劇場 シアタードラマシティ
観劇日時 2010年11月14日(日) 13:00開演
座席 4列
かなり時間が経過してしまったけど、かまわずいってみよー。
2003年に観た「飛龍伝」以来、筧さんの関西での出演舞台は必ず
チェックすることにしている♪
その筧さんが蜷川さんの舞台に出るっ!
そのうえ亀治郎さんも~!
しかもオールメール・・・すわ、筧さんの女装姿がよぎった・・・
が、夢と散った・・・(すんませーん!)
いや、しかし。
期待以上に素晴しくカッコよかった、ペトルーチオ筧さん。
亀治郎さんのキャタリーヌには終始驚かされっぱなし(笑)。
今回もパーフェクトレディ、気絶のしかたまでとっても可愛かった
わ~、ビアンカな月川さん。
ビジュアル的に楽しませていただいた、ルーセンショー山本さん。
カリギュラのエリコン以来注目してます、いつもと毛色の違う役
も素敵だった、ホーテンショー横田さん。
とにかく楽しい楽しい舞台だった~。
もうそれ以上に書く必要はないんじゃないかと今回も思う。
なので以下はまったくの蛇足。
<キャストなど>
演出:蜷川幸雄 作:W.シェイクスピア
翻訳:松岡和子
ペトルーチオ:筧利夫 キャタリーナ:市川亀治郎
ルーセンショー:山本裕典 ビアンカ:月川悠貴
その他の出演者;
磯部 勉、原康義、廣田高志、横田栄司、日野利彦、妹尾正文、
大川ヒロキ、岡田正、清家栄一、飯田邦博、新川将人、井面猛志、
澤魁士、田島優成、川口覚(さいたまネクスト・シアター)、
五味良介、宮田幸輝、石橋直人、荻野貴継
<あらすじ>
舞台はイタリア。学問の都パドヴァに、キャタリーナとビアンカ
という姉妹がいた。このふたり、妹のビアンカが従順で美しいの
に対し、姉のキャタリーナは鼻っ柱の強い“じゃじゃ馬”で、男
などまるで眼中にない。
ある日、姉娘の行く末を心配した資産家の父バプティスタが妹の
求婚者たちに「姉の嫁ぎ先が決まるまで妹は誰とも結婚させない」
と宣言しているところにピサの裕福な商人の息子ルーセンショー
がやってくる。修学のためにこの地を訪れたルーセンショーだった
が、彼もまたビアンカに心を奪われてしまい、学問などそっちのけ
で、一計を案じて召使のトラーニオに自分になりすますよう命じる。
折しも、ヴェローナからはペトルーチオという名の紳士がやってく
る。妹娘の求婚者のひとり、ホーテンショーから事の成り行きを聞
いたペトルーチオは自分もまた結婚相手を探していること、しかも
相手は金さえあれば誰でもよいことを告げ、強引にキャタリーナと
の結婚話を進める。破天荒なペトルーチオに辟易するキャタリーナ
だったが、姉娘の貰い手をみつけたバプティスタは大いに喜び、話
はとんとん拍子に進んでいく。
果してキャタリーナとペトルーチオはうまくいくのか?そしてルー
センショーとビアンカの恋の行く末は…?
(北九州芸術劇場の公式サイトより)
蜷川さん演出のオールメール作品を見るのはこれで3作品目。
今回もものすごくハイテンションな世界に連れて行ってもらった。
可笑しくて、いっぱい笑って、観終わった後はかるい酔っぱらい状
態。日常のモロモロは全部フッ飛んで、幸せ気分に~。
これがオールメールのシェイクスピア喜劇の効用かしらん。
いつもより舞台装置がかなりシンプルだった。
そのぶん台詞を聞くことに集中できた気がする。
前回2007年に観た「お気に召すまま」のパンフレットに亀治郎さん
による寄稿文があった。
思えばこれを読んだ時、亀治郎さんのオールメール・シリーズ出演
を予感したような気がする。
いわく。
歌舞伎の女形芸は「女らしさ」を追及した究極の形である。
が、不思議なことにシェイクスピア劇においては、女らしくあるこ
とを拒否することで、逆に、妖艶でたいへん魅力的な女性が立ち上
がってくるのである。
今回のじゃじゃ馬キャタリーヌにも、この亀治郎メソッド(?)は
有効だったのだろうか。
とにかく最初の登場から笑わされた。
肩をいからせ、ガニ股に歩く女。ときには野太い声が混じり、とき
には台詞の途中から歌舞伎風の言い回しになったり。
どんな男子も手をつけられないじゃじゃ馬娘を変幻自在に表現!
