『トリスタンとイゾルデ』―永遠の時間をもたらすワーグナーの音楽
2023年12月20日
クラブ・ジ・アトレ誌12月号より
文◎広瀬大介(音楽評論家)
〘 … 相手を想う尽きせぬ憧れの心理的情景は、ワーグナーがすでに第1幕前奏曲の音楽で描き尽くしている。チェロとオーボエが互いに絡み合い、音楽的頂点へと徐々に駆け上ろうとするが、主和音で完全に解決することはない(つまりふたりの愛は満たされることがない)。この世で達成することのない愛の在り方が、冒頭数分の音楽で十全に描き尽くされている。
この音楽は、第1幕で「**毒薬」を煽ったあとにも再現される。この場面がどの程度の時間的経過をともなったものなのか、聴き手には判然としない。一瞬のようにも思えるし、とてつもない時間が過ぎ去ったようにも思える。オペラにおいて、このように時間感覚を麻痺させ、永遠の時間を感じさせることこそ、ワーグナーの意図ではなかったか。正味1時間を超える第2幕の愛の二重唱、そしてトリスタンの断末魔を描く第3幕もまた充分な長さであり、同様の意図を持ったものではあろうが、物語に没入してしまえば、あっというまに過ぎ去ってしまうことだろう。… 〙
☝️🙄 上で『この音楽は、第1幕で「毒薬(** 媚薬)」を煽ったあとにも再現される。』と記されていますが、それは、おそらく、冒頭に、私が貼り付けた YouTube (の音楽)のことなのではないのかな…と思っていますが、間違っていたら、どなたでもけっこうですので、コメント欄でもご指摘ください… 🙇
なお、「毒薬(** 媚薬)」の(** 媚薬)は、私が付け加えたものですが、本文中にも、下記の記載があります…
〘 … だが、その薬は、侍女ブランゲーネによって、愛の薬に差し替えられていた。だが、これは本当に愛の薬だったのだろうか。魔術が実在の重みを持っていた中世ならば、たしかにそういうこともあっただろう。だが、ここでふたりが飲むものは、なんでもよかったはず。愛の薬である必要はなく、なんなら水でもよかった。… 〙
Thatest du's wirklich? Wahnst du das?
(本当にやったの?そう思いますか?)
ワーグナー:楽劇《トリスタンとイゾルデ》
第2幕:「本当に守ったのか?そう思うのか?」(マルケ)
録音年:2008年2月
録音場所:ドレスデン、聖ルカ教会
指揮者:セバスティアン・ヴァイグレ
演奏者:ルネ・パーペ(バス)
楽団:ドレスデン国立歌劇場合唱団、ドレスデン国立管弦楽団
… … … … … … … … …
… … … … … … … … …
〘 日本最大級のクラシックの祭典「東京・春・音楽祭2024」が15日に開幕する。…
… 同音楽祭は4月21日まで、東京・上野の東京文化会館を中心に東京芸術大学奏楽堂、ホールだけでなく東京国立博物館、国立西洋美術館などでもミュージアム・コンサートが行われる。昨年の公演数は138(内有料公演74)、入場者は約3万3000人。今年は約40日の会期で有料公演は約80に上る。…
… 世界的な歌手が招へいされるオペラは演奏会形式で4演目が行われる。「エレクトラ」のタイトルロールはエレーナ・パンクラトバ、セバスティアン・バイグレ指揮読売日本交響楽団(4月18、21日)。春祭の顔となったワーグナー・シリーズは「トリスタンとイゾルデ」(3月27、30日)。トリスタンにスチュアート・スケルトン、イゾルデにビルギッテ・クリステンセン。…
… 詳しくは公式サイト( https://www.tokyo-harusai.com )。(江原和雄)〙
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます