〘 … 苦境を訴えたのは11人。日本舞踊の井上八千代(67)と文楽の吉田玉男(70)という二人の人間国宝をはじめ、歌舞伎役者の中村時蔵(68)、雅楽、長唄、三曲、古曲の重鎮ら10人と有識者1人という布陣で、それぞれの口から厳しい言葉が相次いだ。
「時蔵が“大変由々しき問題です”と訴えれば、八千代は“ナショナルシアター がこの国にないこと、空白期間があることの恥ずかしさを知ってほしい”と語気を強めた。ほかにも“国は役割を放棄している”との怒りや、“古典芸能離れの危機を感じる”という切実な声もありました」
“一部に廃業の動きがある”と苦境を吐露
とくに傾聴すべきは、日本舞踊の西川箕之助(64)の言葉だ。
「険しい表情で“一部に廃業の動きがある”と難局に直面していることを吐露した。コロナ禍の折には老舗三味線メーカーが廃業寸前まで追い込まれましたが、最近はカツラ関係の業者に経営危機が迫っているとか」
無論、理由は明らかで、
「国立劇場は全国の舞踊家が“いずれはあそこで”と目指す憧れの舞台。その再開にメドが立たないことから、舞踊家のモチベーションが下がっている。代わる“晴れ舞台”として台東区の浅草公会堂が利用されているものの、格落ち感は否めず舞踊会の開催自体が減っている。そのあおりでカツラ業者の仕事も減っており、この状態が続けばさらに廃業が広がるでしょう」
「空白期間とファン離れがリンクしている」
斯界の窮状は国会でも取り上げられた。今月4日の参議院予算委員会では、“ヒゲの隊長”こと自民党の佐藤正久参院議員が“国立劇場の建て替えに関し、歌舞伎や日本舞踊、文楽、落語など劇場関係者が伝統芸能の伝承の危機にあると訴えている”と述べた。
芸能デスクが指摘する。
「岸田総理は“再整備までの実演場所の確保を支援していきたい”“必要な予算確保の努力は極めて重要”などと答弁しましたが、歌舞伎はすでに新国立劇場で、文楽は北千住のシアター1010や日本青年館で公演を続けています。ただ、観客の入りは芳しくなく、いずれも定員の半分すら埋まっていません。国立劇場の空白期間とファン離れがリンクしているのは明らか」
先の実演家らの会見では、建て替えではなく改修案の再検討を求める声もあった。
「そもそもは大規模な改修案が有力でしたが、最終的に政府の方針で民間資金を活用した複合施設の建設案が採用された。800億円の建設費を誇る一大プロジェクトですが、数年来の原材料費や人件費の高騰で費用はさらに増える見込み。国が資金を出し渋って民間に丸投げした結果です」
3度目の入札は近く実施の見込みだが、名乗りを上げる業者は出てくるか――。
「週刊新潮」2024年3月21日号 掲載 〙
能楽は、国立能楽堂 | 独立行政法人 日本芸術文化振興会 がありますが、
上に記載されているものは、やはり
「国立劇場は…“いずれはあそこで”と目指す憧れの舞台」
という格上のところは(正直)ありますので、モチベーションには、少なからず、影響するのかなと思います…
もちろん、浅草公会堂も、北千住のシアター1010や日本青年館も、素晴らしい施設だと思っております。
また「歌舞伎はすでに新国立劇場で、…公演を続けています。」とあり、これはこれで、新国立劇場にも、良い刺激になると思いますが、
やはり、往年のあの隼町の国立劇場の、大劇場が、歌舞伎に向いている、最適だと思います…
私は、文楽を鑑賞しましたので、中小劇場だったと記憶していますが、文楽に最適なように作られているんですよ。
私は、未だ、歌舞伎は鑑賞したことはないのですが、
歌舞伎の大きな特徴として、「観客席にまで、入り込んでくる!」
という、他の国にはない、斬新な演出(!?)があります。
また、音響面も含めて、国立劇場は、大中小各劇場が、其々の古典(伝統)芸能に、最適化されて、設計・施工されていると思われます。
文楽と能楽については、大阪(日本橋)と千駄ヶ谷に、最適な劇場がありますが(特に、能楽堂は、まだ新しくて綺麗で、素晴らしいところだと思われます。いつか、鑑賞に行きたいです。)
それ以外は、やはり、国立劇場が必要なのだろうなと思います。
国立劇場は、新国立より半世紀以上も前に(間違っていたら、コメント欄でご指摘ください)開場した、由緒正しき、日本の中心となる劇場ですので、
関係各位が、いろいろ知恵を出して話し合い、創意工夫をしながら、何とか、無事に、再開して欲しいです。
〘 人形浄瑠璃文楽を初心者の人にも気軽に楽しんでもらおうと大阪市中央公会堂(大阪市北区)で10月14日・15日、「中之島文楽」が開催される。
8回目を迎える今年は、「道行」をテーマにした文楽の名作2演目を同時上演する。一つは、三角関係の「恋のバトル」を展開する『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』「道行恋苧環(みちゆきこいのおだまき)」、もう一つは、悲しい「愛の逃避行」として描かれた 近松門左衛門 の代表作『曽根崎心中』「天神森の段」。幕間のトークコーナーでは、「渦 妹背山婦女庭訓 魂結び」で直木賞を受賞した、作家の大島真寿美さんをゲストに迎え、技芸員と道行についてのトークも。… 〙
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