だけど、どんなにヘンなことをしても、歌舞伎の女形という肩書き
が大前提にあり、本当は美しい所作を知っている役者さんだという
思いが頭にあるので、安心して身を委ねられる。
そんな観客の心情を巧みに利用して自由自在な亀治郎キャタリーヌ、
なんてうまいっ!
一方の筧利夫さん。
東京公演が始まるほんの少し前までは「広島に原爆を落とす日」の
犬子恨一郎だった。大阪の舞台を観た私は、あれからすぐにシェイ
クピア劇に切り替われることが信じがたかった。
(両方の舞台を観た人にはわかると思う。)
公演終了後、筧さん自身のブログにアップされた「あとがき」を読
み、私の危惧は失礼なことだったと思い知った。
このひとは「広島~」の舞台よりももっともっと前からペトルーチ
オ役に取り組んでおられたそうだ。
役者とはそういう仕事だといってしまえばそうかもしれないけれど、
あのペトルーチオという人物が、実は時間をかけて錬られていたこ
とにじゅわ~っと感動がわいた。
その「あとがき」を読んでこんなモノを書いている私こそ後出しだ!
筧さんのペトルーチオ、へんちくりんだけど魅力的な男だった。
特に妻を迎えにくる場面。
ヘンな馬に乗って客席通路から登場した時の扮装がキョ-レツ。
もともとは持参金当てに結婚したらしい妻キャタリーヌを、自分の
支配下におさめるためのプロセスがこの芝居の見どころだ。
たとえば、睡眠不足に陥らせて相手に何も考えさせないようにする、
云々などはまさにマインドコントロールのテクニック。
いっそ素直に従ったほうがラクだわ~、とキャタリーヌじゃなくて
も観念してしまいそうになる。
また、女性にとっては(たぶん)まともに受け止めると時代錯誤と
思われる台詞も、筧さんが口にするとなぜか心地よく、お芝居とし
て楽しめてしまった。
特に長台詞になると、いつもの独特の言い回しがシェイクスピア劇
でも健在で、私などあれが始まってしまうと秒殺必至♪
そんな会話の合間にもからだが始終動き続けているペトルーチオ。
ずっと足踏みしてるとか、ときには腕立て伏せなんかも!
興味深い生き物だわ~という感じで見つめてしまいました(笑)。
あれが筧さんの練り上げたペトルーチオだったのね。
お互いに変わり者どうし惹かれ合うものがあったのか?
キャタリーヌのほうも、自分に求婚してくれたペトルーチオのこと
はまんざらでもなさそう。結婚後いきなり先手必勝で主導権を握る
夫に対し、素直に従ったほうが得策であると学習したのか、ついに
は素直で笑顔の素敵な美しい女性になっていた。
宴席でキャタリーヌの横にいて、満足げに自信ありげにすわってい
るペトルーチオ。決してお金ではなく、身分でもなく、精神的に釣
り合っているカップルという感じがとてもステキだった~♪
キャタリーヌが剣を抜いた時、ついに我慢が爆発、ペトルーチオを
刺すのかと思ってドッキン! だけどそんなどんでん返しはなく、
キャタリーヌな亀ちゃん、突然、客席を見回して観客ひとりひとり
に語り掛けるモードに。
話の内容はもう忘れてしまったけれど、誰かに自分の欠点を指摘さ
れたら、素直に受け止めよう。強情はったり、言い訳したりせずに。
まず素直に受け入れることから始めよう。そうすれば人生が楽しく
なる・・・みたいなメッセージだったかと。(勝手に解釈。)
キャタリーヌを女優さんが演じていたらここまで楽しめたかどうか。
オールメールというフィルターのかかった芝居を、さらに劇中劇と
いう見世物に仕立てた舞台。魔法の粉が実に効いていた。
カーテンコールでは、亀キャタの眼力にあやつられてスタンディン
グしてしまいました~!
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お気に召すまま 観劇メモ
間違いの喜劇 観劇メモ
観劇日時 2010年11月14日(日) 13:00開演
座席 4列
かなり時間が経過してしまったけど、かまわずいってみよー。
2003年に観た「飛龍伝」以来、筧さんの関西での出演舞台は必ず
チェックすることにしている♪
その筧さんが蜷川さんの舞台に出るっ!
そのうえ亀治郎さんも~!
しかもオールメール・・・すわ、筧さんの女装姿がよぎった・・・
が、夢と散った・・・(すんませーん!)
いや、しかし。
期待以上に素晴しくカッコよかった、ペトルーチオ筧さん。
亀治郎さんのキャタリーヌには終始驚かされっぱなし(笑)。
今回もパーフェクトレディ、気絶のしかたまでとっても可愛かった
わ~、ビアンカな月川さん。
ビジュアル的に楽しませていただいた、ルーセンショー山本さん。
カリギュラのエリコン以来注目してます、いつもと毛色の違う役
も素敵だった、ホーテンショー横田さん。
とにかく楽しい楽しい舞台だった~。
もうそれ以上に書く必要はないんじゃないかと今回も思う。
なので以下はまったくの蛇足。
<キャストなど>
演出:蜷川幸雄 作:W.シェイクスピア
翻訳:松岡和子
ペトルーチオ:筧利夫 キャタリーナ:市川亀治郎
ルーセンショー:山本裕典 ビアンカ:月川悠貴
その他の出演者;
磯部 勉、原康義、廣田高志、横田栄司、日野利彦、妹尾正文、
大川ヒロキ、岡田正、清家栄一、飯田邦博、新川将人、井面猛志、
澤魁士、田島優成、川口覚(さいたまネクスト・シアター)、
五味良介、宮田幸輝、石橋直人、荻野貴継
<あらすじ>
舞台はイタリア。学問の都パドヴァに、キャタリーナとビアンカ
という姉妹がいた。このふたり、妹のビアンカが従順で美しいの
に対し、姉のキャタリーナは鼻っ柱の強い“じゃじゃ馬”で、男
などまるで眼中にない。
ある日、姉娘の行く末を心配した資産家の父バプティスタが妹の
求婚者たちに「姉の嫁ぎ先が決まるまで妹は誰とも結婚させない」
と宣言しているところにピサの裕福な商人の息子ルーセンショー
がやってくる。修学のためにこの地を訪れたルーセンショーだった
が、彼もまたビアンカに心を奪われてしまい、学問などそっちのけ
で、一計を案じて召使のトラーニオに自分になりすますよう命じる。
折しも、ヴェローナからはペトルーチオという名の紳士がやってく
る。妹娘の求婚者のひとり、ホーテンショーから事の成り行きを聞
いたペトルーチオは自分もまた結婚相手を探していること、しかも
相手は金さえあれば誰でもよいことを告げ、強引にキャタリーナと
の結婚話を進める。破天荒なペトルーチオに辟易するキャタリーナ
だったが、姉娘の貰い手をみつけたバプティスタは大いに喜び、話
はとんとん拍子に進んでいく。
果してキャタリーナとペトルーチオはうまくいくのか?そしてルー
センショーとビアンカの恋の行く末は…?
(北九州芸術劇場の公式サイトより)
蜷川さん演出のオールメール作品を見るのはこれで3作品目。
今回もものすごくハイテンションな世界に連れて行ってもらった。
可笑しくて、いっぱい笑って、観終わった後はかるい酔っぱらい状
態。日常のモロモロは全部フッ飛んで、幸せ気分に~。
これがオールメールのシェイクスピア喜劇の効用かしらん。
いつもより舞台装置がかなりシンプルだった。
そのぶん台詞を聞くことに集中できた気がする。
前回2007年に観た「お気に召すまま」のパンフレットに亀治郎さん
による寄稿文があった。
思えばこれを読んだ時、亀治郎さんのオールメール・シリーズ出演
を予感したような気がする。
いわく。
歌舞伎の女形芸は「女らしさ」を追及した究極の形である。
が、不思議なことにシェイクスピア劇においては、女らしくあるこ
とを拒否することで、逆に、妖艶でたいへん魅力的な女性が立ち上
がってくるのである。
今回のじゃじゃ馬キャタリーヌにも、この亀治郎メソッド(?)は
有効だったのだろうか。
とにかく最初の登場から笑わされた。
肩をいからせ、ガニ股に歩く女。ときには野太い声が混じり、とき
には台詞の途中から歌舞伎風の言い回しになったり。
どんな男子も手をつけられないじゃじゃ馬娘を変幻自在に表現!
