歩き回る。女神が夢に出て、目覚めると暖かな日差しが。5月が来たのだ。」…
…(中略)…
【 第2幕 】
ヴァルトブルク城の大広間(歌の殿堂)
嬉しそうにエリーザベトは広間に入る。
Gepriesen sei die Stunde「二重唱」
〔エリーザベト〕
「この時を称えましょう。私にこのような良い知らせをもたらした力を称えましょう。」
〔タンホイザー〕
「この時を称えましょう。あなたの口から喜ばしい言葉を聞かせてくれた力を称えましょう。」…
…(中略)…
Blick’ ich umher in diesem edlen Kreise「この気高き人々を見れば」
〔ヴォルフラム〕
「こちらにお集まりの気高い皆様を見れば、私の心は燃え上がるばかり。勇敢な騎士、貞淑なご婦人、私はこの眺めに酔いしれているのです。
星空を眺めれば、ひときわ輝く星がひとつ。私の精神は敬虔な気持ちになります。そして、見て下さい。奇跡の泉(女)を。私から優美な喜びを引き起こすのです。
私はこの泉(女)を汚したくありません。この歌から高貴な方たちは見るでしょう。「愛の最も純粋な本質」を。」
〔騎士と婦人ら〕
「素晴らしい。この歌に褒美を!」
Auch ich darf mich so glücklich nennen「私もやはり幸せだ」
〔タンホイザー〕
「ヴォルフラムよ。私も同じ幸せを感じたことがある。同じように、泉(女)の徳を讃えよう。
だが、私は熱い欲望なしに泉(女)に近づくことが出来ないのだ。渇きを癒やすために、ためらいなく口づけしよう。永遠に欲望に燃え、永遠に泉(女)を味わうのだ。
ヴォルフラム。これが「愛の本当の正体」だ。」
エリーザベトはタンホイザーに賛同しようとするが、会場は静まりかえっているので、拍手を控える。
Den Bronnen, den uns Wolfram nannte「ヴォルフラムの言う泉は」
〔別の騎士(ヴァルター)〕
「ヴォルフラムが言う、泉(女)の姿が本当のものだ。泉(女)への渇望に捕らわれている、お前に泉(女)の本当の姿がわかるものか。
泉(女)は徳のある存在なのだ。お前は好きなだけ泉を崇めるがいい。だが、お前の情熱を癒やそうと、泉(女)に口づければ、奇跡の力を失うだろう。
泉(女)からは、口ではなく心を豊かにするのが正しいのだ。」
〔騎士と婦人ら〕
「万歳。褒美はあなたのものだ!」
〔タンホイザー〕
「ヴァルター、君の歌は愛の姿をゆがめる。君がそんなことを言うのは、欲望を楽しんだことがないからだよ。」
〔別の騎士(ビーテロルフ)〕
「なんだと、我らと戦うがいい。剣を持ってこい。」
〔タンホイザー〕
「ほら吹き、ビーテロルフ。狼のような君が愛を歌うのか?哀れな狼よ、君は何を楽しんだというのか?」
タンホイザーと騎士が言い争いを始めて、広間が混乱。ヴォルフラムが声を発すると、静まりかえる。…
…(中略)…
Tannhäuser: Prelude to Act 3
歌劇《タンホイザー》第3幕前奏曲
リヒャルト・ワーグナー : Act III: Prelude - 1729428 - NML ナクソス・ミュージック・ライブラリー
Daniel Barenboim / ダニエル・バレンボイム「Wagner: Overtures & Preludes / ワーグナー:序曲、前奏曲集」 | Warner Music Japan
【 第3幕 】
導入曲「タンホイザーの巡礼の旅」
ヴァルトブルク城近くの谷
夕暮れ時、聖母像の前で、エリーザベトは祈りを捧げている。…
…(中略)…
Beglückt darf nun dich: Pilgrims’ Chorus「巡礼の合唱」
リヒャルト・ワーグナー : Act III: Wie Todesahnung, Dammerung deckt die Lande - 4839605 - NML ナクソス・ミュージック・ライブラリー
Heil! Heil! Der Gnade Wunder Heil!「合唱」
⚠️ 情報が間違っていたら、コメント欄でご指摘ください 🙇 ⚠️
〘 …最初の頃は、ワーグナーのタンホイザーにドレスデン版とパリ版があることを知らなかったので、
タンホイザーを見に行った際に、序曲に続いて延々と官能的なバレエが始まったので不思議に思ったことがありました。
その前に見たワーグナーのタンホイザーにはそのシーンは無かったからです。
今思えばバレエが入っていたのはパリ版と呼ばれるものだったのだと思います。
ただ、言葉はドイツ語でしたから、完全なパリ版ではなく折衷版(ウィーン版ともいわれます)だったのでしょう。
オペラには、このように作曲家が劇場に合わせて書き直したり、本人が納得するように書き直していることがしばしばあります。…
…タンホイザー第一幕のヴェーヌスの官能の異世界と、通常の世界が全く雰囲気が別というのがこのオペラの特徴の一つですが、その中でヴェーヌス役は第一幕で歌い続けるので大変な役です。
このオペラでは通常の世界に住む清純なエリザベートと官能のヴェーヌスとは全く交わらず、出番が異なるため
この二役を一人の歌手が演じるという超人的な歌い手もいます。…
…ヴェーヌスとエリザベートは、人には表の感情と秘められた裏の感情があるということの象徴なのかもしれませんが、並大抵の歌手では無理だろうと思います。…〙
私も同感で、例えば、誰にも縛られず自由奔放で貞操観念のないカルメンと、貞節で清純で素朴な村娘のミカエラなどもそうで、実際には、一人の人間のなかには、この(一見)相反するような二面性があると思ってます。
それを、わざわざ、カルメンとミカエラ(タンホイザーでいえば、ヴェーヌスとエリザベート)に分けて、両極端な二人の人物を登場させている…ともとれるのですが…どうでしょうか…!?
もっとも、ヴェーヌスベルクの異世界は、ワーグナーの実体験そのものでしょう…(私もわかります…)…バッカナールの音楽がしずまった後の管楽器が重なるところの和声・音色、脳がいっちゃいますね…賢者タイムのときの脳が蕩けそうなあのトローンとした官能・恍惚です…このカラヤン版では管弦楽だけで演奏してますが、たしかこの部分は女性合唱で奏でられたと思います…本稿でいうと、カラヤン版の次の動画です。
〘 …・ヴェーヌスがいる官能の世界
・エリザベートやヴォルフォラムがいる純粋な世界
二つの世界が対照的なワーグナーのタンホイザーは、何度見ても飽きないオペラですね。… 〙
【 MMJ 】
💁 LINE公式アカウント〘 @693kndgt 〙
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます