星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

五月花形歌舞伎「通し狂言 小笠原騒動」

2009-05-17 | 観劇メモ(伝統芸能系)

公演名    五月花形歌舞伎「通し狂言 小笠原騒動」 昼の部
劇場     京都南座
観劇日    2009年5月4日(月祝)
座席     3階5列


犬神兵部(ひょうぶ)/岡田良助:中村橋之助
小笠原隼人(はいと)/奴菊平:片岡愛之助
小笠原豊前守/飛脚小平次:中村勘太郎
お大の方/小平次女房お早:中村七之助
隼人妹小萩/林数馬:中村 壱太郎
良助母お浦:上村吉弥
良助女房おかの/小笠原遠江守(とおとうみのかみ):市村萬次郎


ここは九州・豊前国。
小笠原家ではお家乗っ取りを企む執権・犬神兵部とお大の方一味の陰謀が
着々と進んでいた――。
そんな中、狩りに出た藩主の小笠原豊前守が、白狐を射ようとするのを家臣
の小笠原隼人は押し止め、また藩政の乱れを意見するが、兵部やお大の方の
言いなりとなっている豊前守の逆鱗に触れ閉門を言い渡される。
兵部は大望の妨げになると隼人に刺客を差し向ける。絶体絶命に陥った隼人
の前に、最前助けた白狐の化身である奴菊平が現れ隼人を救い出す。

隼人から分家小笠原遠江守への密書を託された召使のお早は、その道中で兵
部に加担する足軽の岡田良助に殺され密書を奪われる。
妻のお早を殺された飛脚の小平次は、すぐさま敵が良助と知る。
一方の良助は、お早の怨霊にとりつかれた末に自らの愚かさを悟り、真人間
に改心するが、女房のおかのをはじめ、家族を一度に失ってしまう。
それを知らない小平次は水車小屋で激闘の末、良助を討つのだが、断末魔の
良助から遠江守へ届ける兵部一味の連判状と訴状を託される。
程なく通りかかる遠江守の行列に小平次は直訴をするのだが、その瞬間、
一発の銃声が辺り一面に響いたのだった……。



実際に起こったお家騒動をもとに、狐の恩返し♪と一家心中の悲劇が加わっ
た見せ場の多い通し狂言。歌舞伎の代表的な演出が随所に盛り込まれていて、
ビギナーにもよくわかる内容だった。
今月は2つの劇場に通う掛け持ち組なので(エヘ♪)、こちらは2回しか観
られない。まずは3階席からスタート♪ 仕掛けの面白さをじっくり拝見する
ことに。

本水を使った水車小屋の場面では、鐘の音とツケウチの音が鳴り続け、見て
いるこちらも気分高揚。
橋之助さんが屋根から落ちるところは予想ついてたけれど、勘太郎さんまで
が落ちてくるのは想定外で、その勢いのよさに客席もわいた。
でも、水の中では立ち回りというよりも水をびちゃびちゃ掛け合っている。
回る水車に岡田良助(橋之助さん)が張り付いて回るシーンでは意外にゆっ
くり回る。特に頭が上にくると回転スピードがゆるむんですな。
スンマセーン! ここもっとグルングルンと激しいと思っていたんですけど。
残酷な私をおゆるしください。
勘太郎さん、飛び跳ねたり、韋駄天走りの引っ込みとか、とにかく元気。
そりゃそうだよね!「気」が充実している様子が伝わってくる。
前方席ではそんな勘太郎さんのおみあしが人気を集めていたようだ。(次回
は私も拝見させていただきます。笑。)
3階から見ると、隼人の乗った狐の駕篭の行列もなかなか壮観。蝋燭の灯も
遠目にはおごそかな感じが出ていてきれいに見えた。

今回は4人の役者さんが全員二役を演じている。
観劇から2週間近く経ち、すでに記憶が激しく脱け落ちているので、思いっ
きり愛之助さんに絞って、その二役を思い出してみよう・・。
(覚え違いがあるかもしれないけど、とりあえず。)

●愛之助さん
小笠原隼人、奴菊平の二役。
隼人と奴菊平の2人は、助けた人間と助けられた白狐の関係だ。
隼人はイエスマン家臣軍団の中では異色のノーと言っちゃえる家臣。
ずばずばイヤなことしか言わないんだから、そりゃ嫌われるわなあ。
最初、狩りの場面で笠をかぶって現れ、殿が射た矢を手でつかんじゃうのが
スゴイ!(殿の腕前がヘナチョコなのか?)
笠を取ったら見た目には素敵~♪な愛之助さん。
でも、台詞は分別くさく、ちとオッサンな印象。いや、貫禄がある(笑)。

白狐の狩のことを意見された殿は立腹し、犬神兵部に命じて隼人を陣扇で打
たせる。すると隼人の額から血が!
その血を見て本人怒るも、殿からは長の閉門を言い渡されてしまう。
隼人、ピンチ!!
そんなションボリの隼人を駕篭がお出迎え。
ここ、隼人の家来にしてはお囃子の音がアヤシい感じ・・・。
すると、駕篭に乗った瞬間にズラリ並んだ提灯の家紋が一斉に狐火の標に。
ここ、3階から見ると、おお~っ!
狐の嫁入りふうの行列がなかなか面白いと思った。

このあと登場する狐。いや、狐の化身の菊平がすんご~く色っぽいんである♪
鼻の下にワンポイント狐メイクを施した菊平は、スッポンから2回登場する。
イヤホンガイドによれば、繻子の衣裳の奴は「繻子奴」と呼ばれるそうな。
最初は目の覚めるような青を着て、後からは純白の衣裳でお出まし。
光沢ある衣裳を纏った菊平の、そのあでやかなこと。
狐言葉をペラッと口にしたかと思うと、花道を狐の動作で引っ込む。
ここ、二枚目の役者が観客の視線を一身に集める見せ場となっています、とか
なんとかイヤホンガイドの解説に思いっきり同意してしまいました~(笑)。

次の場面は閉門中の隼人の家。兵部からの見舞いの酒を持ってきたという家臣
二人の様子がおかしい。
お持たせで悪いが、この酒で一献、と隼人が二人にすすめると、へたな言い訳
をして早々に引き上げてしまう。
はて? と思った隼人が庭の花にお酒をかけてみると、みるみる花がしおれる。
ここで隼人の見得が入る。毒酒だ~!!
そこで、いよいよ本家に報告せねば!と思い立ち、小平次の女房のお早に密書
を託す、というワケ。

愛之助さんの出番はそれほど多いわけじゃない。
しばらくは見ない時間が続く。
この間、岡田良助の家の中の場面。
掛け取りにきた男3人衆と良助の娘のやりとりで笑わせておいて、ドンと奈落
に突き落とす。また娘を演じる子役さんが達者なので、泣かす泣かす~!
と言いつつ、いつのまにやら船を漕いでしまった私。周囲のすすり泣く声で目
が覚めた。気がつくと、娘は死に、吉弥さん演じる良助の母上も、妻も自害。
岡田良助が大声で泣き叫んでいるぅぅぅぅぅっ!

イロイロあって、いよいよ大詰(笑)。早替りの場面だ。
菊平が兵部と戦う場面。
狐の霊力で兵部を封じ込めるわけだが、下手に消えた菊平が狐に早替り。
愛之助さんの狐の衣裳を見るのは楳茂都で狐忠信を踊った舞台以来。
例の白のフサフサの衣裳。でも、頭頂部がちょっと違っていた。そこは3階席
からはよく見えなかったので次回、前方席で確認してみたい。
舞台中央から現れる狐、ちょこちょこと動いた後、雪見灯籠の中へ飛び込む。
それから舞台上手のほうでクルクル回るんだけど、回数がちと物足りないと
思った私。要求が多くてスンマセーン!

本家のおやかた様に会う場面。
そういえば、隼人は「はいと」と読むらしい。
隼人は昔、小笠原遠江守に仕えたことがあるのか、久しぶりにご対面が叶った
時に遠江守が喜色満面で「はいとか、はいとか、はいとかはいとか・・・」と
繰り返す場面がある。まるでハグしそうな勢いの遠江守が私は好き(笑)。
狐の霊力も借りて、お家騒動は一件落着なのだった。

最後はいったん幕が閉まってから、再び開いて口上が。
橋之助さんが「今日はこれぎり!」と言った後、五人が舞台で座礼。
これは知らなかったことなので嬉しかった。

次回観劇後は、愛之助さん以外の配役についても書く予定なり。
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8 コメント

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むふっ♪ ()
2009-05-18 00:35:07
愛ちゃん中心のレポ、しかと拝見しましたよん♪(笑)
人間じゃない狐の化身、面白い役柄でしたね
金髪の髷もよく似合ってました。
エビぞりも凄かったね♪
矢を掴んだり、早替りしたりと見所満載!
花道近くという良席で、堪能させて頂きました♪

っで堪能といえば、、、
>勘太郎さんのおみあしが人気を集めていたようだ
はいっ!
あの太ももが目に焼きついてます。
眼福でしたよぉ~!
次回はムンパリさんもぜひ!(笑)
返信する
きゃは! (ムンパリ)
2009-05-18 01:39:12
麗さん♪
2週間たってしまったので、とにかく愛之助さんについて
覚えていることを一気に書き出しました。ゼイゼイ(汗)。

> 金髪の髷もよく似合ってました。
あれって金髪だったの? 3階ではよくわからなかったの。
どうもありがとう!

橋之助さんは二役とも悪役(1つは、返り忠)で見せ場が
たっぷりありましたねー。
七之助くんの二役は化粧や衣裳だけじゃなく、声をちゃんと
使い分けているなと思いました。
勘太郎くんはなんといっても飛脚の小平次がよかったよねー。
飛脚だからその筋肉なのか、逞しいおみあしだから飛脚の役
になったのかはわからないけど、次回は私もちゃんと見届けます♪

返信する
勘太郎は太ももだけじゃありません (とみた)
2009-05-18 12:22:17
ムンパリさん、こんにちは。
実は私も同じところで寝てしまいました。暗い場面が記憶に残らなくてラッキーだったかも。
勘太郎の太ももは確かに立派ですが、足さばきもすごいんです。3階からだと花道を引っ込むときの足の動きはよく見えないでしょうが、私は最初から最後まで桟敷からしっかり目で追いました。個人的には今月最高の芸です。
返信する
あらま! (ムンパリ)
2009-05-19 01:00:55
とみたさん、今月はもうご覧になったんですね!
愛之助さんも金剛力士なみの手脚と思ってましたが、
勘太郎くんは太ももだけではない、とな?(笑)
その足さばき、もしや岡田良助を追いかける時の、
韋駄天の引っ込みでしょうか?
いいものを桟敷席で見られたんですね。
私、次回は1階2列なんですよー。
花道から遠いし、どれだけ味わえるかわかりませんが
勘太郎くんチェック態勢でのぞみます~♪
返信する
昨日拝見してきました (ぶーぶ)
2009-05-24 07:25:32
私は昨日拝見させていただきました。

とっても楽しかった!

席が一番前だったので、橋之助さんと七之助さんが前を通って行かれるし、水はかかるし…

水って言えば

最初はそんなにかからないだろうと思っていたのですが、劇場の方が『結構かかりますから』とビニールシートを2枚持ってきてくださって…

やっぱり2枚持ってきていただいて良かった!

本当に子供のケンカというか、二人遊んでますね!

2枚あっても髪の毛までかかっちゃいました。ま、真冬じゃないので、すぐに乾きましたけど。

もう一度観たかったけど、もうすぐ終わり。

しかも、私の観劇予定は9月の巡業までなしです

ではまた何かありましたら書き込みさせていただきますね
返信する
覇気ありました。 (とみ(風知草))
2009-05-25 10:40:04
>ムンパリさま
どちらかといえば、生真面目な役者さんばかりで、何をやってくれるやわかれへんところなかったですが、実力は見せつけていただきました。
アストリートみたいな役者さんの筋肉はスーパースターであることの証ですね。
返信する
2枚!! (ムンパリ)
2009-05-25 19:47:47
ぶーぶさん、お水のシーン楽しかったですね!
このシーンは橋之助さんが、子供の水遊びを見ていて
思いついたそうですね。
な~るほど。そのまんまやん!(笑)
ぶーぶさんはビニールシート2枚でしっかりお芝居に
参加されて、よかったですねー!
愛之助さんが関西を離れている間、私は他の上方歌舞伎
の舞台を見に行く予定です~。

返信する
アスリート♪ (ムンパリ)
2009-05-25 19:53:54
とみさん♪
はい、私は明らかにアスリート系が好みです(笑)。
あれから3週間たって日曜日に見ると、楽しいだけじゃなく、
メリハリがついた凄くいいお芝居になっていました。
このギャップを確認するのがリピートの楽しみですね♪
吉弥さんにも泣かされましたよー。

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