だけど、どんなにヘンなことをしても、歌舞伎の女形という肩書き
が大前提にあり、本当は美しい所作を知っている役者さんだという
思いが頭にあるので、安心して身を委ねられる。
そんな観客の心情を巧みに利用して自由自在な亀治郎キャタリーヌ、
なんてうまいっ!
一方の筧利夫さん。
東京公演が始まるほんの少し前までは「広島に原爆を落とす日」の
犬子恨一郎だった。大阪の舞台を観た私は、あれからすぐにシェイ
クピア劇に切り替われることが信じがたかった。
(両方の舞台を観た人にはわかると思う。)
公演終了後、筧さん自身のブログにアップされた「あとがき」を読
み、私の危惧は失礼なことだったと思い知った。
このひとは「広島~」の舞台よりももっともっと前からペトルーチ
オ役に取り組んでおられたそうだ。
役者とはそういう仕事だといってしまえばそうかもしれないけれど、
あのペトルーチオという人物が、実は時間をかけて錬られていたこ
とにじゅわ~っと感動がわいた。
その「あとがき」を読んでこんなモノを書いている私こそ後出しだ!
筧さんのペトルーチオ、へんちくりんだけど魅力的な男だった。
特に妻を迎えにくる場面。
ヘンな馬に乗って客席通路から登場した時の扮装がキョ-レツ。
もともとは持参金当てに結婚したらしい妻キャタリーヌを、自分の
支配下におさめるためのプロセスがこの芝居の見どころだ。
たとえば、睡眠不足に陥らせて相手に何も考えさせないようにする、
云々などはまさにマインドコントロールのテクニック。
いっそ素直に従ったほうがラクだわ~、とキャタリーヌじゃなくて
も観念してしまいそうになる。
また、女性にとっては(たぶん)まともに受け止めると時代錯誤と
思われる台詞も、筧さんが口にするとなぜか心地よく、お芝居とし
て楽しめてしまった。
特に長台詞になると、いつもの独特の言い回しがシェイクスピア劇
でも健在で、私などあれが始まってしまうと秒殺必至♪
そんな会話の合間にもからだが始終動き続けているペトルーチオ。
ずっと足踏みしてるとか、ときには腕立て伏せなんかも!
興味深い生き物だわ~という感じで見つめてしまいました(笑)。
あれが筧さんの練り上げたペトルーチオだったのね。
お互いに変わり者どうし惹かれ合うものがあったのか?
キャタリーヌのほうも、自分に求婚してくれたペトルーチオのこと
はまんざらでもなさそう。結婚後いきなり先手必勝で主導権を握る
夫に対し、素直に従ったほうが得策であると学習したのか、ついに
は素直で笑顔の素敵な美しい女性になっていた。
宴席でキャタリーヌの横にいて、満足げに自信ありげにすわってい
るペトルーチオ。決してお金ではなく、身分でもなく、精神的に釣
り合っているカップルという感じがとてもステキだった~♪
キャタリーヌが剣を抜いた時、ついに我慢が爆発、ペトルーチオを
刺すのかと思ってドッキン! だけどそんなどんでん返しはなく、
キャタリーヌな亀ちゃん、突然、客席を見回して観客ひとりひとり
に語り掛けるモードに。
話の内容はもう忘れてしまったけれど、誰かに自分の欠点を指摘さ
れたら、素直に受け止めよう。強情はったり、言い訳したりせずに。
まず素直に受け入れることから始めよう。そうすれば人生が楽しく
なる・・・みたいなメッセージだったかと。(勝手に解釈。)
キャタリーヌを女優さんが演じていたらここまで楽しめたかどうか。
オールメールというフィルターのかかった芝居を、さらに劇中劇と
いう見世物に仕立てた舞台。魔法の粉が実に効いていた。
カーテンコールでは、亀キャタの眼力にあやつられてスタンディン
グしてしまいました~!
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お気に召すまま 観劇メモ
間違いの喜劇 観劇メモ